10万円で売られている中古のスポーツカー。元はカップルが乗っていたが、彼女が高速道路でサンルーフを開けて…。猫マンガ『くるねこ』著者による実話怪談【書評】

文芸・カルチャー

PR 公開日:2026/10/1

ねこまた怪議
『ねこまた怪議』(くるねこ大和/産業編集センター)

『ねこまた怪議』(くるねこ大和/産業編集センター)は、ぞわっ……としながらも味わい深い実話怪談をお届けするコミックエッセイだ。

 アニメ化もした人気猫マンガ『くるねこ』の著者くるねこ大和さん、劇作家のやとみまたはちさん、「猫医者に訊け!」という質問コーナーでお馴染みの獣医師・鈴木真さんの3人がYouTubeで語る「本当にあった奇妙な話」のエピソードを、マンガとお話に仕立てたという本作。

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 ねこまた銀座にある居酒屋ヨモツヘグイ。「いいお話はお品書きに採用される」という、ちょっと変わったシステムのお店だ。

 怪談を語るのは、ねこまた化したリリーさん(くるねこ大和さん)、猫医者さん、やとみまたはちさん。彼、彼女らの実体験や人から聞いた実話怪談が、くるねこさんのイラストと共に、ごく短い語りの文章として、12エピソードも収録されている。

 では個人的に好きなお話をご紹介しよう。まずは猫医者さんが語る「10万円のスポーツカー」というお話。

 ある中古車屋ではスポーツカーが10万円で売られていたという。これと言って傷のない新車。信じられないほど破格の値段だが、なぜこのスポーツカーはこれほどまでに安いのか。……もちろん、“いわく”があるのである。

 1960年代生まれのあいだでは有名らしいが、まだ素行の悪い走り屋が「俺はどこそこで100キロ出した」など、ワルの自慢話が許されていた時代。サンルーフ付きの、そのスポーツカーでドライブをしていたカップルがいたそうだ。彼氏は高速道路で180キロも出して運転していた。

 助手席に乗っていた彼女もはしゃいで、サンルーフを開け「わぁ―――ッ!!」と頭を出したらしい。そしたら……。

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 ここまで読んで、不吉なことを想像した方も多いだろう。私(この記事を書いている人)も「あ…もしかして柱とかトンネルに衝突したとかの…不慮の事故が…?」と、怪談的な意味ではなく血の気が引いたのだが、本作の展開は私の想像とは斜め上のインパクト大な結末となり、呆気に取られてしまった。

「後ろの大物」は、リリー(くるねこ大和)さんが33歳くらいの時のお話だという。

 食品関係のパッケージデザインをしていたリリーさんは、デザイン制作後、そのデザインに使用する写真を撮る現場に立ち会うため、撮影場所に行く機会があったそうだ。

 早めに着いてしまい時間を潰すため、ホテルラウンジの喫茶店に入った。しばらく、陽の光が差し込む優雅な空間でお茶を飲んでいたリリーさん。しかし急に暗くなって……。

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 後ろに座った人が光を遮っているのかと思い振り返ってみると、そこにいたのは――。

 こちらもいい意味で予想を裏切り、「色んな意味で怖い」結末になっている(そしてちょっと笑えてしまうのも不思議……)。

 どのお話も簡単に読めて、どこか胸に沁みる。ふらりと不思議な居酒屋へ立ち寄るような気持ちで、本書も楽しんでいただければ嬉しい。

文=雨野裾

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