「似たもの同士が結婚する」説は本当? マッチングサイトのデータ解析が明かす恋愛と結婚の真実

ビジネス

公開日:2019/9/27

『「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』(山口慎太郎/光文社)

「結局モテるのは○○な人」
「子育てには△△が絶対必要」
――恋愛や結婚、子育てについての話は、多くの人たちにとって身近で気になるものだ。だからこそ、職場や友達の間でも“共通の話題”になりやすく、誰もが意見や知識をもっている。だが、その根拠は、自分の経験によるものや、どこかでなんとなく見聞きしたものだったりする…。それ故に、実際の研究結果からすると間違っているものも多く、安易に信じるのは気を付けたほうがよさそうだ。

 不確かな言説に惑わされないために、『「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』(山口慎太郎/光文社)を読んでほしい。本書は、さまざまなライフステージで、まことしやかに語られる“常識”に対して、最新の科学的なエビデンスを照らし合わせていく。その結果、“常識”が正しいこともあれば、単なる数字のマジックに過ぎなかった…ということも。それらは、結婚や子育てについて悩んでいる人にとって、大いに参考になるはずだ。

■“似たもの同士が結婚する”は本当か?

 周りのカップルを見渡してみると、なんとなく“似た者同士”が多いような気がしないだろうか。具体的な要素としては、学歴や容姿、背の高さなどがあげられるだろう。この“似たもの同士が結婚する”法則は、本当なのだろうか。

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 実は、こうした恋愛や結婚に関する言説は、マッチングサイトの台頭によって、データ的に調査しやすくなっている。マッチングサイトは、サイト上でのやりとりをAIで分析し、誰と誰がオフラインでのデートに至ったのかを実際に調査しているからだ。

 こうした調査によると、年齢、容姿、身長、体重、収入、学歴のすべての要素において、似た者同士でマッチしていることが明らかになっている。学校や職場に依存せず、自由に出会えるマッチングサイトでさえ、“似た者同士”が惹かれ合っているのだ。

■“3人に1人が離婚する”は本当か?

 ニュース番組などで、“3人に1人が離婚するといわれる現代”というフレーズをよく聞く。かつてに比べて“離婚”はぐっと身近なものになったのは確かだが、この数字に対して「本当に?」と疑問に思ったことはないだろうか。

 結婚した人が離婚するまでには数年、長ければ数十年かかることもあるわけで、どういった基準で“3人に1人”といっているのだろう…。本書によれば、この“3人に1人”という数字は、「離婚件数÷結婚件数」で算出されているという。例えば、2017年であれば、結婚件数が約61万人、離婚件数が約21万人。一見、“3人に1人”で正しいように思えるが、これは統計の罠である。

 この計算式の問題は、結婚件数が今年行われた結婚の数であるのに対して、離婚件数が“過去に行われた結婚”の離婚の数であるという点だ。つまり、結婚件数が減少している現代では、“過

去に行われた結婚”の離婚率が変わらなくとも、その年の結婚件数が減少すれば、離婚率が上がってしまうのである。

 統計は、何かを語るための“根拠”になる非常に重要なものだ。家族の問題だけでなく、ビジネスにおいても、健康問題においても、その重要性は変わらない。本書をしっかり読めば、恋愛や結婚といった親しみやすい話題を題材に、科学的なデータの大切さを学ぶことができるだろう。

文=中川凌