ドラマも好調! 『ミステリと言う勿れ』が抵抗する「“おじさん”が真実を独占する社会」

マンガ

更新日:2022/1/31

ミステリと言う勿れ
『ミステリと言う勿れ』(田村由美/小学館)

※本記事は、ドラマ『ミステリと言う勿れ』、原作コミックスのネタバレを含みます

 フジテレビのドラマ『ミステリと言う勿れ』が好評を博しています。主人公・久能整(くのう・ととのう)の口から次々と飛び出す名言の数々を楽しみにしている視聴者も多いのではないでしょうか。

 ところで、ドラマを見ながら原作を読み直していて感じたのは、作品のなかで、整くんが「抵抗している相手」がきわめて興味深いということです。

 では、その抵抗している対象とは何か。私見では、「真実が独占される社会」――とりわけ“おじさんたち”によって真実が独占される社会――なのではないかと思われます。…と言っても「なんじゃそりゃ?」だと思いますので、以下、説明します(引用するセリフは原作のものです)。

advertisement

「見えない家事」に切り込む整くんの魅力的なおしゃべり

『ミステリと言う勿れ』(田村由美/小学館)は、大学生の整くんが探偵役となって、さまざまな謎を解いていく物語です。特徴的なのは、その謎解きの際に整くんが淡々と、しかし大いにしゃべりまくり、さまざまな独自の考え方を魅力的に語るということ。「僕は常々思ってるんですけどね…」と語り始め、独特な考えを示し、そうした魅力的な考えに触れているうちに謎が解けていくという構成です。

 たとえば、ドラマの第1話(原作コミックス episode1)、整くんは殺人の容疑をかけられて警察で取り調べを受け、若い巡査である池本優人と話すことになります。そこで整くんは、池本さんが妊娠中の妻とケンカしていることを見抜きます。池本さんは整くんの洞察力に驚きつつ、「なんかヨメいっつも機嫌悪くて」「ほったらかしですけどね(中略)警察官ってそういうもんってわかってほしいすよ」と思わずグチをこぼし始めます。

 そして「でもオレ ゴミ出しとかはしてるんですよ」「少しは(中略)感謝してほしいわー」と言うのです。

 整くんはこのセリフに「ゴミ捨て…どこからですか」と反応します。そして、ゴミ出しは池本さんが思うような単純な行為ではなく、家の各所にあるゴミ箱からゴミを1箇所に集めるところからはじまり、分別やゴミ袋の在庫管理といったさまざまなプロセスを必要とすることを池本さんに伝えます。数年前に「見えない家事」(=家事を普段していない人は気づけない細かい家事)が話題になりましたが、その「見えなさ」をえぐり出す整くんの魅力的なおしゃべりです。

次ページ:
その後を示唆するようなきわめて重要な指摘が

あわせて読みたい