【『ルックバック』W主演インタビュー】出口夏希「“演じてみたい”と思う余裕もなかった」蒔田彩珠「子ども時代を演じた二人が着ていた服を、そのまま私たちも着ていた」

エンタメ

更新日:2026/9/12

 藤本タツキによる傑作漫画『ルックバック』が、是枝裕和監督・脚本・編集で実写映画化される。

 漫画を描くことにひたむきに向き合う二人の少女、藤野と京本。自分の才能に絶対の自信を持っていた藤野は、学年新聞に掲載された京本の4コマ漫画をきっかけに、彼女の圧倒的な画力を知る。やがて漫画を通じて結ばれていく二人だったが、その先には、思いもよらない出来事が待ち受けていた――。

 そんな藤野を演じるのは出口夏希。そして、藤野に憧れながらも、秘めた才能を開花させていく京本を蒔田彩珠が演じる。漫画というひとつのものを追いかけるなかで芽生える友情、嫉妬、憧れ、そしてかけがえのない時間。多くの読者の心を揺さぶった物語を、二人はどのように演じたのか。

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 今回、W主演を務めた出口夏希と蒔田彩珠にインタビュー。撮影のために訪れた秋田県にかほ市での時間や、それぞれが藤野、京本という役と向き合った日々、そして実写映画『ルックバック』という作品に込めた思いについて話を聞いた。

蒔田「子ども時代を演じた二人が着ていた服を、私たちもそのまま着ていました」

――『ルックバック』でお二人が演じたのは中学時代の途中からですが、「えっ、変わったよね!?」と何度見もしてしまうくらい自然といいますか、子ども時代を演じたお二人と雰囲気が同じだったので、驚いてしまいました。

出口夏希(以下、出口):そう言っていただけて嬉しいです。実は私も、公式写真のうしろ姿をみて、自分たちなのか子どもたちなのかわからなくなっちゃって。

蒔田彩珠(以下、蒔田):子ども時代を演じた二人が着ていた服を、私たちもそのまま着ていましたからね。

出口:我ながら、よく入るなあと思いました。

蒔田:サイズもね、S・M・Lじゃなくて、140、150って表記された、まごうことなき子ども服で。雪国ならではの厚着で、地元から出たことのない子たちの野暮ったさみたいなものも、衣装で表現されていて。そのおかげで、私たちも、年齢より幼く見えたのかもしれない。メイクも、ほとんどしなかったですし。

出口:これまでのどんなお仕事より、準備にかかる時間が短かった(笑)。衣装やメイクには、かなり助けられましたね。クランクインするまでは、正直、怖くてしかたがなかったけど、現場に入ったら、にかほ市(ロケ地)の情景や、その場で感じられる空気や音、それから、彩珠とのあいだに流れるまったり感が、緊張をといてくれました。

出口「“演じてみたい”と思う余裕もなかった」

©藤本タツキ/集英社 ©2026 K2 Pictures・集英社

――クランクイン、怖かったんですか。

出口:怖かったですね。原作はもちろん、アニメ映画も誰もが知る名作で、「演じてみたい」と思う余裕もなかったんです。脚本はわりと原作をそのまま書き起こした感じでしたけど、その土地の情景を映し出しながら演じることでなにかが変わる、繊細な作品なんだというのは読んでいるだけで伝わってきましたし。

蒔田:私たちはふたりとも、『舞妓さんちのまかないさん』で是枝監督とご一緒していますけど、やっぱりドラマの台本とは雰囲気が少し違っていて。より詩的というか、心情が描かれていたよね。

出口:そう。だから、現場で五感で触れて演じてみないことには、どうなるかわからない不安もありました。

蒔田「役作りしようなんて思わなくても、自然と京本と藤野になれたのは、にかほという場所のおかげ」

――実際、演じてみていかがでしたか。

蒔田:初日は、撮影ではなく、マンガを描く練習をしたんだよね。

出口:そう。で、終わったらご飯行って飲んだりもして、すっかり意気投合したよね(笑)。今ふりかえると、なぜだかわからないけど、役についての話は一切しなかった。

蒔田:プライベートの話しかしなかったね(笑)。

出口:地酒もおいしかったよね~! お店の方から「撮影に来ているんでしょ、主役の子どもたちが来てたよ。あなたたちはどこの部署?」って聞かれたから「カメアシ(カメラアシスタント)です」「美術の助手です」って答えたりして。

蒔田:すぐにバレたけどね(笑)。

出口:地元のみなさんが本当にあたたかかったよね。撮影が終わる時間までお店を開けて待っていてくれて、しかも、私たちが行く時間にあわせてお米を炊いてくれた。秋田のお米、おいしかったな。お昼は毎日お弁当を食べているって言ったら、ほかほかのごはんを届けてくださったりもして。

蒔田:お店のおばあちゃん、エキストラとして参加してもらったよね。駅の階段を下りてくるシーンがあるので、ぜひ探してみてください。

出口:そういうのもあって、自然と、私たちはこの土地で育ったんだなあという気持ちになれて、撮影しているという感覚もどんどん抜けていきました。

©藤本タツキ/集英社 ©2026 K2 Pictures・集英社

蒔田:役作りしようなんて思わなくても、自然と京本と藤野になれたのは、にかほという場所のおかげだよね。

出口:そうかも。最初にマンガを読んだときは、藤野のことを、マンガが本当に好きで、負けず嫌いな子なんだなあという印象で。私はどちらかというと、負けたくないって張り合うより、京本みたいに「こんなことができるなんて、すごい! 私もできるようになりたい、吸収したい!」って思うほうだから、ものすごく共感しながら演じるってわけでもなかったけど、あたりまえのようにここで育って京本に出会ったんだな、という実感が生まれたおかげで、自然と藤野らしくなれた気がする。

蒔田:私も、同じかも。京本は藤野にものすごく憧れているけど、あんまり、この人みたいになりたいとか、思わないから。もちろん、自分がやりたかった役を誰かが演じていたら悔しくなるし、自分より年下の子たちの演技に圧倒されて、尊敬することもあるけど。

出口:でも、その人はその人だから、って思えるタイプだよね、彩珠は。

蒔田:うん、そうだね。悔しさをバネにするより、楽しみを見つけながらお仕事したいし。

出口:そういう意味では、今回の現場は本当に楽しかった。演技の相談なんて一度もしなかったけど、自然と呼吸があうのも、不思議だったな。

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