『小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団』『このあと どうしちゃおう』編集部の推し本5選

文芸・カルチャー

更新日:2022/3/22


時には立ち止まって過去の思い出の美しさを振り返りたい『同潤会代官山アパートメント』(三上延/新潮社)

『同潤会代官山アパートメント』(三上延/新潮社)
『同潤会代官山アパートメント』(三上延/新潮社)

 私事になるが、子どものころからどちらかというと移動の多い人生だったからか、住んだ土地への思い入れは強い方だ。一度、数年前に住んだ土地にどうしても行ってみたくなって、急遽、週末ひとり旅を決行したことがある。そして、予定通りに切なくなった。「映画を見て泣きたい」という感覚に近いかもしれない。

 切ない理由は、懐かしい場所の変化、そして自身の変化を感じるから。本作を読んで、世の中に変わらないものは何ひとつとしてないことを改めて痛感した。

 本作は四世代にわたる家族の物語だ。最愛の妹を関東大震災で失った女性・八重が、妹の婚約者だった竹井と結婚し、当時の最新式の住宅であった代官山アパートに住み始める。物語は、それからおよそ10年ごとに、視点者を変えて家族の変化を描き出していく。各エピソードの後ろに横たわる、当時の世相――第二次大戦やビートルズフィーバー、バブル景気なども興味深いが、ささやかな家族のエピソードに、鼻の奥がツンとするような健気さを感じる。特に、八重が妹の面影をひ孫に重ねる場面は、姿形が変わったとしても、どこかに変わらずに受け継がれていくものの存在を信じさせてくれる希望に溢れていた。

 八重と竹井の結婚から70年後、代官山アパートの再開発とともに、家族の物語も新しい局面を迎える。人も建物も変わってしまう。それは必然だ。ただそこに、過去を忘れず懐かしく思う人、ほんの一筋変わらないものがあることもまた、素晴らしいことだ。誰かと一生安寧に添い遂げること、添い遂げられる人に出会えることが奇跡のようないまだからこそ、大切にしたい作品だ。

宗田

宗田 昌子●内村航平選手の引退試合を、東京体育館で観戦してきました! 6種目やってこその体操競技という信念や美しさへのこだわりがつまった大会。すでに引退していた白井健三さんが2種目披露するという贅沢さ。これからも体操に関わっていく、という決意表明もあり、今後が楽しみになる1日でした。


advertisement


「数字」と聞くと身構えてしまってないですか?『数値化の鬼――「仕事ができる人」に共通する、たった1つの思考法』(安藤広大/ダイヤモンド社)

『数値化の鬼――「仕事ができる人」に共通する、たった1つの思考法』(安藤広大/ダイヤモンド社)
『数値化の鬼――「仕事ができる人」に共通する、たった1つの思考法』(安藤広大/ダイヤモンド社)

 以前勤めていた会社で、「愛のある上司だ」と言われたことがあった。そのときはたいそう喜んで、自分はしっかりマネージメントができているのだ、とほくほくしたものだが、本書を読んだ今となっては、その価値観が覆ってしまった気がする。当時の自身を振り返ると、「○○だけど頑張っている」と、数字で可視化されない部分を積極的に評価していた一方で、本当の意味で結果を出すための指導ができていたかは「?」である。シビアに結果を見ているつもりだったけど、実態は過程ばかりを追いかけてしまっていたのかもしれない。

『数値化の鬼』は、2000社以上が導入したというマネジメント法を持つ「株式会社識学」の代表取締役である安藤広大氏の著書で、2020年に刊行された前著『リーダーの仮面』は、29万部にまで到達している。本書に書かれているのは、自身の仕事を分解し数値化して考える・PDCAを回す・「D」の行動量を上げる・「過程」を管理すべきではない……といった内容であり、頭ではわかっているつもりでも、自分を厳しく律しないと真の意味では実践できない日々のアクションについて、繰り返し述べている。「数字を意識してみよう」ではない。『数値化の鬼』になれ、と著者は説く。鬼。ささる。身に覚えがあるだけに。きっと、同じように感じるビジネスパーソンは多いと思う。数字、と聞いただけで「うっ…」となる人にこそ、手に取ってみてほしいと思う。そういう方は、この本を読み進めていくと痛みを感じるかもしれない(自分は完全にそれでした)。新年度に向けて、マネージャーにも、プレーヤーにも、学びとなるであろう1冊だ。

清水

清水 大輔●編集長。今年でクラブ創立30周年を迎えるJ1・柏レイソルが開幕から好調。毎日が楽しい。降格候補とほうぼうで名指しされていただけに痛快。前評判って、アテにならないですね。ファクトや数字ではなく「印象」で予想しているから、なんでしょうか。