自分まで、倒れないでください――いつか訪れる「親の介護」に備えて知っておきたいこと

暮らし

2017/5/22

『親の介護で自滅しない選択』(太田差惠子/日本経済新聞出版社)

 毎日膨大な数の書籍が発売される、Amazon。その中の「介護」カテゴリで、発売直後からベストセラー書籍に選ばれたのが、『親の介護で自滅しない選択』(太田差惠子/日本経済新聞出版社)です。なかなかショッキングなタイトルですが、内容としては、親の介護に携わる中で何らかの選択を求められた時、どんな判断を下せば、自分の人生を大切にしながら、穏やかに親を看取ることができるか…というハウツーを整理したもの。

 同書は全7章構成で、1章ではまず、読者自身が介護に関して抱いている「思い込み」について問い直しています。例えば、「子供が親の面倒を見るのは当たり前?」とか、「親の介護は、一人っ子の方が大変?」とか…。えっ、そこから考え直しちゃうの!? と思うようなクエスチョンもありますから、多くの方はこの部分を読むだけでも、目から鱗の落ちる思いでしょう。

 その後の2章からは、さまざまなトピックが介護状況別に掲載されています。ある問題に対して、こう対応する人は自滅しがち、こう対応する人なら自滅しないで済む――勿論、「自滅する」として提示された選択肢を選んだとしても、そのチョイスで上手に介護できているケースもありますが――という見出しを載せたうえで、なぜそういえるかという解説がなされています。すべてのトピックは目次に書き出されていますから、自分に必要な情報だけをピックアップして読むこともできますし、各項目の内容は見開き2ページに収められているので、長文を読むのが苦手な方も心配は要りません。

 掲載されている問いやシチュエーションの例を挙げると、「自分を虐待してきた親が頼ってきた場合は?」「配偶者の親が倒れた場合、どこまで動く?」「きょうだいが介護に関わってくれない場合は?」といった人間関係にまつわるものや、「介護のために離職するという判断は賢明か?」「介護費用や、遠距離介護の際の交通費は誰が出す?」など、お金に関わるものが多く見られます。どれも生々しいというか、他人には相談しづらく、且つハッキリとした答えの出にくいテーマですよね。

 こうした悩みに対して、“best”や“better”ではなく“do not”な選択肢を提示してくれているのが、本書の一番のセールスポイントです。消去法の介護指南…とでも、いいましょうか。

 より良い介護を目指すのは、決して悪いことではありません。しかし、これだけは避ければ大丈夫だよ、という視点からのアドバイスは、とりわけ初めて身内の介護に携わる方にとっては、ストレス軽減の特効薬となるでしょう。そして、こうした現実的なスタンス、つまり、パーフェクトな介護ではなく、どこかで折り合いをつけ、介護者が追い詰められない介護を目指すことこそが、長年「介護・暮らしジャーナリスト」として活動し、介護当事者との対話を重ねてきた著者・太田差惠子氏が辿りついた、ひとつの答えでもあるのです。

 同氏の思いは本書の冒頭にも、次のような言葉で綴られています。

親の介護は、私たちの生活の一場面です。一場面であるはずのことによって、自分自身の人生を自滅させないよう、本書が少しでもお役に立てば幸いです。

 親の介護に現在進行形で携わっていらっしゃる方には、響くものがあるのではないでしょうか。

 私の本棚には、「周囲の人が困っている時に貸し出す本」を集めたコーナーがあるんですが、この本は読み終わって即、そこへの仲間入りを決めました。いやはや、こんな充実の内容が、税抜き1400円で手に入るとは…。高齢化社会に生きるオトナたちの心を、楽にしてくれる1冊。

文=神田はるよ