陰陽師が京都で長期休暇取得中!? あやかしファンタジー『おとなりの晴明さん』

文芸・カルチャー

2019/1/29

※「ライトに文芸はじめませんか? 2019年 レビューキャンペーン」対象作品

『おとなりの晴明さん ~陰陽師は左京区にいる~』(仲町六絵/KADOKAWA、メディアワークス文庫)

 誰だって、働きづめじゃ疲れますよね。適度な休憩は仕事の能率を上げるというし、世界の名門大学でも、見聞を広めるために、「ギャップ・イヤー(高校卒業後、大学入学まで自由に過ごす期間)」の取得を推奨しているというし。それなら当然、陰陽師にだって休暇は必要だと思いませんか? そんな休暇中の陰陽師が“おとなりさん”だったら、最高におもしろいと思いませんか?

『おとなりの晴明さん ~陰陽師は左京区にいる~』(仲町六絵/KADOKAWA、メディアワークス文庫)の主人公・桃花は、一家で京都に引っ越してきた女子高校生。お隣に住んでいたのは、白狐に似た端整な細面と切れ長の目、スーツ姿が特徴的な美青年だ。彼は大学で研究職に就いていて、今は休暇中だというが、桃花の両親は、彼を見て驚いた顔をする。似ているのだ。15年前、安倍晴明を祀る晴明神社で、ぐずる桃花を泣きやませてくれたイケメンに。

 とはいえそのイケメンも、今は40代になっているはずで、お隣の彼ではありえない。しかし、「陰陽師 安倍晴明」だと名乗る彼は、どうも幼いころの桃花を知っている様子。真顔で冗談みたいなことを言われても、と桃花が反応に困っていると、彼女の飼い猫が家から飛び出し、行方をくらましてしまった。猫を探す桃花たち一家に、お隣の「晴明さん」は、「猫を呼び戻すためのまじないだ」と和紙に和歌を書きつけるなど、およそ現実的ではない手段で加勢してくれる。

 もしかすると彼は、本当にあの安倍晴明なのではないか。そんな疑いが確信に変わったのは、彼が桃花の夢に出てきて、猫探しの顛末を言い当てたときだ。桃花が小説や映画で活躍を知る安倍晴明は、閻魔大王の部下として、若者の姿で生き返っていた。お隣の「晴明さん」は、あの世の官庁街である冥府に勤め、現世での長期休暇を取得中の、本物の安倍晴明だったのだ!

 桃花は、猫探しを手伝ってくれた晴明の言葉を信じ、学校の勉強を見てもらうかわりに、彼に現世のことを教えるという約束を取り交わす。休暇中のはずの晴明と桃花の前に現れるのは、心やさしい鬼、京の都を守る猿、舞妓たちのまかないを作る美の女神など、そこはかとなく人間くさいあやかしたち。晴明は、そんな彼らの想いに耳を傾け、さりげなく願いを叶えていく。

 続く第二集、第三集でも、晴明のもとには不思議な出来事が次々と舞い込んでくる。『おとなりの晴明さん 第二集 ~陰陽師は初夏に縁を導く~』では、とうふ小僧の愛らしさに頬がゆるんでしまうし、晴明の恋愛遍歴にも思いを馳せずにいられない。『おとなりの晴明さん 第三集 ~陰陽師は夏の星を祝う~』では、桃花の誕生日やはじめての一人旅など、イベントも目白押し。京の季節のように移ろいゆく、晴明と桃花の関係の変化を楽しめる。

「からくさ図書館来客簿」シリーズ(KADOKAWA、メディアワークス文庫)の小野篁など、仲町六絵ワールドのキャラクターたちが次々登場するのも、著者ファンなら嬉しいところだ。雅でやさしい物語は、休暇中の読書にぴったり。本シリーズを手元に揃えたら、晴明にならって、長期休暇を取るのもいいかもしれない。

文=三田ゆき

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