【対談】鏡リュウジ×東畑開人|「占いはどれも当たらない?」占いと心理学の専門家が本音で語る、現代人に必要な“心の遊び”

文芸・カルチャー

公開日:2026/6/27

 占星術研究家として第一線を走り続ける鏡リュウジさんと、気鋭の臨床心理士・東畑開人さん。一見すると「混ぜるな危険」とも思える占いと心理学。その両者の専門家であるおふたりによる異色の対談本『昼間のスターゲイザー 占いと心理学の対話』が刊行されました。

 アプローチは異なれど、人間の無意識や心の深層を見つめ続けてきたふたり。対談では、占いの具体的な技術から、過剰に「信じる」ことが求められがちな現代社会における「心の遊び」の重要性まで、縦横無尽に語り合っていただきました。

 正反対の立場にいるようでいて、実は同じ夜空を見上げているふたり。知性とユーモアに満ちた対話の舞台裏に迫ります。

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『昼間のスターゲイザー 占いと心理学の対話』
『昼間のスターゲイザー 占いと心理学の対話』(鏡リュウジ、東畑開人/集英社)

――本作を読んで、まず、東畑さんが鏡さんのことを「東京のお兄さん」と慕っていらっしゃることに、驚いた方も多いのでは。

鏡リュウジ(以下、鏡) そうみたいですね。長年、付き合いのある構成作家さんで、東畑さんの著作を全部読んでいるという方にまで「意外」と言われたことが、僕にとっては意外でした。どうやら、鏡リュウジというキャラクターをどこで知ったかによって、僕に対する印象がまるで違うのだということに、改めて気づきました。一応、年に一冊はおかたい本も刊行しているんだけれど、女性誌のイメージが強いと、どうしても学術的な印象から遠ざかるらしい。

東畑開人(以下、東畑) 40年以上、そのイメージを背負ってこられたんですね。僕が鏡さんを初めて知ったのは、ユング派の分析家ジェイムズ・ヒルマンの『魂のコード』を翻訳した方として。占いの印象は、あとから出会ったんです。若いころから、アカデミックな方という印象を抱いてきたし、実際にお会いしたら想像以上に博識で、いろんなことを教えていただいて、お話しするのが楽しくて仕方がない。

鏡 初めてお会いしたのは、本にも書いたとおり2015年。東畑さんの著書『野の医者は笑う 心の治療とは何か?』(誠信書房)について感想をX(旧Twitter)につぶやいたら、インタビューさせてほしいとDMをいただいたのがきっかけです。とても嬉しかったんだけど、実は、怖い人が来たらどうしようと内心、ドキドキしていた。だから、ホテルのラウンジとかではなく、新宿のミロードにある喫茶店を指定したんです。

東畑 すぐに逃げられるように(笑)。

鏡 あのころは、人も少なくて穴場スポットだったんですよね。でも、お会いしたら予想外に爽やかな好青年で、僕のほうこそ、お話しするのが楽しくて。それからずっと、ご縁が続いていますね。

東畑 これも本で話したことですが、占いと心理学は「混ぜるな危険」の分野であり、大きな差異があります。だけど、混ぜるのではなく比較しながらお話をしていくと、僕と鏡さんが同じ方向を見ていることがわかる。それがタイトル『昼間のスターゲイザー』の由来でもあります。真昼に星を見ることはできないけれど、宇宙では夜と変わらず瞬いている。その瞬きを見つけようとする人なのだと、SEKAI NO OWARI『スターゲイザー』を聴いているときに、ふと思い浮かんだ。

鏡 連載が終わるころ、柳田國男もまた、子どものころに昼間の星を見た経験を書き残しているということを知ったんですよ(「幻覚の実験」柳田國男)。折口信夫ならそういうこともあろうと思うけれど、合理主義でお役人でもあった柳田がそうした神秘的な経験をしたことで民俗学に向かっていくモチベーションを得たのだ、と思ったら、ひどく心を揺さぶられたんですよね。Xに投稿したら、東畑さんも「柳田國男も昼間のスターゲイザーであったのか!」と反応してくださいましたが、ただの比喩ではなく、実際にそういうことがあったのか、と。

東畑 ただやっぱり、僕と鏡さんとでは、アプローチが異なるんですよね。僕の仕事は、人間しかいない世界で徹底的に物事を考えなくちゃいけない。人間の外側にあるもの……たとえばあの世や霊や神なんてものは、とりあえず「ない」ことにしておかなくちゃいけない。すごく淋しい世界を生きているんです。

鏡 淋しいですか?

東畑 というよりも、鏡さんが生きている世界は「淋しくないんだな」と思いました。人間以外のものにも開かれているから、世界があらゆる場面で微笑みかけてくれる気がする。臨床の現場ではもちろん「大いなるもの」を感じるクライアントさんもいらっしゃいますが、僕自身は一切、その存在を想定していないので。

鏡 確かに、お話を聞きながら、カウンセラーという職業は、かなり禁欲的に、注意深くクライアントに向き合わなくてはいけないものなのだ、と感じました。直接的に励ましてはいけない、というお話もありましたよね。占いでも、「こっちの方角へ行け」とか「こうしたほうがいい」という物言いは避けるべきだと僕は思っているけれど、ニュアンスとして、そう受け取られるようなことを言っているときはあるから。ただ、「大いなるもの」というのは「無意識」の言いかえであると僕は考えていて。その無意識をどう見つめるか、ということにおいては、東畑さんの仕事も同じではあるんですよね。

東畑 そう。たとえば鏡さんが「星のめぐりが訪れている」と言うところを、僕たちは「心の深いところで何かが動き出した」という言い方をする。やっぱり、鏡さんたちのほうが、外側の世界を見つめているんですよ。僕たちは、あくまで内側。自分のなかにあるものを見続けなくちゃいけない。そうなると、責任も自分自身に見出さなくてはならなくなるので、ちょっとしんどいんですよね。それが「淋しい」ということに重なるのかも。

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昼間のスターゲイザー 占いと心理学の対話 (集英社ノンフィクション)

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