不倫相手の子どもを産む。一大決心したアラサー女子の行方は……話題作『バツコイ』最新巻

マンガ

更新日:2018/9/10

『バツコイ』(月子/講談社)

 新時代のエリート肉食系女子カホリと、粘着系恋愛体質だが妻子持ちの冴えない教師・砂後谷(すなごや)との「バツ」な恋愛模様を描いた『バツコイ』(月子/講談社)の最新4巻が発売された。(1巻のレビューはこちら)。

 28歳のカホリは弁護士。仕事はやり甲斐があり、お金もある。「恋愛の美味しいところ」だけを楽しむ不特定の恋人もたくさんいる。「毎日信じられないくらい楽しいの」と、充実した日々を送っていた。

 ある時、いつものノリで一夜を共にした男・砂後谷が、弁護士事務所にやって来る。砂後谷は、実は既婚の子持ちで、カホリとホテルに行ったことが奥さんにバレてしまったと話す。奥さんとは以前から別居しており、交渉中だが、離婚に応じてくれない。だが自分はカホリと、本気でお付き合いしたいと言い出した。

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(C)月子/講談社

(C)月子/講談社

「遊ぶ」相手としては不良物件過ぎる砂後谷に、カホリは当初苛立つが、徐々に好意を抱いていき、アラサーにして初めての「本気の恋」をする。

 しかし、カホリの恋は前途多難だ。不倫だし、砂後谷が突如離島に転勤して遠距離になってしまうし、予期せずに子どもができてしまうし、砂後谷はナイスバディの褐色美女と浮気(?)するし……。

 最新4巻で、カホリは堕ろすつもりだった子どもを「一人で産んで育てたっていい」と産むことを決心し、砂後谷のことを一切忘れて心機一転。新たな生活をスタートさせようとしていた。

 一方砂後谷は、浮気の誤解を解くべく東京にやって来るが、カホリとはすれ違ったまま。二人の恋は、どう決着するのか。先が読めないだけに続きが気になる。

 さて、今までは、スキャンダラスなカホリの恋愛や、同じ事務所で働く同僚たちのワケアリな恋模様を描いていた本作だが、4巻からは少し色合いが異なる。

 昨今、女性のライフスタイルは急激に変化した。

 働きながら子どもを育てる女性も多くなり、「男性に養ってもらう」よりも「社会に貢献して、自分も稼ぎたい」と考える女性も増えているのではないだろうか。

 だが、そんな女性が外でバリバリ働いていると「男は外で働き、女が家を守って家事育児をする」という考え方が根強い世代との確執が生まれたりする。「お母さんが家にいないと、子どもが可哀想でしょ」的な……。

 本作は「登場人物(ほぼ)全員クズ」というキャッチコピーが話題となった作品なのだが、カホリは本当にただの恋愛クズだろうか?(いや、不倫はダメですけども)。

 私はいっそ清々しいというか、そういった社会の過渡期にいる現代女性の葛藤を、「まったく抱えていない」カホリという新時代の女性が、輝いて見える。

恋愛が多様化しているんだから、恋愛と結婚と妊娠・育児が全部リンクされていなくてもいいと思うの

(C)月子/講談社

 ……とは、カホリが勤める事務所のリーダー酒匂(さかわ)さんのセリフだ。

 そう。これからの時代、仕事も恋も、女性のライフスタイルはどんどん変化する。カホリはその最先端を進んでいる女性のようにも思える。カホリのように生きられたらと、憧れを抱いている読者も実は結構、いるのではないだろうか。

 転機が訪れるのはカホリだけではない。砂後谷の妻にも心境の変化は訪れる。
 夫の不倫相手であるカホリに高額の慰謝料を請求してまで離婚を拒んだ彼女だが、家庭を顧みず自分本位な恋に没頭する夫に呆れ、不毛な努力に疲れ果ててしまう。そして娘と自分の本当の幸せとは何かに思いをめぐらせる。妻が選ぶのは夫を見限る道なのか――。

 本作、ロマンはないけれど、責任と自由のバランスを取りながら、楽しく活き活きと生きる女性のリアルな姿があった。

文=雨野裾