【「ガクテンソク奥田の 喋る!鎌倉時代」発売直前連載】/第2回「なぜ初めて書く歴史本は、鎌倉時代でなければいけなかったのか」【奥田修二インタビュー】
公開日:2026/9/4

9月24日に初となる歴史本を上梓する、ガクテンソクの奥田修二氏。「鎌倉時代」をテーマに、「正しいより楽しい!」をモットーに執筆したというこの書籍は、史料にはない「登場人物たちの会話」が読みどころの一つだそう。連載第2回目の今回は、鎌倉時代である理由とその魅力を語ってくれました。
『暴れん坊将軍』とは正反対、鎌倉時代の武士は野蛮な無法者たち
――奥田さんの歴史語りが最初にバズったのは、『東野山里のインプット』(BSよしもと/YouTube)の「古事記」回だったと思うのですが、この書籍は「鎌倉時代」がテーマなんですね?
奥田さん(以下、奥田):「どの時代が好き?」ってよく聞かれるんですけど、僕はピンポイントじゃなくて「日本史全体」が好きなんです。「中華料理が好き」って言ってる人に「餃子とシウマイどっちが好きなの?」って聞くようなもので、そんなの日によるし、全体が繋がっているからこそ面白いんですよね。ただ、初めて趣味を本にするってなった時に、「古代はちょっとメルヘンがすぎるな」と。確固たる証拠も少なすぎるし、想像だけで書くのは、さすがにやりすぎやなと。
となると、ある程度は史料として裏付けがありつつ、かと言って明確に「100%これが事実です」とも言い切れない、絶妙なグレーゾーンが残されている時代がよかった。そして、何より「鎌倉時代がなかったら、のちの戦国時代も幕末だってないわけやん」というところです。武士の始まりの時代こそが、ふさわしいと思ったのが最大の理由ですね。
――武士、武将ってロマンがありますし、その始まり、って魅力ありますよね。
奥田:僕は子供の頃、剣道部だったのもあって、昔からお侍さんを「かっこいい」と思ってたんです。母親が松平健さんの大ファンで、家では『暴れん坊将軍』だけは絶対に観させられていました。普段はチャンネルの主導権を一切握ろうとしないおとなしい母だったんですが、土曜の夜だけは「これだけは私の時間やから!」と譲らなかった。そんな環境で育ったので、もともと武士に対する憧れや馴染みは強かったんだと思います。
――『暴れん坊将軍』の時代の武士と、鎌倉時代の武士って、違いがあるものなんですか?
奥田:いや、もう全く違います。いわゆる『暴れん坊将軍』に出てくるような、江戸時代中期の上品な武士のイメージと鎌倉時代の武士はかけ離れています。めちゃくちゃ荒々しくて、人間らしいんです。江戸時代の侍の世界だと、善と悪がはっきり分かれていて、良い武士が悪代官を懲らしめるみたいな「勧善懲悪」なんですけど、鎌倉や室町まで遡ると、そもそも善悪なんて分かれてないんですよ。極端に言えば「勝った方が善」という力づくの世界。朝廷から見たら、武士なんて完全に「野蛮な無法者」ですから。でも、そのダイナミックさとか、動物的な意味での人間らしさが一番詰まっているのが鎌倉時代やなと、書いていて改めて感じました。

お茶目かつめちゃくちゃ優れた「御成敗式目」
――そんな野蛮な無法者たちを統治するためにできたのが「御成敗式目」ですね。
奥田:そうなんですよ。民主主義みたいに外から入ってきたものでもなければ、律令みたいに中国から持ってきたものでもない。当時の日本の実態や、武士たちの常識・折り合いを盛り込んで作った「唯一の純国産ルール」が生まれたのが鎌倉時代です。
――御成敗式目の中で、奥田さんが面白いと思うルールはありますか?
奥田:不倫をしたときの罰で、「髪の毛を半分だけ剃られる」っていうのがあるんです。全剃りにして「出家したから許して」とカッコつけた言い訳で逃れるのを防ぐために、一目で「あいつ不倫したヤツや」と周囲に分からせるという一番恥ずかしいペナルティ。すごく合理的というか、お茶目ですよね。あと、悪口や陰口を言うと、ものすごく厳しく怒られて島流しにされます。このルールを適用したら、現代人の8割は島流しになって日本から人がいなくなると思います。
――たしかに日本から人はいなくなりますね(笑)。でも、不倫も悪口も、個人の問題で、法的なことで禁じるほどのことではないような気もします。
奥田:当時は、ちょっとした個人間の悪口や喧嘩が、後々に家同士を巻き込む大戦争に発展してしまう時代でした。北条家が三浦家を滅ぼしたように、些細な陰口から戦争が始まる。だからこそ、争いの火種を未然に防ぐために「絶対にアカン」というルールができたんです。これは、京都で仏教の本質を学んだ武士や知識人たちが、鎌倉に戻ってきてから作ったからこそ、これほど優れた法ができたんだと思います。良くない結果の「原因」を見つけて、そこをルールで変えるという思考法ですね。
平氏と源氏の調和が生んだ奇跡、明恵上人と北条泰時
――御成敗式目を作ったのは、三代執権の北条泰時ですね。
奥田:泰時は、決して最初からエリートコースを歩んでいたわけではありません。彼は、お父さん(義時)が権力争いで手を汚し、苦悩している姿を間近で見ていました。だからこそ、「お父さんも辛いんやな。僕はただお父さんのため、そして鎌倉のために、純粋にためになる政治をやりたい」と強く願う、謙虚な叩き上げの二代目だったんです。そんな泰時が、京都で務めに就いている時に、明恵上人というお坊さんと運命的な出会いを果たして、それが御成敗式目につながるんです。
――本当に、歴史そのものに意思があるんじゃないかというような出会いですよね。
奥田:明恵上人は平氏の家系で、幼くして両親を亡くして孤児になり9歳でお寺に入った方なんです。お父さんは源頼朝を討ちに行って戦死していますから、普通なら源氏や鎌倉幕府に対して恨みや怒りに狂ってもおかしくないのに、悟りを開きすべてを平等に見る境地に達していた。平氏出身の高僧が、源氏が築いた鎌倉幕府の次期リーダー候補に知恵を授け、争いを超えて平和を目指すルール(御成敗式目)を創り上げたんです。ここが究極のロマンやな、と深く痺れた部分なんです。
――めちゃくちゃ面白いエピソードですね。次回は、奥田さんの印象に残る人物や出来事を重点的に聞かせてください。
奥田:承知しました。山ほどあるので厳選しておきます。
撮影:渡辺秀一 取材・文:栗山春香

【書籍情報】
書名:ガクテンソク奥田の 喋る!鎌倉時代
著者:奥田修二
定価:2,200円 (本体2,000円+税)
発売:2026年9月24日(木)
発売・発行:株式会社KADOKAWA
https://www.kadokawa.co.jp/product/322504001313/
【イベント情報】
発売記念お渡し会を東京・大阪で開催!
先着順ですので、申し込みはお早めに!
東京会場:芳林堂書店
https://livepocket.jp/e/jmn9t
大阪会場:TSUTAYA EBISUBASHI
https://ameblo.jp/tsutaya-4900/entry-12972217319.html
