“雑談がおもしろい人”になるには「キャラクター」が大事。科学的に研究されたメソッド「インプロ(即興力)」とは

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公開日:2020/3/1

『雑談がおもしろい人、つまらない人』(渡辺龍太/PHP研究所)

 読者の皆さんは「雑談」が得意だろうか。小生は口下手で人見知りなので、苦手なほうである。とはいえ、勤め先などでは相手が話しかけてくると黙っているわけにもいかず、多分それなりに話せてはいるので、なんとかなるもんだとも思う。だが、もう少し余裕をもって話せれば、気になる女子ともお近づきになれるのではとも思っていたら、こんな一冊を見つけた。

『雑談がおもしろい人、つまらない人』(渡辺龍太/PHP研究所)は放送作家でもある著者の渡辺龍太氏がアメリカ留学時に出会った「インプロ(即興力)」と呼ばれるアドリブトーク術を基に、コミュニケーションの基本である雑談のコツを解説。雑談が「おもしろい」と感じさせる人は、決して口の上手さも、速い頭の回転も必要ではないというのだ。

 本題に入る前に、まずは「インプロ」について解説したい。小生も初めて知る言葉なのだが、即興力や即興演劇と訳されており「一切の台本がない舞台上で、観客を楽しませるための演技メソッド」とのこと。その際に俳優たちは「自分が演じている人物のキャラクターを明確にすること」そして「劇の間中、そのキャラクターがブレないこと」の2つを意識すれば観客も舞台を面白く感じる。つまり「その人物のキャラクターがしっかりと確立されていれば、どんな劇の内容であろうが、劇は成立する」のだ。

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 実のところ雑談とは「お互いにどのようなキャラクターなのかを理解する場」である。多くの人々は雑談の場で「面白い話をしなきゃ」とか「納得させなきゃ」とか気負っていないだろうか。雑談とは「相手との共同作業」であり「相手と自分が心地よく、自然と会話できることが一番大切」と著者は説いている。小生自身も、不慣れな相手には緊張して「何を話すべきか?」と考え過ぎてしまい、話しかけるタイミングを見失ってばかりだが、もしかすると、相手もそう考えていたのではないだろうか。

 ならばどうするか。そもそも著者は「雑談に才能はいらない」とも断言しているくらいだから、気負う必要は全くない。話の内容にすぐに役立つ情報や深い哲学もいらないのだ。この事実を胸に留めていることで、気が楽になる人も多いのでは。それで落ち着くことが出来れば、次の段階へと踏み出せるだろう。

「内容よりもキャラクターが大切」なのがわかったら、次は「お互いのキャラクターを理解しあう」コツを学ぼう。ポイントは以下の2点。

1.「相手はこういう人間なんだな」という情報収集
2.「自分はこんな人間なんです」という自己開示

 相手の情報を得るには、結論より「共感」を重視したり、「目に見えること」をほめる、具体的な質問を心がけたりするなどが挙げられる。逆に自分を伝えるには、自身が周りと違っている部分をラッキーと考えて強みにする、話の輪から離れた人に声をかける、持論を「自虐ネタ」っぽく語るなどがポイントである。そしてなによりも「雑談は相手との共同作業」であることを忘れないでほしい。

 ところで、そもそも雑談は何の役に立つと思うだろうか。円滑なコミュニケーションの手段であるのは当然だが、本書では「あなたの人生を大きく変える可能性をも、雑談は秘めています」と示す。著者自身が放送作家になったきっかけも、元は制作会社社長との雑談からだと述懐。そういえば、小生がこうして物書きをしているのも、ネットで知り合った先輩ライターとの雑談からともいえる。人の縁を結ぶのも雑談の効果と思って良いだろう。皆さんも、雑談をきっかけに新たな道を切り開いていけるのでは。

文=犬山しんのすけ