「ニセ科学」が公然と学校で教えられている!? 正しい知識を教えるはずの学校でなぜ?

社会

2019/12/20

『学校に入り込むニセ科学』(左巻健男/平凡社)

 学校で学ぶ教科やその内容は、文部科学省の監督下で各専門家たちが検証を重ねて、児童生徒が学ぶにふさわしいものが厳選されている。それらは社会に生きる上での基礎となるべきもので、ただ試験や受験のためにあるわけではない。しかしその中に、一見科学的な装いをしながら実は根拠のない「ニセ科学」が紛れ込んでいたら…?
 
『学校に入り込むニセ科学』(左巻健男/平凡社)は、「ニセ科学」の危険性に警鐘を鳴らしてきた第一人者であり、元・法政大学教授で現在は理科教育専門誌『RikaTan(理科の探検)』編集長を務める左巻健男氏が、すでに学校教育へと入り込んでしまった「ニセ科学」を一刀両断する1冊。科学的理論をもとに反証を重ねていく内容だ。

■「ニセ科学」とは、いったい何がニセなのか?

 左巻氏が最初に「ニセ科学」への危機感を抱いたのは、1999年発刊の『水からの伝言』(以下「水伝」)だという。当時ベストセラーとなったので、タイトルに覚えがある読者も少なくないだろう。水野入った容器に良い言葉を書いた紙を貼り凍らせると綺麗な結晶になり、逆に悪い言葉だと崩れた結晶になる、というものだ。

 もし人間が悪い言葉を示され続ければ、良い気分など保てないだろう。だが、水にとっての言葉はそうではない。左巻氏も当初は「信じる人は限られているはず」と思っていたそうだが、「水伝」は信奉者を増やし、2001年3月22日第151回国会文教科学委員会である議員によって肯定的に紹介される。これ以降、学校教育にも浸透していくことに――。

 これについて左巻氏はこう指摘する。

「言葉の善し悪しを水に教わるような世界は、心を失った世界だ。もっと人の心はゆたかで、【ばかやろう】という言葉だって状況によってはとても愛に満ちているときもあるのだ」

 我々人類は、良い言葉も悪い言葉も語り継ぎ、それが書物として後世に残されてきた。小生も物書きの端くれとして、これは声を大にして伝えたい。

■文化を後世に伝える学校教育で大事なのは――

 学校や政界に入り込んだニセ科学は「水伝」だけではない。それに並ぶのが「EM研究機構」の「EM」である「有用微生物群(英語名:Effective Microorganismsの頭文字)」だという。これは比嘉照夫氏(当時は琉球大学農学部教授)の手により土壌改良の農業資材として開発された。しかし、もともと提唱していた農業資材としての使用方法を越え、車の燃費節減、コンクリートの強化、さらには鳥インフルエンザや口蹄疫にも効果があり放射能除去までできると言及するまでに。左巻氏ら科学者はもちろんのこと、小生のような素人ですらも、その飛躍に頭を抱えてしまうくらいだが、既に幾度となく学校教育の現場で活用されているという。

 環境浄化効果があるとされ、このEMを混ぜた泥団子を河川に投入させて「水質が浄化される」と教えているという。なかには自治体の後援で公共事業として行われる例もあるそうだ。

 なぜこのようなことが起きるのだろうか? 現場の大人たちは悪意があって「ニセ科学」を教えているわけではない。あくまで善意で、児童生徒を善行へと導くために用いている。教員¬だけでなく一部の政治家や官僚も含めて、権威のある指導者のいうことだからきっと間違いないと思い込むのだろう。だが、これは全体主義的な発想で、個々で考えることを放棄しているのではないかと危惧される。

 本書は「学校は文化の総体を次世代に伝えるところ」だと語る。「ニセ科学」であるならば次世代には伝えず、我々が自分自身でよく考え、この世代で終わらせたいものである。

文=犬山しんのすけ