『プラダを着た悪魔2』は「働く女性のバイブル」で終わらない。『トップガン マーヴェリック』にも通じる、“現実の仕事”を生き抜く映画だった【徹底考察レビュー】

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更新日:2026/5/11

『プラダを着た悪魔2』© 2026 20th Century Studios. All Rights Reserved.
『プラダを着た悪魔2』© 2026 20th Century Studios. All Rights Reserved.

 5月1日より『プラダを着た悪魔2』が劇場公開中。世界的に大ヒットをしている同作は、日本でもGW期間中に満席が続出し、興行収入はすでに19億円を突破、わずか6日間で1作目の最終興収17億円を超える超ロケットスタートとなった。洋画不振と言われる昨今、明るいニュースだろう。

前作も今作も「キラキラした理想のお仕事ムービー」ではない

 そんな『プラダを着た悪魔』の前作と今作で共通して感じたのは、良い意味で「キラキラした理想のお仕事ムービー」ではないということ。理想とは正反対の、シビアとも言える「仕事への向き合い方」や「厳しい現実」や「選択したことでの代償」を真正面から描いている。

 映画公式サイトには「時代を席巻した“働く女性のバイブル”が、華やかにアップグレード!」という文言もあるが、実際は「20年ぶりの続編だからこその時代と価値観の変容」があり、華やかさは良い意味で後退している。さらには「哀愁」さえ感じられることに、むしろ続編としての意義があると思えた。

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前作の鑑賞は必須か? 観ておけばより楽しめる続編に

 『プラダを着た悪魔2』© 2026 20th Century Studios. All Rights Reserved.

 今作の基本的なあらすじは「失業したジャーナリストが、かつていた職場へ舞い戻り、会社の窮地を救おうと奮闘する」とシンプルなため、前作を観ていない人も楽しめるだろう。

 ただ、前作で起こった出来事の「対比」として描かれる事象が多く、キャラクターや環境の「変化」を感じてこその面白さがあるので、やはり事前に前作を観ておくことを強くおすすめする。内容はうろ覚えという方は、直前に観返しておくことで、より細かいセリフの妙を楽しめるだろう。

※以下、『プラダを着た悪魔2』の内容に触れています。また、前作『プラダを着た悪魔』の一部ネタバレも含まれます。

『プラダを着た悪魔2』で連想した『トップガン マーヴェリック』

 『プラダを着た悪魔2』で連想したのは、2022年公開のアクション映画『トップガン マーヴェリック』だった。何十年も経過してからの続編であること、現実の時間と同じくキャラクターが年齢を重ねている、ということもそうだが、「価値観の変容」と「1つの時代の終焉が近い(かもしれない)」ことを描いていることも共通しているからだ。

『トップガン マーヴェリック』では戦闘機のドローンが実用化され、パイロットの必要性が薄れていくことに対し、トム・クルーズ演じる主人公は「But not today(でも今日じゃない)」と返していた。ベテランは全盛期をとうに過ぎ、これからは必要とされないかもしれないが、それでもやれることはまだあるはず……という「あがき」が提示されているからこそ、その後の展開が感動的になっている。

 そして、この『プラダを着た悪魔2』では、前作では今に見るとパワハラそのものの(当時としても決して肯定的には描かれていないが)言動をしていた鬼編集長・ミランダ(メリル・ストリープ)の印象がかなり変わって見えるし、哀愁さえ漂っている。

変わったのは鬼編集長のミランダ本人ではなく、環境と時代なのかもしれない

 かつてはアシスタントのデスクにコートを脱ぎ捨てていたミランダが、自分でコートをかけている光景は特に象徴的だ。他にも、会議で過激な発言をすると「咳払い」で咎められるし、何よりスキャンダル記事の影響が甚大のため広告主への交渉へ向かわなくてはならなくなる。

 前作では絶対的な権力、それこそ「悪魔」のようにさえ思えていたミランダが、今では真っ当なコンプライアンスの中で、自分の態度を「調整」せざるを得なくなったと思えるようになっている。

 それは、ミランダが一変したということではなく、周りを取り巻く環境がこの20年で積み重なるように変化していった、ということなのだろう。前作の頃の彼女も毅然とした、いや、傲慢な態度を取っていたようで、実際は「社会の歯車」にすぎなかったのかも、と逆算的に思い返すこともできる。かつて新人だった主人公・アンディ(アン・ハサウェイ)には見えていなかったミランダの苦悩や本質的な人間性が、20年の時を経て可視化された、という言い方も可能だろう。

 さらには、SNSの興隆で『ランウェイ』はとうに雑誌ではなくなり、仕事そのものがAIに取って代わることも示唆され、「沈みゆく船に乗り続ける」ことが、もはや「ポンペイの火山の大噴火」にさえ例えられる場面がある。

 ファッション業界にいる人でなくても、「SNSやAIの台頭で仕事がなくなるかもしれない」という恐怖は他人事ではなく、切実に感じられるだろう。その後にミランダがつぶやく「引退」についての言葉も、また突き刺さる人は多いはずだ。

 それでも、今作はその沈みゆく船に乗り続けることへ絶望はしない。いつかはなくなる仕事だとしても、これまでに成し遂げていたことや、培ってきた経験が無価値になるわけじゃない。そんな反骨精神ともいうべき、それこそ『トップガン マーヴェリック』の「でも今日じゃない」の姿勢が、この『プラダを着た悪魔2』にも確かにあると思えたのだ。

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