東野圭吾作品史上「最も泣ける」!どんな相談にも真摯に答える「雑貨店」の奇蹟『ナミヤ雑貨店の奇蹟』

文芸・カルチャー

2017/9/6

『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(東野圭吾/角川文庫)
星海社

 力強く生きようとすればするほど、人は悩みを抱える。時に人は自らの歩を阻むものを一人では取り除けない。進むべき道を示す地図は、きっと自分の中にしかない。だが、誰かに背中を押してほしい。行く道を明るく照らしてほしい。そう思うのは当然のことだろう。

 東野圭吾氏の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川文庫)は、どんな悩み相談にも真剣に答えてくれる雑貨店をめぐる感動ミステリー。東野氏の作品の中でも「最も泣ける」と評判のこの作品は、2017年9月23日に山田涼介西田敏行の共演で映画化される話題作だ。

 舞台は、すでに廃業し、廃屋と化した「ナミヤ雑貨店」。その廃屋に、悪事を働いた3人の男たちが逃げ込んでくる。誰もいないはずの店に、突然シャッターの郵便口から落ちてきた悩み相談の手紙。それは、時空を超えて過去から投函されたとしか思えない手紙だった。3人は戸惑いながらも返事を書くが…。次第に明らかになる雑貨店の秘密と、ある児童養護施設との関係。すべてのつながりが明らかになる時、驚きと感動のラストが待ち受ける。

 もし、自分の住む街に「ナミヤ雑貨店」があったなら、誰もが自らの心に秘めた悩みを相談したくなることだろう。かつて「ナミヤ雑貨店」は、どんな悩み相談にも真剣に答える店主・浪矢雄治が切り盛りしていた店だった。

「相談です。勉強せず、カンニングとかのインチキもしないで、テストで百点をとりたいです。どうすればいいですか。」
「先生にたのんで、あなたについてのテストを作ってもらってください。あなたのことだから、あなたの書いた答えが必ず正解です」

 当初は、近所の子どもたちからの悩み相談に答えていただけだったが、その生真面目な回答が評判を呼び、店主・浪矢雄治のもとには、子ども大人問わず、切実な悩み相談の手紙まで届くようになる。いたずらだろうと、冷やかしだろうと、「ナミヤ雑貨店」に手紙を投げ込んだ人はみな相談者。一人ひとりの思いと真摯に向き合いながら、どんなことにも生真面目に返事を書くその姿は、なんとあたたかいことだろう。

 そんな「ナミヤ雑貨店」への手紙が時空を超えて現代に届く。悪事を働いて逃げている身の3人は、最初は突然届く手紙を何らかのいたずらだと思っていた。しかし、手紙に書かれた悩みを読むと、ついつい相談に乗りたくなってしまう。余命わずかな恋人につきそうべきか、自分の夢であるオリンピックを目指すべきか考えあぐねるスポーツ選手。なかなか結果の出ないミュージシャン。OLをやめて水商売を始めようと計画している若い女…。今まで誰にも頼られることがなかった男たちは、悩み相談に乗ることが次第に楽しくなっていく。

「これも人助けだ。面倒臭いからこそ、やり甲斐がある」

 かつて、浪矢雄治は、いろんな人の悩みと向き合い続け、それは彼の生きがいとなっていた。そして、現代の3人の男たちも、悩み相談に乗るうちに考え方が変わっていく。悩める相談者を救うはずの手紙がいつしか回答者の人生を変えていく。相談者と回答者の人生が明るく照らされていくさまに読者はみな心揺さぶられることだろう。ハートウォーミングなこの小説は、悩みばかりの日常を送る私たちの癒しとなるに違いない。

文=アサトーミナミ

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