地下アイドル、そして応援するファンの実情。内側と外側から業界を見つめる、地下アイドル・姫乃たまインタビュー【前編】

エンタメ

2018/1/9

img01.jpg
姫乃たまさん

「地下アイドル」と言われてもよくわからない。そもそも「地下アイドル」の定義って何だろう? そう考える人は多い。私も多分に漏れず、AKB48やももクロ、モーニング娘。といったメジャーどころは知っているが「地下アイドル」と言われても正直ピンとこなかった。

『職業としての地下アイドル(朝日新書)』(姫乃たま/朝日新聞出版)によれば、地下アイドルとは「マスメディアの露出よりも、ライブを中心に活動しているファンとの距離が近い新しいアイドルの総称」だという。

 著者である姫乃たま氏は、自身も地下アイドル。そして同時にライターとしても活躍する異色な経歴の持ち主だ。今回は地下アイドルの内側と外側からアイドル業界を見つめる姫乃さんに取材を敢行。

 インタビュー前編では、地下アイドルや地下アイドルを応援するファンの実情について語ってもらった。

◎ファンとアイドルとの双方向のコミュニケーションが面白い

――学業の傍らで、あるいは副業として地下アイドル活動に勤しむ人がいるなど、地下アイドルってめちゃくちゃ間口が広いですよね。

姫乃 確かに間口は広いです。本を執筆するにあたって収集したアンケートでも「なんとなくの好奇心」で活動を始めた子が一番多くて、私みたいに「派手なわけじゃないけど学校で悪目立ちしてしまう」タイプや「一般企業に勤めるのが無理」という方、反対に正社員で働く傍ら活動している方もいます。

――具体的にはどんな時「間口広いなぁ」って実感しましたか?

姫乃 2009年にこの活動を始めて、「FICE」というパフォーマーのおふたりに出会った時ですね。彼女たちは2001年から活動しているのですが、キャラクターを保つために髪の色をずっと青とピンクに染め続けているんです。私物も赤と青のものしか身に着けない。そんな「FICE」さんの周りには同じように個性的な地下アイドルがどんどん集まってくるんですよ。

――スゴイ! 個性が強い人は個性的な人を引き寄せるんですね。

姫乃 個性のパンデミックが起きてました(笑)。その光景を見て、すごく衝撃的で面白かったし、クラスの輪に入れなかった私も受け入れてもらえて、「この業界は本当に間口が広いな」って救われた想いもありました。

――メディアで活躍しているような地上アイドルと違って、地下アイドルの良さや面白さって何でしょう?

姫乃 地下アイドルは面白さがわかりづらい業界だと思います。すごく歌や踊りが上手いわけじゃない。それを楽しめるファンの人たちは、物事を多角的に見ることができる柔軟な人たちです。地下アイドルの面白さはそんなファンとアイドルが、人間関係を築けるところにあると思います。そこが良さであり、面白いところ。アイドルもファンに承認されたいと思っていますし、ファンもアイドルに認知されたいと思っているので、人間関係が一方通行ではないんです。

◎ファンはまるで親戚のおじさん・おばさん!?

――なるほど。楽しそうだなって思いつつも、ファンの方々の熱量がすごそうで、ライブに行くの尻込みしちゃいますね(笑)。

姫乃 自分が応援している子に売れてもらいたいから、ファンの方は新規のファンに優しいので安心してください(笑)。何よりみんなライブハウスで大きな声を出したり、ファン同士もすごく仲良くしていて楽しそうですよ。

――ファン同士の横のつながりが強いんですね。

姫乃 めちゃくちゃスゴイです。たまに私が置いてけぼりになりますもん(笑)。

――地下アイドルのファンの方って女の子を消費する、というか性的な目で見るっていう印象を持っていました。実際の現場はどうなのでしょう?

姫乃 映像などで見ると異様に映ると思いますが、単純に音楽を聴いて盛り上がっているだけで、性的な雰囲気はありません。温かい目で見守ってくれています。

――お父さん・お母さんが子どもの運動会を応援しに行くみたいな?

姫乃 どちらかと言うと親戚の子。ちょっと無責任に可愛がられてるような(笑)。自分の子だと、ちょっと心配ですからね。

◎元カレ(?)のようなファンの存在

――これまで印象的だったファンとのエピソードってありますか?

姫乃 こないだ、ファンのみなさんからCDのリリース祝いで花束をもらったんですけど、その中に1本だけ気持ち悪い花が! 何だろうって調べたら「鶏頭(ケイトウ)」っていう花だったんです。CDの曲の中に「脳みそをマッサージ」っていう曲があって、その“脳みそ”と私の生まれ年の“酉年”、WEB連載の「とりあたまちゃん」がかかっていた贈り物だったんです。すごく感動しまして、今では「鶏頭」が一番好きな花です。

――素敵なお話じゃないですか! 他にも思い出に残っているファンはいますか?

姫乃 本にも書きましたけど、初めてファンになってくれた人かなあ。初めてライブに出演した時、一緒にほかのアイドルさんの物販に並んで「こういうの売るんだよ」って、右も左もわからなかった私に色々教えてくれたんです。他にもオタ芸とか、いろいろ教えてもらいました。もう他界(ファンをやめること)されちゃったんですけど、年一回くらい、ライブに来てくれます。元カレみたいな感じですね(笑)。

――これまでいた困ったファンは?

姫乃 他のファンを排除しようとする人がいました。その人だけは唯一怖かったです。他のアイドルさんにも他のファンが来られないように物販を買い占める方や、説教好きな方がいて、気を引きたいのかもしれないですけど……逆効果ですね。

 前編はここまで。インタビュー後編ではビジネスとして見るアイドル業界、そしてアイドル業界のこれからについて語ってもらう。

【後編はこちら】平均月収12.7万円。地下アイドル業界の今後はどうなる?

文=冴島友貴