癖になる40代独身女子・阿佐ヶ谷姉妹の地味おもしろい同居エッセイ

エンタメ

公開日:2018/8/28

『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』(阿佐ヶ谷姉妹/幻冬舎)

 女芸人、阿佐ヶ谷姉妹。テレビに出始めた時は、「一発屋だろうなぁ」と失礼にも思っていたわけだが(ごめんなさい)、今でもよく見かけるし、醸し出される二人の独特の空気感も好きだし、ネタも面白いし、なんとエッセイまで出しているし、そのエッセイが、これまたかなり「いい」し……!! ということで、最近阿佐ヶ谷姉妹プチブームがきております。

『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』(阿佐ヶ谷姉妹/幻冬舎)は、姉のエリコさんと妹のミホさんが、リレー形式で交代に書いた連載をまとめた一冊。リアルな40代独身女芸人の日常生活を綴った「地味おもしろい同居エッセイ」だ。

 うん……確かに、地味だった(笑)。

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 だけど面白い。「芸人として読者を爆笑させてやろう!!」という変な意気込みがないのも「いい」のかもしれない。多分、本人が意図していないところで、読者が勝手に笑っているような、そういう話題が多い気がした。

 お二人は顔が似ているということで、本当の姉妹ではないけれど、「阿佐ヶ谷姉妹」として活動している。お互い気が合い、仲がいいからこそ同居までしている仕事仲間なのだが、その性格には結構違いがあるんだなぁと、当たり前のことを今更実感したり。

 お姉さん(エリコさん)は妹のミホさんのことが大好きなのに、ミホさんは仕事でもプライベートでも一緒にいるエリコさんに対して、「一人になりたい」と思うこともしばしば……。暑がりか、寒がりかといった違いもあったりする。

 本書の中で、特に好きな話題はエリコさんの「占い師全員に『今年は最悪』と言われて」とミホさんの「あ~差したい」だ。

 番組で占い師に運勢を占ってもらったところ、「今年は最悪」と宣言されてしまったエリコさん。かなり落ち込み、近所の神社へ厄除けをしに行く。けれど神前で読み上げてもらう住所を間違えて書いてしまい、「神主さんに祝詞を上げてもらいながら、あ~違う違う、神様がお隣町の住所に行ってしまう、は~これも(運勢が)最下位だからかしら~と心の中で嘆きまくりました」とのこと。

 ……読みながら、頭の中でエリコさんが苦悩しているシーンが浮かんで、地味にツボりました。

 ミホさんの「あ~差したい」は出オチというか、タイトルでもう笑ってしまった。これはミホさんがファッションの「差し色」について語っている。内容というよりも、やっぱりタイトルが……(笑)。

 さらに、お二人はもう少し広い部屋に引っ越すべく、新居探しを始める。他人の不動産探しの模様が好きな方なんかは、一層面白く読める話題ではないだろうか。

 またなんと、お二人が書いた初小説も収録されているので、こちらもじっくり楽しんでもらいたい。

 阿佐ヶ谷姉妹の空気感。いいなぁ、なんか。読んでいてほっこりした。

 読み終わった後、私は「お嫁さんにするなら、どちらがいいかな」と、考えたりしました。私、女だし……。結婚する可能性は1ミリもないのに、なぜだろう……。

 文=雨野裾