中央線沿線で出会うヒロインとの感動ドラマ…電車通勤すら甘酸っぱくなる美麗な短編集!

マンガ

公開日:2020/8/7

中央線沿線少女
『中央線沿線少女』(rioka/芳文社))

 世の中がパンデミックで騒がれ始めた3月末から始まった、POPとレビューでマンガ作品を紹介する連載「マンガPOP横丁」は、今回でついに20回目! これから100回、500回、さらに5周年、10周年と目指して励みたいと思います。そんな記念すべき20作目にPOPとともに紹介する作品は、当コーナー初となる短編集。東京駅から奥多摩や甲府方面までのびる“中央線沿線”を舞台に少女からお姉さんまでさまざまなヒロインたちがドラマを繰り広げる、rioka先生の『中央線沿線少女』(芳文社)をご紹介!

中央線に乗って出かけたくなる、路線沿いのヒロインたち

 住みたい街ランキングの常連でもある東京・吉祥寺が地元である男子高校生・佐藤くんは、学校の日直のおつかいで花屋へ買いものに行くことになった。どんな花を買えばいいのかわからず立ち尽くしていると、ふんわりとした雰囲気で笑顔が素敵な若い女性店員・藤村さんが声をかけてきた。初めての雰囲気に最初は戸惑う佐藤くん、そしてセレクトしてくれる藤村さんからのイイ香りにちょっと反応し、この時のおつかいはなんとか無事終了。

 そして後日、学校では文化祭が迫り、クラスの出し物に必要なものには装飾用の生花が。買い出しの募集に佐藤くんは率先して手を挙げ、再び藤村さんが働く花屋さんへ。注文した花の量は実に2箱分。佐藤くん1人で運ぶのは難しいと、藤村さんが一緒に学校へ運び込むことに。佐藤くんはドキドキしっぱなしのこの藤村さんの訪問が、意外な感動ドラマへと発展していく――。そんな甘酸っぱいストーリーが収録された出会いをめぐる短編集だ。

 第1巻の収録話数は6話。先ほどのあらすじは、その第1話だ。この男子高校生と花屋のお姉さんの物語のほかに、おさげ髪の女子高生とキレイな長い髪の女子高生、若手のマジメな男性部下とお酒好きでお世話好きな美人上司…などなど、それらはどれもただの出会いだけでなく、登場するキャラクターたちの心情や知られざる素顔など、人生模様の奥行きがしっかりと描かれているので、1話ずつは短いながらもどっぷり浸かって楽しむことができる。


 ちなみに今回の舞台となる中央線の駅は、東から代々木、吉祥寺、三鷹、八王子、奥多摩、甲府の6駅。吉祥寺は井の頭公園、八王子は高幡不動尊と、それぞれの名所や景色とともに物語が描かれていく。そこに待つのはトキメキかホロリか…あなたもこのストーリーに乗車して、このドラマの行方をじっくりと見届けていただきたい。

 この作品で重要な、出会いの相手役となるヒロインたちは、透明感があって存在感もある、魅力的な女性ばかり。私、はりま個人としては、あらすじを紹介した最初の花屋のお姉さん、加えて美人上司の年上系がすごく良かった! キラキラしている中に、私のようなウブな人(?)の心をくすぐってくる仕草ややさしさ、そして突然垣間見せる少女のような一面に思わずキュンと悶絶。1巻で心奪われるヒロインに出会えた分、2巻以降の甘酸っぱい物語と出会いがさらに楽しみだ!

 中央線と一口に言っても、長野県そして名古屋へ行く中央本線とつながっていたり、日中は快速と各駅停車で車種が違うなど、長距離で複数の乗り入れもある複雑な路線。例えば、御茶ノ水でバンド少女とのキャンパスライフとか、新宿・大型画材店での出会いとか、あるいは発行元の芳文社がある水道橋で繰り広げられる編集者とドーム球場でのビールの売り子ガールとの物語…などなど、こちらで勝手に物語の妄想も広がる。生まれる物語の数は、きっと無限大だ。

 さらにはりま的には、この作品をいつか実写ドラマ化してほしいと希望している。できることなら同出版社の作品『ゆるキャン△』のドラマ枠で…。

 表紙から始まる美麗な描き込みや風景は、どれも読者にとって素晴らしく映ること必至。ぜひとも通勤特快ではなく、各駅停車でじっくりと楽しんでいただきたい作品だ。

文・手書きPOP=はりまりょう

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