入社4年目テレビ局員によるエッセイ連載「テレビぺろぺろ」/ 第16回「『アリフォルニアseason2』はお尻が奏でる変ニ長調に注目して」

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公開日:2026/9/30

テレビ東京入社4年目局員・牧島による、連載エッセイ。「新しくて面白いコンテンツ」を生み出すため、大好きなお笑いライブに日参し、企画書作成に奮闘する。これはそんな日常の記録――。

 アリフォルニアseason2

こんにちは。
テレビ東京の牧島俊介です。さて...。

私が監督・プロデューサーを務めた『アリフォルニアseason2』(TVerで配信中)で、最もこだわったのは、第1話の「アリタのお尻から黒い謎液が湧くシーン」である。

番組冒頭約20秒間、アリタはお尻から計21回、黒い謎液を噴出する。

「ピュッ、ピュッ、ピュッ…」

『アリフォルニア season2』第1話「巨万」オフショット
『アリフォルニア season2』第1話「巨万」オフショット

これらの液体噴出につけられた「ピュッ」という効果音は、全てが同じではない。それぞれのピッチを1ヘルツ単位で調整して、変ニ長調のメロディーを奏でるようにしている。ピッチとは、「ド」「レ」「ミ」…といった音の高さのことだと思ってほしい。

便宜上、液体噴出の音を「ピュッ」と書いたが、実際に私には「ピュッ」とは聞こえていない。「ド」とか「ファ」とか、音の名前で聞こえている。絶対音感がある。

ここから8段落ばかり、絶対音感のない方には伝わりにくいお話が続きますが、どうかお付き合いください…。

番組制作には、効果音やBGMをつける専門職・音効がいる。最初に音効さんからご提案いただいた効果音は21音のうち、前半18音が「ファ(F4)」で、後半の3音が「ラ♭(A♭4)」であった。

もっと耳を楽しませたい。ワクワクさせたい。そこで、一つひとつの音を以下のように変更した。

ファ・ファ・ファ・ファ・ファ・ファ・ファ・ファ・ソ♭・ファ・ファ・ファ・ファ・ソ♭・ラ♭・ラ♭・ラ♭・ソ♭・ラ♭・ラ♭・レ♭
(F4-F4-F4-F4-F4-F4-F4-F4-G♭4-F4-F4-F4-F4-G♭4-A♭4-A♭4-A♭4-G♭4-A♭4-A♭4-D♭5)

 アリフォルニアseason2

最も大事なのは、ラスト3音の並びである。「ラ♭(A♭4)・ラ♭(A♭4)・レ♭(D♭5)」。最後の1音だけ、ピッチを大きく持ち上げて締めくくっている。

仮に、「ラ♭(A♭4)・ラ♭(A♭4)・ラ♭(A♭4)」と同じ音の連続で終わったとしよう。

何かを命令されているような強い圧迫感がある。個人的には、叱られているような感覚さえする。ところが、最後の1音を高くしてみるとどうだろうか。どこか素朴な疑問を投げかけられているような軽やかな印象へと様変わりする。音の疑問形である。

ちなみに、最後21音目の「レ♭(D♭5)」の直前にある、19音目と20音目の「ラ♭(A♭4)」は、15〜17音目の「ラ♭(A♭4)」よりも、ほんのわずかにピッチが高い。若干ズレた違和感により、黒い謎液の疑問を表現している。

つまり、黒い謎液側からアリタ、そして視聴者に疑問を投げかけているのである。

私は、絶対音感があるという自分の能力が、ことさら好きである。

他者への嫉妬で狂うことがないのは、音感があるからかもしれない。たとえば、学生の頃、野球部でレギュラーを外されたとき、エースで4番を務める同級生に対して「いいなあ。あいつみたいになりたいなあ」と思ったとする。「でも、あいつになれたとして、音感なくなるのは嫌だな」「それなら今の自分でいいか」となる。私の身長は160cmだが、音感を失う代わりに180cmになれると持ちかけられても、すぐに断る。

