「錆びた釘を踏む」のは、どうして危険なの? 楽しく体のしくみや毒の攻略法を学べる化学エンタメ図鑑【書評】
PR 公開日:2026/3/31

毒や危険生物などの話が出ると「なになに?」と俄然前のめりになり、なぜか危ないものに興味を持ちやすい子どもたち。そんな彼らの好奇心を満たすなら、面白いキャラクターたちと一緒に“毒”について学べる新感覚の科学エンタメ図鑑『あぶない毒図鑑 からだのしくみと攻略法』(くられ、坂井建雄:監修/新星出版社)がおすすめだ。


本書に登場するのは、地球侵略を企む宇宙人のクラーレとケロッピー、そして彼らに誘拐された小学5年生のナギの3人。クラーレとケロッピーは、どんな毒でホモ・サピエンスを滅亡させようかと語り合うが、それはツッコミどころ満載で!? 彼らのやり取りは絶妙に愉快で、我が家でも小学生の息子がいつのまにか最後まで読み終えていたほど。
面白い漫画が入り口となり、「そもそも毒ってどこにあるの?」「どうして毒は危険なの?」といった素朴な疑問を、身近な話題と本格的な科学の知識でしっかりと解決してくれる一冊だ。
ハチミツは毒そのものではなく“胞子”が危ない


本書を読み終えて“毒博士”を気取る息子がさっそく「これ、毒だから気をつけてね」と自慢げに話していたのは、毎朝我が家で食卓に並ぶハチミツ。「ボツリヌス毒が入っているから1歳未満の乳児は食べちゃダメ」とよく言われる、あのハチミツだ。
本書によれば、ハチミツに毒そのものが含まれているわけではない。ハチミツに含まれることがあるのはボツリヌス菌の“胞子”であり、大人の腸にはいろんな菌がいるため、胞子はナワバリ争いに負けてしまう。しかし、菌が少ない赤ちゃんの腸では胞子が芽生えて毒素が出るのだという。
ボツリヌス毒素はボツリヌス菌によるものだが、他にも、トリカブトや毒キノコなどに含まれる毒、サリンなど人工的に作られた化学物質による毒、鉛などの金属に含まれる毒など、さまざまな毒が紹介されている。山菜と間違えやすいトリカブトは日本文化と深いつながりがあるし、鉛はその昔、鉛白=化粧品として使われていた黒い歴史がある。ナギたちの軽快かつ分かりやすい会話で、毒の発祥や歴史が語られているのも興味深い。
錆びた釘に含まれる破傷風菌は「神経の毒」


では、これらの毒がからだにどう作用するのか。本書では「からだのしくみ」と「毒のしくみ」を同時に学ぶことができる。
ネジや釘にハマっている息子。そんな我が家でタイムリーだったのが、錆びた釘に含まれるかもしれない破傷風毒素の話だ。「錆びた釘を踏むと危ない」とはよく言うが、本書によれば、サビそのものではなく、そこにいる破傷風菌が危ないらしいのだ。
ナギたちは「破傷風によって“笑いながら死んだ人間”がいる」と話しているが、どういうことだろうか。


本書によれば、破傷風毒素は「神経の毒」だという。そもそも神経とは、人のからだの全身に張り巡らされているもの。指を動かす、心臓を動かす…といった脳からの指令は、全身に電気信号を届ける神経があるからこそ成り立っている。ところが、破傷風毒素が入り込んだ神経は、“筋肉をゆるめる信号”の放出を止めてしまい、「縮め」の命令を受け続けた筋肉は一斉に収縮。そのうち、全身が硬直するという。…ゾクッと震えるような話だ。
このように、破傷風毒素は「神経の毒」だが、トリカブトは「心臓の毒」だし、鉛は「血液の毒」、さらには、紫外線のような「皮膚の毒」もある。本書ではまず、呼吸器、血液、脳、皮膚…など、からだの部位ごとのしくみが紹介され、その後に、その部位に影響を与える毒が解説されている。漫画でからだのしくみや毒の種類を読むだけでも興味深いし、もっと知りたければ、本格的な科学の知識まで身につけられるのだ。楽しく読み進めるうちに、科学が好きになっているかもしれない。
ちなみに、釘やネジを集めている息子は、何度言っても床に転がしっぱなし。「サビついた釘が足に刺さったら筋肉が引きつるかも。その後は…」と改めて伝えると、サーッと青い顔に。ちょっと怖がらせすぎたかな…。
毒とからだのしくみを知り、毒と共に安全に生きていこう


本書がからだのしくみとともに伝えるのは「毒の攻略法」だ。カフェインや塩だって一気に摂取すれば毒になりうるわけで、最後まで読むと、毒は日常の至るところに潜んでいることが分かる。すなわち、使い方や扱い方を間違えなければ、毒を避けることは十分に可能なのだ。そう考えると、子どもがこわ〜い毒に興味を持つのは、毒から自分のからだを守るための生命力の表れなのかも。
長い歴史のなかで研究されてきた人と毒の関係にも、驚くことが多い本書。この一冊で毒の攻略法を身につけて、毒にからだを侵略されませんように!
文=吉田あき
◆新星出版社のライフマガジン『Fun-life!』
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