原作はハライチの岩井勇気! 不運な宇宙人と容赦ない言葉を放つ男子小学生との“SF”物語『ムムリン』/マンガPOP横丁(96)

マンガ

公開日:2022/2/4

ムムリン
『ムムリン』(岩井勇気:原作、佐々木順一郎:漫画/講談社)

 まずは表紙をご覧になっていただきたい。あのネコ型ロボットを生み出した漫画界の巨匠の世界を彷彿させる、とても愛らしい球体のキャラクターが表紙を飾っている。この作品のタイトルは『ムムリン』(岩井勇気:原作、佐々木順一郎:漫画/講談社)。なんとお笑いコンビ・ハライチの岩井勇気さんの初原作マンガなのだ。岩井さんといえば、バラエティ番組では尖った芸風が特徴の芸人さんで、『ムムリン』でも表紙の雰囲気とは真逆の、岩井さんが持つ尖った部分が前面に出た、実に心に突き刺さる作品となっているのだ!


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これはまだ序章…。宇宙人ムムリンの心を突き刺す最初の悲劇

 表紙に描かれているキャラクターがこの作品の主人公「ムムリン」だ。彼は“ポコムー星人”という宇宙人。そんなムムリンを襲った運命のいたずらをキッカケに物語が始まる。それは宇宙旅行の帰り道。立ち寄った星々から手厚い歓迎を受けた幸せを宇宙船の中で味わっていると、宇宙船が故障して緊急脱出という、天国から地獄に落されたような災難に遭ってしまう。脱出してたどり着いた先は、地球の小学生・コウタの部屋だった。謎の生物の出現に驚くコウタ。対してムムリンはすぐに友好モードに切り替え、宇宙旅行で訪れた星と同様に自分を歓迎してくれ、あわよくば帰れるまで泊めてもらえる期待を持っていた。しかし、

「えっ?まさか宇宙人ってだけで珍しがられて優しくしてもらえると思ってない?」

 と予想外すぎるコウタの一言が! さらにムムリンを邪険に扱う始末! これらが心にグサリと突き刺さり、ショックのあまり涙するムムリン。しかしコウタの母親に居候が許され、奇妙な共同生活が始まるのであった……。

すこし(S)ふしぎ(F)どころではない、この作品で描かれるSF

 とにかくムムリンは報われず、とてもかわいそうなキャラクターで、読んでいるこっちが思わず「そこまで言わなくてもいいじゃないか」と同情してしまうほど。ただ、初対面で衝撃の一言を放ったコウタは決して間違ったことは言っていない。「確かにそうかも……」と納得してしまう持論が炸裂する。ちなみにコウタが持論を放つターゲットはムムリンだけではない。お金持ちのクラスメイトや親戚のおじさん、そして公園で大型犬と散歩する女性などさまざま。登場人物のタイプは国民的ネコ型ロボット作品に寄せてはいるが、全然のびのびしていない男子小学生が、えげつない角度でズバズバ指摘する、相手の心に“そこそこ(S)踏み込む(F)”物語なのである。読んでいると、ハッとさせられる言葉があるかも!?

マンガPOP横丁

文・手書きPOP=はりまりょう

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