羽生結弦の今季プログラムはここがスゴイ! 「Otonal」「Origin」ほか平昌五輪「SEIMEI」まで徹底解説

スポーツ・科学

2019/3/2

『羽生結弦は捧げていく』(高山真/集英社)

『羽生結弦は捧げていく』(高山真/集英社)は、平昌オリンピックと2018~19年シーズンの羽生選手のプログラムの魅力を、余すところなく解説している1冊だ。

 著者は『羽生結弦は助走をしない』で、長年の観戦歴に裏打ちされた経験と知識による、独り善がりにならない愛に溢れた「演目の解説」が、多くのフィギュアファンに支持された高山氏。

 その最新作である本書は、前作以上の奥深い考察と客観的な解説、そしてフィギュアスケートへの惜しみない愛情が詰まっていた。

 本書は、平昌オリンピックで羽生選手のプログラムを観た時の、「衝撃的な感動」を思い出させてくれた。みなさんも(きっと)ご存じのように、平昌オリンピック直前、羽生選手は怪我をしてしまい「ぶっつけ本番」で、試合に挑んだのだ。

 その演目を、私がリアルタイムで観ていたのは、およそ1年前。あの時の感動が、本書の「詳細な解説」により、一層強くなったように思う。

 リンクの長辺をいっぱいに使った4回転トウのトランジション。
 ジャンプを跳ぶ直前まで濃密にコネクティングステップを踏んでいるのに、そのステップが非常にエアリーなため、「とても難しいことをしている」ことを一瞬忘れてしまいそうになるほどです。
 また、最初の4回転サルコーもこの4回転トウも、ショートプログラムで跳んだときとはコネクティングステップのパターンをきっちり変えてきているのも見事。

 など、プログラムを通しての解説がポイントごとに書かれているので、本書を片手に、録画してある「SEIMEI」を見返すのは、とても楽しい一時だった。

 さらに宇野昌磨選手、ハビエル・フェルナンデス選手、アリーナ・ザギトワ選手、エフゲニア・メドベージェワ選手など、羽生選手以外のオリンピック出場者の解説も載っているので、こちらも読み応えがあった。

 また、オリンピック以降のプログラム「Otonal」、「Origin」も徹底解説されている。

 この2つについて、著者はこう述べている。

 羽生結弦は「これこそがフィギュアスケート」という、ある種の明確な理想像を持っている。その理想像に自分自身を捧げるために、さらにハードルを上げたのではないか。

 なるほど。

 私が初めて、テレビでこの演目を観た際、素人ながらも「今までの羽生選手と違う」と感じた。もちろん、いい意味でだ。その時、漠然と抱いた「今までより、なんか、スゴイ」の理由を、本書を読み気づかされた。

 本書の「Otonal」、「Origin」の「ここがすごい」は、全文を紹介したいほどなのだが、紙幅が足りないので、割愛。羽生選手のファンには、必読して頂きたい内容だった。

 ちなみに、「私が愛する選手たち」の章には、男女問わず、多くのスケーターが紹介されている。去年、一躍時の人となり、これからの活躍が期待されている紀平梨花選手の「スゴさ」や、25歳の若さで亡くなったデニス・テン選手への想いなども綴られていた。

 羽生選手のファンはもちろん、フィギュアスケートに夢中になっている多くの読者に、「捧げたい」1冊である。

文=雨野裾