カワイイ表紙は「地獄絵図」への前フリ!? 伝説のトラウマ級サイコ漫画が満を持して蘇った!

マンガ

公開日:2020/6/26

やったねたえちゃん!
『やったねたえちゃん!』(カワディMAX/KADOKAWA)

“これはとんでもない作品を手にしてしまった。少女の生き様に、心と身体が震える。”(by はりまりょう)

 …と、まるで偉人が遺した名言のように演出してみた。無知や情報がないというのは恐ろしいものである。毎月担当編集さんにこのコーナーで取り上げたい作品を挙げていくのだが、表紙に描かれたくまちゃんのぬいぐるみと幸せそうな少女の笑顔に、「これは楽しそうだから…」と提案したらめでたく採用! そしていざ表紙をめくり読み進めてみると…輪切り&血みどろのサイコ展開でした! てへ、ペロリン♪(※ただし、くまちゃんのぬいぐるみはずっとカワイイ)

 ということで今回は、元ネタとなる伝説級過去作品も存在する、ある種の“続編”として描かれた感動のヒューマンドラマ作品、カワディMAX先生の『やったねたえちゃん!』(KADOKAWA)を紹介したい。

表紙のかわいさに騙されるな! 壮絶シーン連続の内容は…?

 それでは、まず覚悟を決めてあらすじをお読みいただきたい。

 物語の主人公は、幼少の頃に突然母親から離別を告げられ、児童相談所へ預けられた少女・たえちゃん。そんな彼女には、生きていく上でなくてはならない大切なお友だちがいる。それは、あの母親がたえちゃんの前からいなくなる前に渡した、白くて優しい顔をしたくまのぬいぐるみ――その名は“コロちゃん”。それからは、お話相手になったコロちゃんがいつもいるおかげで、ぜーんぜん寂しくない! そんな日常を過ごしていたたえちゃんに、伯父が引き取って一緒に暮らそうという話がやってきた。もちろんたえちゃんは大喜び!

たえちゃん「家族がふえるよ!!」
コロちゃん「やったねたえちゃん!」

 しかし、これ以降、たえちゃんに降りかかってくるのは、非人道的な悲劇の数々だ。だがたえちゃんに身の危険が迫った時、目覚めた“ある救世主”によって襲いかかってきた男は一刀両断! 本人は気づいていないまま、残酷で血なまぐさい物語が幕を開けるのだ(※なお、コロちゃんはずっとカワイイままだ)。

 実に急転直下のあらすじ! いままで当コーナーで紹介してきた作品の傾向と比べても、かなりの衝撃的な内容なのだ。作品中で繰り広げられる、たえちゃんが不憫な目に遭いながらけなげに生きる姿は、涙なしでは読めないはず。そんな中、ぬいぐるみで唯一の心の支えである相棒のコロちゃんと2人きりのやり取りのシーンは、貴重な癒しタイム! ずっとこの平穏が続いてほしい…が、そうもいかず、まるでジェットコースターに乗せられているかのように、ほんわかシーンと惨殺衝撃シーンの劇的展開が繰り返されていく。

 母親に見捨てられた幼少時代のたえちゃんを襲う、見るに堪えない惨殺事件。これについて幼いたえちゃんは「わかんない」と回答する。果たして事件の間に何が起こったのか? 読み進めていくと判明する“エグい真実”にはきっと誰もが衝撃必至(※少しだけタネ明かしをすると、たえちゃんを襲う人物がコロちゃんにも“ある条件”でひどいことをすると、“たえちゃんを守るモノ”が現れ、その人物へのとんでもなく凄惨で身も竦むようなお仕置きタイムがスタートするのだ!)

 たえちゃんとコロちゃんを待ち受ける数々の悲劇、そしてやがて現れる彼女をサポートする人物や友達の登場と、この運命の展開やいかに!?

 読んでいてつらくなるような、報われないたえちゃんの物語。冒頭でも少し触れたが、本作は2008年に発表された成年向け(=R18指定)短編を元ネタにしたリメイク作品なのである。前作は、もうそれはそれはたえちゃんが救われなすぎて物語が終わってしまう、いわゆる“胸糞悪い鬱マンガ”と呼ばれ、読者はトラウマを植え付けられ、ネット界隈でネタになるほど影響は大きかった。作中からあげた「家族がふえるよ!!」「やったねたえちゃん!」は、前作でも強烈なイメージをのこした決めゼリフで、AA(アスキーアート)にもなったのだとか。

 本作では、その残酷すぎる世界線ではなく、“耐えながら少しずつ救われていく世界線”で物語が繰り広げられる。残酷と絶望の中、超絶強靭メンタルで生きていくたえちゃんの姿。つい顔を覆ってしまいたくなるような場面もあるが、目を逸らさず最後まで見届けてあげてほしい!(※そして、コロちゃんはずっともふもふカワイイ)


文・手書きPOP=はりまりょう

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