港区904万円、足立区323万円…所得水準に大きな格差! 「東京23区の通信簿」を一挙公開!!

社会

更新日:2017/4/21


『23区格差(中公新書ラクレ)』(池田利道/中央公論新社)

 4月は引っ越しの季節。新しく東京に新居を構える新大学生、新社会人も多いだろう。東京には、23の区がある。有名なのは千代田区、港区といったオフィス街やセレブなイメージのあるまちをはじめ、新宿区、渋谷区などだろうか。

 しかし、メジャーではない区でも、みなそれぞれ「個性」があり、有名な区が必ずしも住みやすい場所だとは限らない。住みやすい区、そうではない区は、その人の趣味、事情によっても変わってくる。だが、何の情報もないままに、「自分に合わない区」に住んでしまうのは、もったいないことだ。

23区格差(中公新書ラクレ)』(池田利道/中央公論新社)は、様々な客観的データから、23区の通信簿を作成、23区に住みたい人、住んでいる人に対して情報を提供してくれている。本書は23区に対する古い固定観念や先入観を取り払い、「自分にベストフィットする『まち』を主体的に選択し」「区やまちの本質的な魅力を理解し、自分のニーズに合うまちを選ぶ」ための「お手伝い」を目的として書かれている。ではさっそく、いくつか23区の特長を紹介してみたいと思う。

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 まずは「子育て」に関することから。よく「○○区は子どもを育てるのに良い環境」「××区は悪い環境」といったような評判を聞く。実際はどうなのだろうか。

 まず、人口における「幼児」が増加しているのは港区、品川区、世田谷区。品川区で子どもの数が増えているのには理由がある。品川区には御殿山、池田山などの高級住宅地がある一方、準工業地域も面積の4割を占めている。また商店街が多く、下町のイメージも強い。2000年~2010年の人口増加率は23区中11位で、中間程度だ。なのに、どうして子どもの数が増えたのだろうか。

 注目すべきは品川区の学童保育の充実度だという。学童クラブ登録児童数は他区よりも多く、1~3年生の登録率はおよそ50パーセント。これは23区平均の約30パーセントを大きく上回り、1位である。また、「八三運動」(子どもの登下校の時間に合わせ、地域の住人みんなで子どもを見守るため、朝の8時と昼の3時に散歩や買い物などで、できる限り外に出かけよう、という運動)も、品川区が発祥だ。地域全体で子どもを見守ろうという高い意識が、「子どもを安全に育てられるまち」という印象を与えているのだろう。

 次に、「災害に強いまち、弱いまち」はどこだろうか。結論から言うと、大災害が起こればどこのまちも、完全に安全ということはありえない。その中でも建物全壊の危険度が高い区は荒川区、墨田区など、隅田川沿いの京浜東北線と荒川に挟まれたエリア。反対に比較的安全なのは板橋区、練馬区といった北西部。江東デルタと武蔵野台地の地盤の差が明確に表れているのがお分かりになるだろう。建物焼失の危険性が高いエリアは品川区、大田区など。環七沿いが火災の危険地帯だ。また、建物ではなく、死者発生の危険度が高いのは墨田区、台東区、荒川区、品川区千代田区が上位になり、最下位が板橋区となっている。

 一方、犯罪面はどうだろうか。まちの中で交通事故や犯罪に遭遇する危険度「発生密度」が高いのは渋谷区、新宿区などの中心部。盛り場との因果関係を裏付ける結果となっている。刑法犯認知件数(犯罪の発生が認知された件数)の実数が一番多いのは足立区だそうだ。更に著者は様々な分析から「コンビニが多いまちは犯罪が多い」という因果関係を導き出した。詳細はまだ解明できていないそうなのだが、安全なまちに暮らしたいのなら、参考にしておくとよいかもしれない。

 最後に、本書には上述したような「カテゴリー別」の他に、23区ごとの紹介が通信簿という形で載っている。これが非常に面白い。23区にお住まいの方は、自分の区が何クラスなのか気になるだろうし、今後23区への引っ越しを考えている方には参考文献になると思う。

 23区、それぞれに良いところ、悪いところがあることを理解した上で、「自分にとって住みやすいまち」を見つけてもらえたら幸いである。

文=雨野裾