「ステイホーム」のいまだから実践したい! 塾に通わず東大現役合格。本で人生を変えた吉田裕子が勧める「一日10分」からの読書習慣

文芸・カルチャー

2020/5/22

『明日の自分が確実に変わる 10分読書』(吉田裕子/ 集英社)

 一冊の本で劇的に人生が変わることなどあるのだろうか。

 少し前にあるバラエティ番組の中で、人気のお笑いコンビEXITの兼近大樹がまさしくそんな話をしていた。ある事件で兼近が逮捕されたときに警察の留置場で読んだ『第2図書係補佐』。芸人・又吉直樹が自らの人生のさまざまなシーンを綴りながら、これまで彼が読んできた本を紹介する自叙伝のようなエッセイ集だ。兼近は本書との出会いで本のおもしろさに気づき、著者の又吉に感化されて自らもお笑い芸人をめざすことになる。

どんな時でもそこによかったことを見出す ――〈喜びの遊び〉ゲームを実践

『10分読書』の著者・吉田裕子さんも、一冊の本に大きく人生を動かされた人だ。独学で東大現役合格、学科主席で卒業、その後は働きながら慶應義塾大学文学部や放送大学大学院で学んだ才媛。いまは塾の最難関クラスで国語を教えている。

 そんな彼女の心に響いたのは、小学校高学年のときに読んだ『少女パレアナ』という児童文学。早くに両親を亡くしたパレアナは気難しい叔母に引き取られてつらい日々を送るが、父との約束、どんなときでもそこによかったことを見出す〈喜びの遊び〉というゲームをすることで、さまざまな困難を乗り越えていく。やがては町を変えることにもなる彼女のそうした姿勢に感動した吉田さんは、本書を何度も読み返し、この〈喜びの遊び〉ゲームを実生活に取り入れることで、塞ぎ込みがちだった性格を変えていく。彼女の輝かしい経歴もこうした『少女パレアナ』との出会いがあったからなのだ。

10分間の読書で出会ったひとつのエピソードが、数日経っても胸に残り続けていることがあります。ふと読んだひとつのセリフが忘れられず、数年後の行動を変えることもあります。

 毎日10分でも本を読むことを習慣づければ、ひと月に一冊は読み終えることができる。『10分読書』というタイトルは、そこから本の世界に足を踏み入れてほしいと名付けたという。まず、1年で12冊、どんな本と出会えるか、そこから何を得るか――本書は、読書の効用、身につく能力、読書を生活に取り入れる方法、本選びのコツなど、吉田さん自らの体験をベースに書かれている。

「10分読書」をより充実させるために

 まず、10分という「環境」をどう確保するか。カバンの中に必ず本を一冊入れて「カフェ読書」、脱衣所に本を置いて「バスルーム読書」、まずは「いつでも本がそばにある」環境を作り出すことが重要だという。スキマ時間ができると、ついついスマホを見るという人が多いと思うが、そういう人には電子書籍をうまく活用するのもいいようだ。

小さなことですが、私はスマホのホーム画面で、SNSをアクセスしにくい深い階層に移し、電子書籍リーダーのKindleを一番アクセスしやすい場所に表示するようにしてから、電車で読書する率があがりました。

 本選びについていちばん大事なのは「自分が読みたい本を読むこと」としながらも、より充実した読書体験を得たいと思ったときに参考にしてほしいと、その体験を4分類したマトリックスを掲載している。横軸を「エモーショナル⇔ロジカル」、縦軸を「フロー⇔ストック」にしたこのマトリックスに読んできた本を分類することで、自分の読書傾向がわかるし、新たな読書体験をしたいときにどんな本を読めばいいのか、その手がかりになる。


 また、読書からのインプットを最大化するためのヒントとして、以下の3つをあげている。

1)目的意識を持って読む本を選ぶこと。
2)読みながら手と心を動かすこと。
3)自分自身と関連付けて読むこと。

 上記のマトリックス化や、こうした効率的な観点は、たくさんの本を体系立てて読むことでキャリアアップしてきた、吉田さんならではの実践的な視点である。

本を読むと(自分の)可能性を広げることができる

「吉田式読書」の章では、年間300冊読破するという吉田さんの幼少時から現在までの本との付き合い方が紹介されている。本の楽しさを知ってからは、受験や就職、転職やそのときどきで目標を定めながら、自分がいま読みたい本、読むべき本を多読している。戦略的に読書をものにしていった吉田さんだが、その読書の広げ方は多種多様で、またアグレッシブである。

 さまざまな方法が紹介されているなかで、私が読書初心者に向いていると思ったのは、芋づる式読書である。この方法で本を選んでいる人が、実はいちばん多いのではないか。著者つながり、テーマつながり、ジャンルつながり、時代つながり、参考文献や元ネタとなった本に遡るのもおもしろい。

 本は一冊読むと必ず次につながる何かがそこにあり、興味はどんどん引き継がれて、読書の範囲も広がっていくことだろう。以下は、吉田さんが『天才になりたい』(山里亮太)を読んだところから広がった芋づる式読書の例である。


 読書を仕事のスキルアップや論文執筆などに役立てたいなら、ある意見に対して賛否両論、両方の本を読んで頭の中で比較検討することが必要だ。そのうえで、自分はどちらに共感するのか、またどんなところに違和感を持つのか、裏付けなどを調べることで、知識量が増え、自分の意見を深められるという。

 この他にも、〈「自然に手に取る」以外の本を読む〉ためにランダム性を取り入れたり、通信制の大学で学び、塾教師をしている吉田さんならではの放送大学テキストや参考書を利用したりする方法も紹介されている。

「Stay Home」の掛け声よろしく、家に居ることが推奨される昨今。この期間を無為なものにしないためにも、何かプラスになることを見つけられればと考えている人も多いはずだ。なかなか人に会えないいまだからこそ、本との出会いを増やしてみてはいかがだろうか。人生を変える発見や閃きの瞬間があなたに訪れるかもしれない。

文=konami

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