自炊って実はこんなに簡単! ストレスのない健康な自宅ごはん

食・料理

公開日:2019/1/5

『自炊力』(白央篤司/光文社)

 実家を離れてみて自炊の大変さを知る人は多いのではないだろうか? 進学や就職、結婚と、自立しておのずとのしかかってくるのは食べることだ。自分が作らないと食べることはできない。時間がない、または面倒といった理由から、ついつい外食が増えたり食事を抜いたりする人も少なくはないだろう。かくいう自分も、仕事で時間がないと「面倒」と感じてしまう1人だ。そんなときに目についたのが『自炊力』(白央篤司/光文社)である。

 本書の何がありがたいかといえば「買うことも自炊」と堂々と言ってくれていることである。世の中には、惣菜をたまに買うだけで「手を抜いている」と言われてしまう奥様方もいると思う。が、しかし、買うことだって自炊のうちなのだ。これは目から鱗である。ただでさえ、出産に育児に社会進出まで期待され、女性に厳しい世の中だ。そのうえ完璧な自炊まで求められてはたまったものではない。世の奥様方も、シングルの皆さまももっと簡単にできる自炊を目指そうではないか。

 ということで、本書からさっそく紹介していこう。その前に自炊力とは何か? 著者である白央篤司氏によれば自炊力とは、

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自分で買い物に行って、その場で献立を決められる
食材の質と値段のバランスを考えつつ買い物ができる
そのときに買ったもの、家にすでにあるもの取りまぜつつ、数日分の献立を作り回していける
なおかつ栄養バランスを考えられる

 という総合力のことだそうだ。「いやあ、やっぱりハードルが高いじゃない」と思う人もいるだろう。しかし、これはあくまでゴールだ。そこへ行くまでのステップは非常に簡単である。料理が苦手な人は、できあいの惣菜に何か自分でプラスすることから始めていけばいい。例えば、コロッケや唐揚げなどを買ってきたら、生野菜を添えて皿に盛るだけでも自炊である。ひとり暮らしビギナーであれば、まず米を炊くだけでもいいわけだ。次に味噌汁を添えるというステップを踏んでいけばそれほど難しくはない。

 本書では時短の大切さも伝えている。そう、現代に求められるのは時短だ。自炊力は必ずしも料理に時間を費やすことだけをすすめてはいない。本書では6章に分けて自炊力をつけていく方法を提案しており、初めの「買う」ことの次には「時短」を提案している。あるスープ作家を取材し、早く手軽に作れる料理として次のように紹介している。

3ステップぐらいで完成の料理が理想
より少ない工程(かつ美味)ならなお良し!
必要な食材はなるべく少なく
全国的に手に入りやすい食材・調味料で作れるものを

 これは、料理本などを出版する際に制作サイドから求められることだそうだが、現代人にとって理想的な自炊と言える。

 もちろん、調理や食材を買う楽しみに目覚めたら、ときにはじっくり時間をかけるのもいい。スーパーだけでなく、地方に行ったときには地元の特産の食材を買うのも楽しいだろう。お取り寄せも簡単な時代だ。こだわりの食材や調味料を取り寄せ、親しい人たちとホームパーティーをすれば楽しい食事になる。

 自炊で最も大切にしたいのは楽しく作って美味しく食べることだ。もちろん、栄養バランスも重要だが、食事を用意することがストレスになってはいけない。義務的に用意する、嫌な気分で食材を選ぶなら、負担にならない自炊をすればいいのだ。

 本書は、できあいのものを「買う」という非常に低いハードルから始め、良い食材の見分け方や栄養バランスの考え方までを紹介してくれている。ひとり暮らしで食べることが面倒になっている人や、料理が苦手な既婚者など、まずは簡単なところから始めると自炊が楽しくなるかもしれない。料理は女性だけの義務ではない。家庭を持つ男性にもおすすめの本だ。

文=いしい