どんな失敗をしても、どんな不運な目にあっても、自己肯定感が落ちきらずに済んでいるのは、音感のおかげだと思う。

別に、私の人生において、音感があることで得する機会はあまりない。カラオケは多少上手い方だが、発声能力が特段優れていないから、誰かを感動させるほどではない。飲み会の席で、音感があると言えば、かなりの確率で空のジョッキを爪で弾いて、「この音なに?」とクイズを出される。「ソ♭」とか「ラ」とか聞き取った通りに答える。しかし、私以外に誰も正解がわからないから、まったく盛り上がらない。答え合わせが出来ないクイズは、つまらないのだ。

では、なぜ大して役に立ってこなかった音感が好きなのか。自分でもよくわかっていない。考えたこともなかった。

推し測ってみる。誰かが「あ」と発したとき、私は「あ」とも聞こえるし、それが「ド」とも聞こえる。音に対して、言語以外の世界がもう1つある豊かさが、好きなのかもしれない。なくなったら、本当に寂しい。

私は、『アリフォルニア season2』に異常な愛着がある。それは、自分の好きな音感の能力を、初めて有効活用できたからだと思う。日の目を見てよかったね、そんな感慨がある。

音感が活かされたのは、第1話の液体噴出のシーンだけではない。たとえば、第3話の冒頭。深澤辰哉さん演じるアリツグ、鈴木もぐらさん演じるアリババが簡単な歌を口ずさむシーンがある。

元々、歌を口ずさむ予定はなく、通常のセリフ口調のつもりだった。だが、収録現場で、セリフを歌のメロディーにのせた方が、コント全体に心地よいリズムが生まれると、ふと思った。そこで、深澤さん、もぐらさんに「何か適当な、調子の良いメロディーにのせて歌ってください」とお伝えする。そして、編集の段階で、おふたりの口ずさんだ歌のピッチを聞き取ってピアノとトランペットの伴奏を作り、最後にドラムの音を加えて仕上げた。

音感がなければ伴奏をつけられず、何か物足りない味わいになっていただろう。そもそも、収録現場で咄嗟にアドリブの歌をお願いできたのは、あとで音を聞き取って伴奏をつければどうにかなると踏んでいたからだ。

さらに、ストリングスやベース、パーカッションを足したオーケストラVerも作成した。本編中で2度流れるサウンドトラックとしている。

なんだか、すごく誇らしい。爽快である。ファ・ファ・ファ・ファ・ファ・ファ・ファ・ファ・ソ♭・ファ・ファ・ファ・ファ・ソ♭・ラ♭・ラ♭・ラ♭・ソ♭・ラ♭・ラ♭・レ♭、とアリタのお尻が奏でる旋律が、私の脳内をループしている。

ぜひ、『アリフォルニアseason2』(TVerで配信中)をチェックしてほしい。

『アリフォルニア season2』放送情報
放送日時:
第1話:9月9日(水) 深夜1:00-1:30
第2話:9月16日(水) 深夜1:06-1:36
第3話:9月23日(水) 深夜1:06-1:36
第4話:9月30日(水) 深夜1:00-1:30
放送局:テレビ東京 ほか

『アリフォルニア season2』関連サイト・SNS
◎TVer:https://tver.jp/series/sr3ya93ryo
◎公式X(Twitter):@Alifornia_tx  https://x.com/Alifornia_tx
◎公式Instagram:@aliforinia_tx  https://www.instagram.com/aliforinia_tx

牧島俊介●テレビ東京入社4年目を迎えた現役テレビ局員。高校時代に、お笑いコンビ「虹の黄昏」に出会い、衝撃を受ける。自ら企画した番組は、柴田理恵・マユリカ中谷出演のバラエティ番組『ナキヨメ』、有田哲平主演、Snow Man深澤辰哉、空気階段鈴木もぐら、ロングコートダディ兎共演のシチュエーションコメディ『アリフォルニア』など。

<第17回に続く>

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