キャラ弁自虐ツイートが話題に! イクメンすぎる芸人・尾関さんに裏話を聞いてみた【インタビュー】

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公開日:2016/5/7

『芸人と娘』(尾関高文 :著、はるな檸檬:イラスト/飛鳥新社)

 ことの発端はツイッター。あまりに面白いとNAVERまとめやTogetterといったキュレーションサービスに取り上げられ、いろいろなメディアが記事にするようになり、さらにじわじわと話題が話題を呼んだ。

 『芸人と娘』(尾関高文 :著、はるな檸檬:イラスト/飛鳥新社)という書籍が生まれた経緯である。話題になったのは著者である尾関氏のツイッター。同氏は幼い娘との日常や、悪戦苦闘のユニークな手作りキャラ弁を写真付きでツイート。「これは面白い」と編集長 の目に止まった。

 尾関氏は、お笑いコンビ「ザ・ギース」の1人(相方は高佐一慈氏)で、2008年と2015年の「キング・オブ・コント」で決勝に進出した実力派。広島カープ好き芸人としても活躍し、野球イベントで司会を担ったり、レポーターをしたり、コラムを書いたりと、野球界や広島カープにも明るい 。他にも、恐竜や科学分野に詳しい(こちらはひとまずさておき)。

 私もこれまでに野球関連で、雑誌の企画やイベントなどで何度か仕事を共にしたことがあるのだが、多彩で謙虚で誠実そのもの。「やめてください、やめてください」と言う尾関さんの声が聞こえてきそうだが、そうした実力と人柄が「パパ」という側面でさらに浮き彫りになったのが、同書なのだ。本人にも裏話を伺ったので、あわせてご紹介したい。

キラーコンテンツのキャラ弁+自虐&反省ツイート

“キラーコンテンツ”として話題になったのが、尾関氏の手作りキャラ弁。幼稚園に通う娘のため、慣れない台所で腕を振るい、それらをツイッターで発信。思わず吹き出してしまうような自虐や反省のコメントを添えて、連日フォロワーを楽しませた。

 さまざまな仕事を器用にこなす多才な尾関氏らしく、キャラ弁の腕前も作るごとに上達していったのだが、作り始めた当初はあまり可愛く仕上がらなかったことも多く…。

お弁当に彩りを、という反省が生かされずまた作業現場のおじさんの弁当みたくなってしまった!あとタコが焦げた!

 するとフォロワーの皆さんが、「可愛いですよ」「愛ですね」と文字どおり、フォロー。そのうえ、プチトマトとブロッコリーを足すと良いといった、細かなアドバイスも数多く寄せられたのだった。

 ちなみに、本人に思い出のお弁当を尋ねるとワーストは「みんなのたあ坊」。サンリオの人気キャラクターだが、娘さんは知らなかったようで、「汚いし、あれは何なのぐらいの反応で、当時はヘコみました」とため息まじりに振り返っている。

 逆に、一番喜んでもらえたのは、映画『アナと雪の女王』に出てくる陽気な雪だるま、オラフ。まだ初期のキャラ弁でやや不格好なのだが、当時ブームで娘さんが一番好きだったということもあり、後にも先にもこれがナンバーワン。「結局、キレイに出来たかより、当時の娘が一番好きなのにハマるかなんですよね」と語る尾関氏。だが、そう割り切れる話でもなかったりする。

 本書には、彼女お気に入りキャラの「ぐでたま」のキャラ弁を作ったエピソードがあるのだが、このぐでたま弁に娘さんは、「アニメは好きだけどお弁当になると好きじゃなくなる」とバッサリ。尾関氏は「戸惑いしかない」とこぼしている。

名場面トップ5を尾関氏に聞いてみた!

 キャラ弁やキャラ弁をめぐる父娘のやり取りが注目を集めたが、いつもの何気ない会話そのものが“変化球”の連続。さすが芸人とその娘と思わせるハイレベル(!?)な返しで、ありのままでエンタメ本としての完成度を高めているのだ。4歳にして、がんがんにボケまくってはツッコむ。成長著しく、時に「ちょっと違う」と一蹴したり、女らしさをのぞかせたり。パパがたじたじになりながらも仲良く過ごす2人に、ほっこりさせられる。

 その様子を、よりほんわかリアルに演出しているのが、はるな檸檬氏のイラストだ。宝塚歌劇団の熱烈なファン「ヅカオタ」の生態をユーモアたっぷりに描いたマンガ『ZUCCA×ZUCA(ヅッカヅカ)』で知られるが、尾関父娘の“名場面”もそのユーモア溢れる筆致でまざまざと描き出している。もう目に浮かぶようなのだ。

