ビットコインはもう終わり? 仮想通貨がもたらす金融大革命の可能性

ビジネス

更新日:2018/1/5

 ビットコインの価格は2017年に入ってから4倍以上(8月時点)にもなっている。誕生時からの値上がり率はなんと4000倍以上。誰だってつい夢を見たくなるだろう。だが、本書『アフター・ビットイン 仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者』(中島真志/新潮社)は、終了宣言ともとれるタイトルを冠している。それはなぜか。

 ビットコインの仕組みは以下のような特徴を持っている。


・管理主体が存在しない

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円やドルなどの法定通貨は、中央銀行などの公的な発行主体があり、これが通貨を管理し価値を保証しているが、ビットコインは基本的にプログラムによって管理されており、管理主体が存在しない。

・高度な暗号技術を使った暗号通貨

ビットコインは、不正防止のため暗号による承認が行われる。コインは10分ごとの取引情報の束「ブロック」を時系列でチェーンのようにつなげて記録しており、過去のブロックから次の暗号が作られる。このため改ざんには膨大な計算が必要で、極めて困難である。

・マイニングによりビットコインが新規発行される

10分ごとに作成されるビットコインのブロックには、暗号による「取引の承認」が必要だが、これにはかなりの計算量が必要となる。マイニングは、この複雑な計算を解いて最初に解答を得た1人にのみ、報酬として新たに発行されたビットコインが与えられる仕組みである。

 マイニングはビットコインを支える仕組みでもある。なぜなら、ビットコインの安全な取引にはこの「取引の承認」が必要不可欠であるが、管理者はおらず、誰の義務でもない。だから確実にマイニングが行われるように、報酬の付与という仕組みが導入されている。報酬を求めて各参加者が利己的に行動することが、全体としては、ビットコインのシステムを正しく機能させ、全員の利益になるという巧妙な仕組みになっている。

 では、著者がビットコインの終わりを予見する要因とは何か。いくつかあるが、まずビットコインには発行上限が設けられており、2017年8月時点ですでに79%が発行済みとなっていること。また、マイニングに対する報酬が約4年ごとに半減する設定となっていること。2016年7月の半減期には、当時のビットコインの価格を約600ドルとすると、マイニングの報酬は約150万から約75万に減っていたことになる。

 マイニングにはかなりのコンピュータ資源と電力が必要で、報酬が少なくなれば採算がとれずマイニングから撤退する動きが出るだろう。そうなれば、ビットコインのシステムを維持していくことはできなくなる。国際決済銀行の報告書でも、ビットコインの中長期的な持続性には疑問を呈しているとのことだ。

 ビットコインはいずれなくなるか。それはわからないが、ビットコインの中核技術であるブロックチェーン(分散型台帳技術)は金融業界に革新を起こすかもしれず、むしろこちらが本丸、と著者はいう。中央銀行によるブロックチェーンを応用したデジタル通貨の実証実験は、日本を含む各国ですでに行われており、近い将来、金融がガラッと変わるかもしれない。

 本書は、前半はビットコイン、後半はブロックチェーンと金融という2本立てで、システムはもとより金融に詳しくなくても理解できる内容となっている。仮想通貨の光も闇も解説している本書は、理解するのによい助けになるだろう。

文=高橋輝実