道具に頼れば、介護はもっとラクになる! 親を見守り、自立を支えるツールとは?

暮らし

公開日:2023/2/21

親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること
親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること』(工藤広伸/翔泳社)

 もし、親に介護が必要になった時、どうすればいいだろうか。「プロの力を借りれば大丈夫」と思う人も多いだろうが、実際、介護が始まると、それだけで問題が解決するわけではないことが分かる。親の老いという現実に直面し、これから先どうしていけばいいのかと、不安を抱えている人は少なくないはずだ。

親の見守り・介護はプロの力では14.9%しかカバーできていない!?

 そんな人たちの味方になるのが、『親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること』(工藤広伸/翔泳社)。著者の工藤広伸さんは、東京から500キロ離れた岩手県の実家に住む認知症の母を、2012年から通いで在宅介護しているという。工藤さんの79歳・要介護3の母親のもとには、現在、ヘルパーや訪問リハなど、毎日医療・介護職の訪問があるが、その滞在時間は1週間168時間のうち、合計で25時間。プロだけの力だけだとわずか14.9%しかカバーできていないのだそうだ。では、残りの時間をどうするのか。本書では、工藤さんが自身の経験をもとに、介護の日常での困り事を解決するための道具やアイデアを紹介してくれる。介護が始まる前の人、介護がすでに始まっている人、どちらの状況でも参考になる構成で、工藤さんが実際に使ってよかったものも、失敗だったものも教えてくれるから、あなたの家でも参考になるに違いない。

親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること P14

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高齢・要介護の親の熱中症や事故を防ぐための「介護で使える道具」

「介護で使える道具」というと、杖や手すり、介護ベッド、ポータブルトイレなどの福祉用具のイメージが強いだろう。本書ではもちろんそれらについての解説もなされているが、その他のツールについても教えてくれる。たとえば、家電。エアコンを使ってもらえず熱中症が心配な時は、熱中症計を置いて注意を促したり、せめて扇風機や除湿機を使ってもらったり。操作が複雑なリモコンは、シンプルな汎用リモコンに変え、スマートリモコンを設置して、親が誤って操作した場合も遠隔で操作できるようにする。冷蔵庫は背の低くなった親でも取り出しやすい高さと奥行きのものに変え、電子レンジも操作が簡単な単機能のものに。使い慣れたメーカー、元々使っていたものに近いものを選ぶと、親の物忘れが進行しても使用できる可能性が高い。家電だけ見ても、こんなにもたくさんの工夫ができるのだ。

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親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること P38

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「見守り」をローコストで、親のプライバシーに配慮しつつ実現する

 また、親を見守る道具やサービスの導入も検討していくといいだろう。まずはスマホを活用した見守りから始めてみよう。親がスマホをタップしたら子に通知がくるアプリや位置情報を共有するアプリなど、たくさんの種類があるそうだ。親がスマホを使っていない場合は、人感センサーがある。ドアや窓の開閉を知らせるタイプやトイレに専用の電球を取り付けて使用状況を家族のスマホに通知するタイプがあるが、工藤さんがいくつか試したところ、誤作動も少なくはないという。工藤さんの一番のオススメは見守りカメラ。プライバシーの観点から親から設置を反対される場合もあるだろうが、75歳をひとつの目安と考え、親自身が心身の衰えを感じ始めたタイミングでじっくり説得してみるとよいと工藤さんは言う。音声と映像で親の状況が分かることほど、子にとって安心できるものはないのだ。

親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること P64

親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること P65

 道具を使って目指すのは、親の自立だ。親だってできることなら、当然自分の力で生活したい。そのために、道具で親の自立を引き出し、親の元気や長生きを引き出していく。世の中に溢れる道具の中で、使い勝手のよいものを教えてくれるこの本は、転ばぬ先の杖。少しでも介護の負担を減らすために、この本をヒントに、身の回りの道具を見直してみてはいかがだろうか。

文=アサトーミナミ

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