社長がこんなフレーズを口にしたら、あなたの会社は危ない!「なんでクレームを私に報告しないんだ(怒)」

ビジネス

公開日:2017/12/31

『絶対会社を潰さない社長の口ぐせ』(小山 昇/KADOKAWA)

 ビジネス書などでよく見られる「悪いことほど報告しなければならない」の教え。これは個人が仕事を進める上でも、構成員として企業を支える上でも大事なこととされています。

 会社に入っていたクレームを後から知った社長が、「なんでクレームを私に報告しないんだ!」と、声を荒げるのはある意味では仕方のないこと。
 しかし、そうして部下を叱責するばかりで自分を省みない社長がいるのだとしたら。その会社は危ないかもしれません……。

 フランチャイズ事業、中小企業の経営コンサルティング事業を柱に15年連続で増収を続けている企業、株式会社武蔵野。その代表取締役社長である私、小山昇が、「なんでクレームを私に報告しないんだ(怒)」発言の危険性について解説いたします。

advertisement

■現場の情報は、上司が部下から引き出すべきもの

 グループを編成するときに組ませ方を間違えると、組織の生産性が落ちます。
レベルの違う人同士を組ませると、優秀な社員がやる気をなくすケースがあるからです。とくに「実力不足の上司と、優秀な部下」の組み合わせは、最悪です。わが社も、部下がダメ上司に愛想を尽かして辞めたケースが多くありました。

 チームは、「同じレベルの上司と部下が組む」。これが鉄則です。
 多くの社長は、「仕事ができる上司には、仕事ができない部下をつける。そうすれば、部下の実力が上がる」と考えます。
 この考えは、間違いです。「優秀な上司には優秀な部下をつける」「仕事ができない上司には仕事ができない部下をつける」のが、正しいチームのつくり方です。
 なぜなら、力が同じレベルの人同士でグループをつくったほうが、切磋琢磨しやすいからです。
 大相撲の番付を例に考えると、わかりやすいでしょう。横綱と序二段が同じ土俵で相撲を取ったら、序二段はいっこうに勝てない。でも、序二段同士なら、勝てるから頑張ることができるのです。
 できる人同士、できない人同士を競わせるから会社は活性化する。これを覚えておいてください。

■組織を強くするのは、能力ではなく価値観の共有

 多くの社長は、社員に「何かあったら、報告してこい」と言います。ですが、それでは現場の声は上がりませんよね。なぜなら、報告するのは面倒だから。報告してくるとしたら、自分が手柄を立てたときと、文句があるときだけ。したがって、現場の情報は「上司が部下から引き出す」のが正解です。
 そもそも、自分にとって不都合な情報を報告したくないと考える社員は、まとも(当たり前)な社員です。
 ですから、「会社にとって悪い情報でも、社員は報告してくれる」と思っている社長は、脇が甘い。社員のことがわかっていません。

 社長は、社員の報告をもとに、次の施策を考えます。良いことも、悪いことも、社員が包み隠さずに報告しなければ、正しい決定ができません。
 間違った報告をもとに社長が正しい決定をすれば、「間違った決定」になります。
 良いことは、社長の耳に入らなくても会社は倒産しません。しかし、悪い情報が社長の耳に入らないと、最悪の場合は、倒産することも考えられます。
 私が社長を務める株式会社武蔵野では、社員が「都合の悪いこと」も報告するように、次のルールを徹底しています。

(1)クレームの「報告・連絡」を怠った社員は、賞与を半額にする
 クレームが発生したら、「ただちに役員と上司に報告」がわが社のルールです。「報告・連絡」を怠った場合は、1回で賞与を半額にするとともに、上司と当事者がかかった費用を負担します。
 また、発生当日に「クレーム報告書」を記入し、社長に提出する。未提出は、クレーム対応にかかった費用を個人負担しなければなりません。
 社員は、「賞与が半額になるのは嫌だ」「個人負担したくない」という不純な動機で、報告するようになります。

(2)社長と社員との距離を縮め、「報告しやすい雰囲気」をつくる
「グループ懇親会」や「社長と食事会」を開催し、ホームページで公開している(「武蔵野を知る」→「社長と食事会」)。さまざまな機会をつくって社長と社員との距離を縮め、報告がしやすい雰囲気づくりに努めています。

(3)本音を聞き出せるように、会議の最後に「質問タイム」を設ける
「店長会議」では、全店長の報告後に、「質問タイム」を設けています。
「◯◯◯の件には言及されませんでしたが、これはどういうことですか? これは良くない傾向ではないのですか?」と、店長同士が「相手の痛いところ」を質問することで、現場の真実を浮き彫りにできます。

(4)信賞必罰のルールを設け、敗者復活ができるようにする
 わが社は、賞もあれば、罰もある。結果を出せば認められ、不正等をすれば罰を受ける。次に頑張れば、また挽回できる。だから、公平です。
 クレーム未報告が原因で降格になっても、復活するしくみがある。だから隠さずに、報告できます。

(5)社員を𠮟るときは、「人」ではなく、「こと」にする
 私が𠮟るのは「人」ではなく、「こと」です。人格を否定することはしません。「まだ手をつけていないのか」とは言いますが、「このノロマ」とは絶対に言わない。社員も、人間性を否定されないので、落ち込みはしません。
 人間性を否定されると黙ってしまうが、「問題なのは自分ではなく、自分がやったことだ」と割り切れれば、社員も報告しやすくなります。

 このように、クレームを含めた情報が上に上がってくるしくみを作ることが本来の社長の役割なのです。

――「なんでクレームを私に報告しないんだ!」。しくみ作りを怠りながら、もし社長がこんなフレーズを口にしたら、あなたの会社は危ないと考えてください。

<著者紹介>
小山 昇(こやま のぼる)

株式会社武蔵野 代表取締役社長。 1948年山梨県生まれ。
2001年から中小企業の経営者を対象とした経営コンサルティング「経営サポート事業」を展開。700社以上の会員企業を指導しているほか、全国各地で年間240回の講演・セミナーを開いている。主な著書に「社長の決定シリーズ」の『経営計画は1冊の手帳にまとめなさい』『本当に儲ける社長のお金の見方』『絶対に会社を潰さない強い社員の育て方』『右肩下がりの時代にわが社だけ「右肩上がり」を達成する方法』(以上、KADOKAWA)、『残業ゼロがすべてを解決する ダラダラ社員がキビキビ動く9のコツ』(ダイヤモンド社)など多数。