おせっかい崖っぷちアラサー×ツンツン女子高校生の凸凹占いコンビが、あなたの悩みを解決! 角川文庫キャラクター小説大賞≪優秀賞≫受賞作!

文芸・カルチャー

2017/3/23

『窓がない部屋のミス・マーシュ 占いユニットで謎解きを』(斎藤千輪/角川文庫)

読者も一緒に怒ったり、泣いたり、笑ったりできる優しいミステリー小説『窓がない部屋のミス・マーシュ 占いユニットで謎解きを』(斎藤千輪/角川文庫)は、第2回角川文庫キャラクター小説大賞≪優秀賞≫を受賞した「凸凹占い女子コンビ」が織りなす新星キャラミスだ。

柏木美月(29)は二子玉川の路上でタロットをしている売れない占い師。「前向きな解釈をし、相談者の背中を押す占い」を信条にがんばってきたのだが、世間の風当たりは強く廃業を考えていた。

お金もない。彼氏もいない。才能ナシのアラサー女性。そんな美月の前に現れたのが、最強頭脳を持つ女子高校生・愛莉(えり)。愛莉はシルバーグレイの髪に華奢な身体つきの可憐な少女。しかし、口を開くと「ツンデレ」……もとい「ツンツン」の冷めた性格で超ロジカル思考の持ち主。

ある日偶然に、美月の占い鑑定に来ていた女性の恋愛相談を、その論理的な推理で見事解決した愛莉。美月はその推理力に感嘆する一方、彼女の「生活」が心配になってしまう。

愛莉は母親を亡くし、高級マンションで一人暮らしをしていた。父親は「いない」とだけ告げる。食生活もおろそかにし向精神薬が手放せない。そしてなぜか、リビングの大窓のシャッターだけは決して開けようとせず、殺伐とした引きこもり生活をしている。

おせっかいでお人好し。ちょっと説教癖なんかもある美月は、孤独な生活を送る愛莉を放っておけず、とある提案を持ちかける。「愛莉と占いユニットを組みたい!」と。

愛莉の超人的な洞察力&推理力と自分の占いを組み合わせれば「私が本当になりたかった、ポジティブな魔法をかけられる占い師」になれるはず。そして心を閉ざした愛莉を見守ることができる……一回は拒絶するものの、興味を持ったらしい愛莉はその提案を受け入れる。

ここに、崖っぷちおせっかいアラサー占い師と、最強推理力を持つ少女の占いユニット、「ミス・マーシュ」が誕生した。

だがやはり、世間はそれほど甘くない。美月と愛莉のコンビは中々息が合わず――。相談にやってくる人々の悩みも、難しい問題ばかり。

「週末に全く連絡がつかなくなる彼。彼女は二股を掛けられている?」
「突然姿を消した飼い猫は今どこにいる?」
「何度も偶然出逢った名も知らぬ彼は運命の相手?」といった占いだけでは解決できない相談事を、凸凹コンビの二人はタロットカードになぞらえてスパッと小気味よく解決に導いていく。

そして最後に明かされる愛莉の「孤独」の理由。外国から送られてくる手紙を開封しない謎。決して開けない大窓の秘密――。美月は愛莉の閉ざされた「心の窓」を開くことはできるのか?

本作は「情」の美月と「ロジック」の愛莉のキャラクター対比が面白く、物語の中では「占い」と「推理」として鮮やかに融合されているところが魅力の一冊。どこか懐かしさも感じる「人情もの」と「謎解き」を掛け合わせた作品だ。だが、「人が死なない系」ミステリーでありながら、物語に出てくる「謎」と、それを解決するための「知識」に厚みがあるので、内容に薄っぺらさを感じなかった。その点、大人が読んでも不満の残らない読み応えがある。

占いが好きな方、肉厚な日常系ミステリーに興味がある方、そして「猫」がキーポイントにもなってくるので「猫好き」な方に、ぜひおススメしたい一冊だ。

文=雨野裾