 尾関氏にお気に入りの5つを選んでもらったので紹介したい。

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「そこだけすごい丁寧に演じてるんですよ。子どもってそういうところ見てるのかって衝撃を受けましたね」と尾関氏。 娘さんがすごいのでは?と尋ねるも、「いや意外と4歳5歳ぐらいの子どもってみんな変なところ見てるじゃないですか。視点が面白いですよ」

2

幼稚園児にしてノリツッコミをマスターしているのだ。さすがの一言なのだが、尾関氏は言う。「ちゃんとツッコんで、恥ずかしい気持ちを処理したことが嬉しかったですね。偉いなと」と冷静かつ父親としての喜びをのぞかせ語っている。

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 幼くして才能開花か(!)とも思われるエピソードだが、やはりクールに、「僕もこれはやってて楽しかったですね。ちょっと勉強にもなるというか。違う感覚を開く練習にもなるので」と尾関氏。仕事にも通じると認めつつも、この年頃の子どもはみんな面白いと笑う。子育てを熟知したベテランパパの余裕をのぞかせつつ。

ただ、娘さんは言葉への好奇心がかなり強いようで、これもネタを書いたり、コラムを書いたり、さらには脚本を書いてきた尾関氏に似た部分なのではないかとも思えるのだ。他にも、覚えたての言葉を使うのが大好きなエピソードとして、「天狗とシマウマが岡山に行く話をして!」という奇抜きわまりない寝物語をリクエスト。無茶ぶりのトレーニングにもなる難題で「家でも気が抜けない」とたじたじの尾関氏だが、見事にその筋に沿った寝物語を創作。同書にも収録されている。

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これはユーモアを残しながら本書で解説しているものの、やはり心配な様子で尾関氏は言う。「大丈夫かなって、ショックだったというか。子供心にお地蔵さんは、心に残るものがあるんでしょうね。なんか怖さもあるし、昔話にも出てくるし、大きさも同じぐらいで仲間感もあるし…」と理由を見つけて解決したくてたまらない様子で語っていた。

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「狡猾さを見せてきた娘に戦慄が走った」と愉快なフレーズで綴っているものの、このエピソードを語る尾関氏はとても嬉しそうだった。「知恵がつきはじめて、外堀から埋めるみたいなね。なぜすぐに本丸にいかないみたいな」と笑いながら、娘の成長を実感した瞬間を愛おしそうに話していた。

苦しいから実感できる子育て。「芸のためなら夜泣きを見る」のが今時の芸人

 楽しげなエピソードばかりだが、実際の子育ては楽しいことばかりではない。料理が得意だったわけでもなく、最初はキャラ弁作りも「苦しかった」と振り返る。今ではテレビでも手際のいい腕前を披露するまでになった尾関氏だが、色んな大きさのフタを見ては「これ使えるかな…」とキャラ弁で多用する○をくり抜く道具を探す日々だったとか。

 そんな思いをしてまでキャラ弁を作るのにも、尾関氏のポリシーがあるから。いわく、「それぐらいしないと奥さんに認めてもらえないというか」。お弁当のほか、朝の幼稚園バスまでの見送りなどを主に担っているそうだが、逆に言うとそれ以外の家事は奥さんが担っているということ。仕事で家を空ける時間が長いため、できることは多くはない。だからこそ負担の大きいことは自分が担おうと考えたという。

 夜泣きもほぼ尾関パパの担当。寝不足が続いて「3~4カ月は仕事でも日中に眠くて倒れそうなこともありました。でも、そういうのがあるから愛情が注げるというか。よしがんばって育てたんだなって気分になれることもあって。苦しい思いをした方がよかったんです」とまるで産みの苦しみを経験した母のように、苦しみと喜びの表裏一体を感慨深げに語る。

 ここまで育児と真正面に向き合う父は、従来の芸人のイメージともかけ離れている気がする。ところが、尾関氏は、今の芸人はイクメンが多いですよ、とさらりと言う。「芸のためなら女も泣かす? いやいや、芸のためなら夜泣きをしっかり自分が見るという時代ですから」。芸人という不安定な職業で妻に苦労させているからと、育児を熱心に手伝う夫は少なくないのだと明かす。

 キャラ弁作りは娘さんが小学校に入学したため、いったん休止。今度は現在2歳の次女が幼稚園に入ったら、また再開するという。娘たちのため、「もっとがんばるしかない。もっと面白くなりたい」と力強くパパ芸人は誓うのだった。

 最後に、冒頭で「じわじわ」と書いたのは、その世界観や面白さが不変だから。勢いだけでなく、本当に面白いものは身体に浸透していくように伝わるのだと思う。本書の良さは、何度でも読み返したくなるところ。ちょっと辛いなあと感じた時、笑いたい時、パラパラと頁をめくると、胸の内から温かい気持ちになって、笑いがこぼれるのだから。

文=松山ようこ