のんびりフリーター青年とその従姉妹の、心温まる平屋暮らし物語『ひらやすみ』/マンガPOP横丁(83)

マンガ

公開日:2021/10/29

ひらやすみ
『ひらやすみ』(真造圭伍/小学館)

 まずこの作品を読んで思ったことがある。描かれている生活の見え方が人によって違いがあるのではということだ。はりまの場合は、幼少時代から30年ほど住んできた集合住宅の時代を思い出しながらこの物語を楽しんだ。そんな懐かしいあの頃を思い浮かべながら読み進められる真造圭伍先生の『ひらやすみ』(小学館)をご紹介していこう。

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 舞台は東京・阿佐ヶ谷。そこで定職に就かず呑気に暮らす29歳フリーターの青年・生田ヒロトが主人公だ。役者を目指して山形から上京してきたが、自分の好きなタイプの女優の前ではNGを連発してしまうという致命的な欠点があった。自分に役者は向いてないと感じ、今は地元の釣り堀でアルバイトをしている。そんなヒロトだが人柄はとても良く見えるようで、お年寄りによく話しかけられるような人だった。

 そんなヒロトにはとある習慣があった。それは、月曜日と木曜日に、平屋にひとりで暮らす83歳の和田はなえさんの家に行って夕飯をごちそうになること。はなえさんとの出会いはヒロトの人柄の良さからで、ある些細なことをきっかけに2人は意気投合、この関係に至るのであった。いつも通り夕飯を終え、はなえさんからカリン酒をお土産として貰ったあと、物語は急転する。なんと次の日、はなえさんが亡くなってしまうのだ。

 突然のことで呆然とするヒロトであったが、その3カ月後にさらなる新たな展開がヒロトに訪れる。それはこの春から東京の美大に通う、従姉妹のなつみちゃんとの同居だった。ヒロトはなつみちゃんの保護者として面倒を見ることになるのだが、その住まいはなんと、先日に亡くなったはなえさんの平屋! 実は、はなえさんが、ヒロトに家を譲ると遺言状に書いていたからだった。こうして、はなえさんの家だった平屋で、なつみちゃんとのふたり暮らしが始まった。

 なつみちゃんの美大での青春、そしてヒロトの新たな出会いと、はなえさんとの思い出が詰まった平屋に、新しい幸せと思い出が詰められていく——。

 この思い出が集まる感じが、冒頭に挙げたはりまの幼少時代とリンクした。ヒロトとなつみちゃんの心の拠りどころである平屋を舞台にした、優しい癒やしの物語。読んだみんなの心の拠りどころにもなってくれたらいいな!

マンガPOP横丁

文・手書きPOP=はりまりょう

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