今回も大ヒット必至!? 『キミスイ』著者住野よる待望の3作目は『よるのばけもの』切ない青春小説+ファンタジー!

文芸・カルチャー

2016/12/10

『よるのばけもの』(住野よる/双葉社)

 2015年に刊行したデビュー作『君の膵臓をたべたい』が、65万部超えという大ヒットを記録。続く第2作『また、同じ夢を見ていた』もベストセラーとなり、無名の新人からたちまち読書界注目のヒットメーカーにのぼりつめた小説家・住野よる

 その待望の第3作『よるのばけもの』(双葉社)が12月9日、いよいよ刊行される。今作の主人公はなんと、夜になると怪物に変身してしまう男子中学生。ファンタジーの手法を取り入れることで〝切なくてピュア〟なだけではない、新しい住野ワールドを読者に披露している。

 主人公の「僕」(=安達)は、とりたてて目立つところのない中学3年生男子。しかし、夜中になると真っ黒い怪物に変身してしまうという、誰にも言えない秘密を抱えていた。
 目玉が8つ、足が6本、全身を黒い粒々で覆われた僕の姿は、まるでファンタジー系のゲームやアニメに登場するモンスター。最初は戸惑っていた僕も、今ではすっかり慣れてしまって、自由自在に大きさを変えられる怪物の姿で、夜の散歩を楽しんでいた。

 ある晩、忘れものを回収するため夜の学校に忍びこんだ僕は、そこで同じクラスの女子生徒・矢野さつきと遭遇。怪物の姿を見られてしまう。秘密を守ることと引き替えに、次の夜も学校に来ることを約束させられた僕。でも、それは決して愉快な約束ではなかった。というのも、さつきはクラスでいじめの対象になっている少女だったからだ…。

「おはよ、うっ」「びっくりし、たー」といったおかしなアクセントで話し、何をされても笑っているさつきは、空気が読めない変わり者。一方の僕は、目立ちすぎることがないよう細心の注意を払っている少年である。昼間はまったく対照的なポジションにある2人だったが、夜の学校で「夜休み」の時間をともに過ごすうち、少しずつ理解しあうようになってゆく。

「矢野さんは、どこに行くつもりなの?」
「音楽室か、な。夜中に鳴、り出すピアノ、の真相を確かめ、よう」
「そんな七不思議みたいなのうちにあったっけ?」
「さあ、あり、がちだから」
「適当かよっ」
 強めにつっこむと、矢野さんはまた、にんまりあの笑顔を見せた。

 こうしたユーモラスでテンポのいいセリフのかけ合いが、恋人でも友だちでもない2人の間に流れる、親密でおだやかな時間をキラキラと描き出してゆく。夜の学校にこっそり忍びこんでみたい、と空想したことがある人ならば、昼休みならぬ「夜休み」という設定にも胸が高鳴るはず。実際、この作品でも夜の校舎が舞台としてうまく使われている。

 しかし、夜の時間が楽しければ楽しいほど、昼間とのギャップは大きくなってゆく。いじめに荷担している昼間の僕と、怪物の姿でさつきと遊ぶ夜の僕。2人の切なくいびつな関係が、果たしてどんな決着を迎えるのか。それはあなた自身の目でぜひ見届けてほしい。希望の光に満ちた力強いラストシーンは、心のどこかに「ばけもの」を飼って生活している私たち読者に、きっと新しい一歩を踏み出す勇気を与えてくれる。

 2017年には『君の膵臓をたべたい』の映画化も決定しており、ますますメディアの注目を浴びるのが必至の住野よる。ファンタジーと切ない青春小説を巧みに融合させた第3作『よるのばけもの』も、ブレイクすることは間違いなさそうだ。

文=朝宮運河