キャバクラへ愛を込めて/オズワルド伊藤の『一旦書かせて頂きます』⑭

小説・エッセイ

公開日:2021/5/14

オズワルド伊藤
撮影=島本絵梨佳

 僕には大きく分けて3つの夢がある。

 1つ目はM-1グランプリで優勝すること。
 2つ目は『すべらない話』に出演すること。

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 どちらの番組も子供の頃から、というより、面白いということが1番カッコイイのだと気付いた頃から僕の人生を潤してくれた。いやむしろあの頃この2つの番組があったから、僕は面白い=最強と思えたのだろう。

 上記の2つの番組と同じくらいに僕の心を鷲掴みにした番組が『アメトーーク』である。
 面白いことに加え自分の得意なジャンルを喋って笑いを取るその姿は、ああ本当にこの人達のように生きれたらどれほど幸せなんだろうかと、M-1や『すべらない話』同様に、僕を芸人の世界へと誘うには充分であった。

 それから何年も経って、僕は今、果てしなくはあるがその夢を実現させることが不可能ではない距離まで来れていると自負している。
 そして、端から見れば一見根拠のないように見えるこの自信には、ある明確な理由がある。
 その理由とは、3つの大きな夢のうちの1つを先日叶えさせて頂いたということ。

 3つ目の夢とは、『アメトーーク』で「キャバクラ芸人」をやらせて頂くことである。

 それが実現するまでの経緯は本当に偶然で一瞬だった。

『松本家の休日』に出演した際、終わりの挨拶をさせて頂いた時、雨上がり決死隊の蛍原さんを目の前にした僕は相当に舞い上がっていた。

「アメトーークでキャバクラ芸人をやらせて頂けませんでしょうか?」

 番組を除いて、しっかりとお話させて頂いたのはほぼ初めてであった。近くにいたスタッフさんが僕を4度見くらいしていたのもギリギリ視野に入っていた。正面から見たら5度見だったかもしれない。いや正面から見た場合めちゃくちゃ目合うから1ガン見だったかもしれない。そりゃそうだよね。関係性もないのに。日本人旅行者がアメリカ大統領にホワイトハウスでそば打たしてくれって言ってるのとほぼ同じレベルだもの。本来なら「You are UTIKUBI」って言われてもイエッサーとしか言えないんだから。

 ただ蛍原大統領が僕にかけてくれた言葉は、

「おう、じゃあ加地さん(アメトーークのめちゃ偉い人)に聞いてみるわ!」

 それからマネージャーさんに「キャバクラ芸人」実現の報告を受けるまで2週間もなかった。

 いつかバカみたいに売れて『アメトーーク』に携わる全てのスタッフさんに、胃の中に入れてもまだ生きてるかと思うくらい新鮮で極上な寿司を振る舞うことが僕の中で確定した瞬間であった。蛍原大統領と加地さんには茶碗蒸しも付けようと思う。

 確実にルール違反であるし、若手の戯言だと一蹴される可能性の方が高かったが、それでも絶対に伝えたかったから、舞い上がっていようが空気が読めなかろうが、僕はあの日の自分を抱き締めてやりたい。

 蛍原さん、加地さん、『アメトーーク』スタッフの皆様、本当にありがとうございました。

 そもそもこの3つ目の夢に関しては、ある種の義務感すらあった。
 僕はキャバクラのアルバイトを合計で10年間やらせて頂いていた。
 もちろんなかなかの目にあったこともあったし、血の涙流すくらい悔しい思いもたくさんしたのだが、それでも僕は、お世話になったキャバクラ業界に、お笑い芸人として恩返しがしたかった。

 華やかな世界で、誰からもチヤホヤされながら楽に金を稼いでいるだけだと思われたりもする、出勤時間外もお客さんとの連絡をマメにとったり、キレイで居続ける為の努力を怠らずに生きていて、本当は24時間勤務みたいなもんで意外と毎日泣いている、しこたま飯を食わしてくれたキャバ嬢達に。

 女に顎で使われてぼったくりだなんだと罵られてまともな職ではないと思われたりもする、仕事で病んでしまったキャバ嬢の話に耳を傾け、お店の為ならどれだけ馬鹿にされても歯を食いしばり、それでもその華やかでシビアな世界を面白おかしく生きていて、かつて自分達にもあった、昔からの叶わなかった夢を僕に乗せてくれたボーイ達に。

 今のこんな世の中で、信じられないくらいの大打撃・風評被害・世間からのバッシングを受けながらも、お店を潰さないように必死で踏ん張るキャバクラ業界に。

 僕は恩返しがしたかったのだ。

『アメトーーク』で「キャバクラ芸人」をやらせてもらえている姿を、キャバクラ業界に観てもらいたかったのだ。
 今元気で芸人をやらせて頂けているのは、あなた方のお陰でもあることを、僕が今全力で生きているこの世界から、みんなに伝えたかったのだ。

 収録は最高に楽しくて、おこがましいが皆さん抜群に面白かったが、僕個人があの収録でお笑い芸人として上出来な結果を残せたかと聞かれたら、まだまだ何か出来たのではという悔しさも残るし、キャバクラについてその魅力を存分に伝えることが出来たのかはわからない。

 ただ、キャバクラに興味を持って頂けたのは間違いないと思う。
 少しでも、キャバクラ業界に元気を与えることは出来た気がしている。

 だからキャバクラ業界の皆様。
 僕が残りの2つの夢を叶えて、更にその先へと進み始めるところを、どうか見守っていてください。
 あとそのうち飲みに行くのでいい子つけてね。

 一旦辞めさせて頂きます。

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オズワルド 伊藤俊介(いとうしゅんすけ)
1989年生まれ。千葉県出身。2014年11月、畠中悠とオズワルドを結成。M-1グランプリ2019、2020ファイナリスト。


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