羽生結弦金メダルをかけぶっつけ勝負! 進化系「SEIMEI」注目は足もと!【平昌オリンピック】

スポーツ

2018/2/8

『羽生結弦は助走をしない 誰も書かなかったフィギュアの世界』(高山真/集英社)

 ジャンプの回転数や、種類ごとの難易度。試合にいくつ取り入れるかなど、フィギュアスケートの注目は、とにかくジャンプに集まりやすい。それが花形なのは事実だが、実際、フィギュアの魅力はそれだけではないという。

 フィギュアスケートは、「トータルパッケージ」(ジャンプだけでなく、スピン、ステップ、そして全体的なスケーティングの能力と演技面)を楽しむものなのだ。

『羽生結弦は助走をしない 誰も書かなかったフィギュアの世界』(高山真/集英社)は、フィギュアスケートが大好きで38年の観戦歴があるという著者が、ジャンプだけではないフィギュアの「ツボ」を、主に羽生結弦選手の演技を通して熱く語っている。

 フィギュアに対する愛と情熱、鋭い観察眼、38年間フィギュアを追ってきた経験から見える「羽生結弦選手のすごさ」は、深い知識に裏付けされた、決して独りよがりではない客観性を持っており、「そうだったのか!」の連続で読み進めることができた。

 さて、来る平昌オリンピックに向けて、本書の「羽生結弦のどこに注目すればいいのか」「そのすごさはどこにあるのか」をご紹介したい。

★羽生結弦選手の「実はここがすごい!」2つのポイント

(1)スケーティングの美しさ

 羽生選手の見どころは「ジャンプやスピン、ステップ以外の部分」にもたくさんあるという。その一つがスケーティングの素晴らしさだ。フィギュアスケートのフィギュアとは「図形」のこと。フィギュアスケートとは「氷の上に図形を描く」競技なのだ。スケーティングの技術、つまり、「滑る」という基本動作に技術がないと、素晴らしい図形は描けないのである。

「滑る」と一口に言っても、ただ前方に進むだけではなく、後ろ向きや、エッジの内側を使うインサイド、また左右の足の違いによって合計8種類の「片足の滑り」があるという。

 さらにイーグルやイナバウワーといった「ひとつの姿勢をキープしたまま滑る」要素もあるため、スケーティングは非常に奥深い技術なのだ。

 羽生選手のスケーティングの魅力は、下記の通りだ。

・厳密な体重移動を実現しているため、瞬間的に正しいエッジに乗っている。そのため、乗った瞬間よりも、流れの中でスピードが速まる。
・「1歩」の距離がとても長い。
・8種類の組み合わせや、その踏み替えの複雑さや正確さが素晴らしく、それが曲の音符やリズムと見事に融合している。
・信じられないほどのスピードを出しつつ、本来あるはずの体重をまるで感じさせない『エアリー感』を実現させている。

(2)トランジションの濃密さ

 トランジションとは、「難しいジャンプの前に、どのようなステップやターンを入れるか」「ジャンプやスピンなどの技と技の間を、どのようなエッジワークでつないでいくか」こういった部分のことを指すそうだ。

 羽生選手の場合、このトランジションの密度が「すさまじい」という。

 例えば2017年10月ロシア杯フリー「SEIMEI」で。

 冒頭、4回転ルッツを跳んだ後のトランジション。4回転ルッツはメディアでも成功の可否が注目される「大技」だが、羽生選手の「スゴさ」はそこだけではない。

4回転ルッツを跳んで数秒後。右足のフォアエッジから720度ターンしつつ、ただちにインサイドのイーグルへ。そしてなめらかにアウトサイドへとチェンジエッジする。ここまでのシームレスな流れ! そして、最後にターンで締める。

 大技だけに目を向けるのではなく、その「間」に注目してみると、より羽生選手のトランジションの「濃密さ」が分かるだろう。

 だが、羽生選手の「すごさ」がジャンプだけではない……と分かったとしても「実際、競技を観ている時は、よく分からないんだよなぁ」と感じている方もいるはず。かくいう私も、フィギュアは好きだが、ジャンプの判別はトリプルアクセルだけ辛うじて分かるレベルであり、専門的な「すごさ」になってしまうと、ついていけなくなることも。

 しかし本書を読んで、一つ分かったことがある。

「足元に注目する」ということだ。……フィギュアファンからしたら「当然だろ」というツッコミが入りそうだが、私はいつも、なんとなく上半身ばかり見ていたのだ。(実際テレビ中継だと、上半身のアップになったりするし……)

 ということで、意識して足元に注目しつつ、動画で羽生選手の過去の演技をチェック。

 本書では、過去の様々な試合の詳細な解説(著者いわく、個人的な「ツボ」らしいのだが、私からしたら「解説」レベル)も載っているので、それを読みながら実際の演技を観ると「これがインサイドエッジなのか」と分かったりと、非常に勉強になった。

 いかがだろうか? ジャンプ以外のフィギュアスケートの魅力や、羽生選手がなぜ「すごい」のか、少しでも理解が深まっていただければ嬉しい。(もちろん、本書を読めばこの数倍「すごさ」が分かるので、お手に取っていただくことをおススメする!)

 個人的に、平昌オリンピックに向けての「準備」は2つ。

・足元に注目するクセをつける。(特に、難しいジャンプ前後の足元)
・演目が2015年シーズンの「SEIMEI」と同じなので、その「SEIMEI」を観ておく。ジャンプの回数や種類の変化はもちろんのこと、新たに加えられた振付けやスケーティングやトランジションの「進化」した部分を見逃さないようにする。

 羽生選手にフォーカスした本書だが、その他、宇野昌磨選手や宮原知子選手などなど、平昌五輪に出場する選手たちの「ここがすごい」も紹介されているので、要チェックだ。オリンピックの開幕が待ち遠しい!

文=雨野裾