落合陽一×猪瀬直樹が語る“オリンピック後”の日本とは? 失われた平成の30年間に学ぶ

社会

2018/11/26

『ニッポン2021-2050 データから構想を生み出す教養と思考法』(落合陽一・猪瀬直樹/KADOKAWA)

「オリンピックが決まった2013年からの4年間、我々の未来は2020年で止まってしまった」(@ochyai 2017年4月5日)

 この“止まってしまった”という感覚は、多くの人が理解できるのではないだろうか。筆者も家族や友人と「日本のこれから」という話題になったとき、「とりあえずオリンピックまでは景気は良いよね?」で終わってしまい、その先の具体的な未来が描けない。なんとなく「このままじゃヤバい」という意識はあっても、せいぜい「こういう仕事がなくなる」「年金はたぶんもらえない」という程度のことしか言えない…。本書『ニッポン2021-2050 データから構想を生み出す教養と思考法』(落合陽一・猪瀬直樹/KADOKAWA)の著者のひとり・落合陽一氏は、人々が自分の日常を構成する社会に対して、その仕組みや歴史を積極的に学ぼうとしなくなった、と語る。これは、自分のことで頭がいっぱいな筆者には耳の痛い話だった。

 本書は、メディアアーティストとして活躍する落合氏と、元東京都知事で作家の猪瀬直樹氏の議論をまとめたもの。分野横断的な知識と経験をもつふたりのやりとりは刺激的で、私たちが未来の日本を考えるためのベースを与えてくれる。

 落合氏は、次の時代を考える上で次の3つの能力が必要になると語る。

1.歴史や統計データを知ること。
2.論理的な日本語力を身に着けること。
3.時代に適合した文理問わない教養を身に着けること。

2と3もとても重要なので本書で詳細にあたってほしいのだが、特に全体のテーマと直結している議題が1だ。落合氏は、さまざまなメディアで未来の「ビジョン」について発言する。そこには、精巧に作られたSF小説のような説得力があるのだが、その理由は、彼がメディアアートやテクノロジーといった分野の「歴史」を知っているから。これまでの変化の流れや、問題として議論されてきたこと、最新の研究がどれくらい進んでいるか…。彼はそうした歴史認識を土台に、明確なビジョンを打ち出している。つまり、私たちが2021年以降の日本を考えるならば、これまでの日本の歴史を学ばなくてはならないというわけだ。

 猪瀬氏が語る「日本の近代」に関する論考の数々や、政治での経験は、そのための大きなヒントになる。猪瀬氏といえば、一般には東京都知事のイメージが強いかもしれないが、長らく「日本の近代」をテーマに多くの著作を出版してきた作家としての顔も持つ。氏の扱う分野は、日本の官僚制や文学、第二次世界大戦、メディアなど多岐にわたり、そのエッセンスは本書にもちりばめられている。本書をきっかけに、猪瀬氏の本に手を伸ばしてみるのもいいだろう。

 さらに、猪瀬氏は、小泉政権時代に道路公団の民営化をしたり、東京都のトップとして他の自治体や国を先導するような改革を行ったりしてきた。こうした“日本を変える”ために動いてきた経験も、解決策の実行するレベルで社会問題を考える際には大いに役に立つ。

 深夜までよく語り合うという落合氏と猪瀬氏。ふたりの得意分野が掛け合わされる化学反応を楽しみながら、未来に対する認識をアップデートしてほしい。私たちは、オリンピックの後も生きていくのだから。

文=中川 凌