『「繊細さん」の本』のポイントを解説! ささいなことが気になって疲れるHSPに向けた1冊

暮らし

公開日:2022/5/9

ロングセラーや話題の1冊の「読みどころ」は? ダ・ヴィンチWeb編集部がセレクトした『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる 「繊細さん」の本』(武田友紀/飛鳥新社)をご紹介します。

こんな人にオススメ

・HSP(Highly Sensitive Person)の自覚がありストレスが多い人

・HSPを周囲に理解してもらえずしんどい人

・HSPの自分ともっとうまくやっていきたい人

3つのポイント

①HSPは生まれつき感覚が敏感すぎる「繊細さん」。ストレスを感じやすく大変な面もあるが、逆に幸せをより深く味わえるプラスの面もある。繊細さは克服すべきものではなく、まずは「いいもの」として捉えよう。

②繊細さんが日常の刺激、人間関係や仕事のストレスなどから身を守るためには有効な「技術」がある。本書には筆者がカウンセリングの現場で見つけ出した技術が多数紹介されている。技術なので練習すれば誰にでもできるし、上達することで少しずつ生きるのがラクになる。

③ストレスが軽減できたら、さらに一歩進んで繊細さの「いい面を活かす」ことを意識しよう。大事なのは「自分はこうしたい」という自分の本音を大事にすること。繊細な自分のあるがままを受け止め、元気に生きていこう。

(著者プロフィール)
武田友紀/HSP専門カウンセラー、公認心理師。九州大学工学部卒業後、メーカーで研究開発に従事。休職中にHSPである自分を見つめ直し、カウンセラーとして独立。2015年にHSPに関するWebサイト「繊細の森」を立ち上げHSPならではの人間関係や仕事の選び方を発信。HSP気質を大切にしたカウンセリングと適職診断が評判を呼び、日本全国から800名以上のHSPが相談に訪れる。メディアへの出演や講演などでHSPの認知度向上につとめる。

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感じる力が強い「繊細さん」とは?

 アメリカの心理学者エレイン・アーロン博士が提唱したHSP(本書では「繊細さん」)は、相手の感情やその場の雰囲気、光や音、まわりの人は気がつかないような小さな変化などを「感じる力」が強い人のこと。繊細さんは生まれつきの性質で、そうでない人とは刺激に対する「脳の神経システム」に違いがあるという。また同じ繊細さんでも感じる対象や強度は人それぞれだ。

いいことも悪いことも

「痛みやつらさ」だけでなく「いいもの」も半自動的にキャッチしてしまう繊細さん。ただし痛みやつらさなど負の感情は生き物にとっては危険を見分ける大事なサインであり、心地よさを同時に感じていても負の感情に意識が向きやすくなってしまう。そのため繊細さんはなるべく負の感情を避け、心地よさを感じる環境を自ら選ぶことが大事になってくる。

「刺激」から自分を守る工夫はできる!

 小さな音やわずかな光からもさまざまな情報を感じ取ってしまうため、繊細さんは疲れやすい。刺激によるストレスを軽減するためには、まずは身の回りの「モノ」や「環境」を工夫してみよう。コツは「心を閉ざすのではなく物理的に防ぐ」ことと「五感のうち、より感覚が鋭いものから取り組む」ことだ。たとえば五感のうち視覚が敏感な人は、目から情報を取り入れやすく、自分に関係のないものまで見えすぎている状態。「メガネやコンタクトレンズの度を落とす」「サングラスをする」などの対策で、見えるものを必要最低限に抑えるのも手だ。そのほか聴覚、触覚、嗅覚、味覚についてもそれぞれ物理的な対処法はある。

 それでも疲れてしまったときは、なるべく早く元気になるための「ケア」をしよう。基本は「外部からの刺激をできる限り抑えて休む」こと。やりすぎかと思うくらい徹底的に刺激をガードすることで回復は早まる。

人間関係の悩みにはどうすればいい?

 相手に細やかに配慮したり、深く共感したりという良い面もある一方で、気をつかいすぎて自分の意見を言えなくなってしまったり、疲れてしまったり…人間関係に悩む繊細さんは多いもの。繊細さんと非・繊細さんの感覚の違いは想像以上に大きいものであり、「相手も自分と同じように感じているはず」と思って繊細さんが非・繊細さんに接すると、思わぬすれ違いが生じて誰も悪くないのに傷ついてしまうことがあるのだ。悩んでいる繊細さんは、自分と非・繊細さんの感じ方の違いを知り、自分に負担のない接し方を見つけていくといい。

 また「キライ」という感情は「この人は自分に不利益をもたらす気がする」という嫌な予感の大事なセンサーでもある。特に感じる力の強い繊細さんは「なんだか変な感じ」「合わなそう」という第一印象を持った相手には最初から近づかないのもアリだ。とはいえ仕事など相手を選べないときもある。相手の勢いやマイナスの感情に押されて疲れてしまうときもある。そんなときは相手との境界線をイメージしたり、実際にモノを置いて境界線を引いたりして自分のペースを守るようにしよう。

「肩の力を抜いてのびのび働く技術」もある!

 あれこれ考えすぎる「考え疲れ」や、職場で常に気を張っている「緊張疲れ」で神経が休まらず、疲れがとれにくくなっている繊細さんは多い。でも大丈夫。繊細さんが肩の力を抜いてのびのび働く技術もあるのだ。たとえば仕事が重なって焦ってしまったら、「一つひとつやっていこう!」を合言葉に、目の前の仕事とは関係ない考えを頭から追い払ってしまうといい。優先順位をつけるとかえって混乱してしまうなら、「重要なものをひとつだけ」選ぶようにするといい。仕事が多くなりがちな繊細さんは「対応するべきものと放っておくものを選ぶ」など、そのほかにも対処法はいろいろある。

自分のままで生きることでどんどん元気になる!

 自分のままで生きるとは、繊細さを含めて自分を肯定し、自分にとっての「嬉しい」「楽しい」「心地いい」「ワクワク」をコンパスに人や場所、物事を選ぶということ。そのためには世間の声やまわりの人の声と自分の本音を聞き分け、自分の「こうしたい」という思いを何よりも大切にしよう。「お散歩したい」「今日は早く帰りたい」でもなんでも、自分の「こうしたい」を一つひとつ叶えようと行動することで、「私はこれが好き」「こうしたい」という自分の軸が太くなっていく。そして自分の軸が太くなるにつれ、相手の感情や意見に左右されにくくなり、人の中でもラクに過ごせるように、やりたいことができるようになる。つまり繊細さんは、自分の本音を大切にすることでたくましく、元気になっていくのだ。

文=荒井理恵

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