原点に返る年末年始! 1970~80年代の名作少女マンガ10作に浸る!

マンガ・アニメ

2019/12/31

 少女漫画ファンの皆さん、年末年始の予定はもうお決まりですか? まだ予定がないという人は、この機会に普段読まない漫画に触れてみるのもいいかと思います。

 ということで、ご紹介するのは、1970~80年代の少女漫画。少女漫画の転換期とも呼ばれるこの時代の名作の数々、名前だけは知っているけど、読んだことはないという人もいると思います。「これは読むべし!」という10作品をどうぞ。

●『11人いる!』(萩尾望都)全1巻

『11人いる!』(萩尾望都)

 泣く子も黙る少女漫画の神様、萩尾望都先生のSF作品です。名門校・宇宙大学の受験。最終テストは外部との接触を断たれた宇宙船白号で53日間生きのびること。1チームは10人…のはずが、11人いる!

 もう、このあらすじだけで面白いですよね。

 11人目が一体誰なのかという謎を解き明かそうとするのが、この作品の主軸になっています。と同時に、受験生として集まった宇宙人たちの友情ストーリーも見どころの一つ。肌の色も、文化も、何もかも違う面々が、トラブルを乗り越えながら結束を深めていく様子が、ドラマチックに描かれています。

 SFストーリーではありますが、少女漫画らしく、恋愛要素もしっかり入っているのがこの作品の素晴らしい点。ヒロインのフロルは一見、金髪巻き髪の美少女ですが、実は男でもあり、女でもある両性体。男になるという目標を持って宇宙船に乗り込んだフロルでしたが、主人公の少年・タダと出会ったことで、女の子として生きる道も悪くないと思い始めます。この2人の恋愛描写が、非常に胸キュンです。

 さて、11人目は誰なのか。正解は読んでからのお楽しみです。

●『ポーの一族』(萩尾望都)全5巻

『ポーの一族』(萩尾望都)

 続けてもう一つ、萩尾望都先生の作品です。歴史的名作として名高いですね。吸血鬼バンパネラであるポーの一族の数百年におよぶ運命を描いた作品です。

 1879年、とある海辺の街にやってきたポーツネル男爵一家。男爵夫妻とその子供たち、エドガーとメリーベル兄妹の4人は、怪しい気品を漂わせ、街の人たちから注目を集めます。しかし、男爵一家には秘密があったのです。実は彼らは人の生血を吸うバンパネラ「ポーの一族」。一族に加わる人間を探すため、街にやってきたのです。

 息子のエドガーは、元々は普通の人間でしたが、遠い昔にポーの一族に無理やり迎え入れられ、それ以降、永遠に年をとらない子供になってしまいました。それは妹のメリーベルも同じ。父と母は養父母で、兄妹とは、血の繋がりはありません。親と子の間に愛はありませんが、会話の節々から、絶対に切れない一族の不気味な絆を感じます。

 一族が辿る悲しい運命は、一度読んだら忘れられないことでしょう。

●『綿の国星』(大島弓子)全7巻

『綿の国星』(大島弓子)

 大島弓子先生といえば、萩尾望都先生らと共に“花の24年組”と呼ばれていた伝説的漫画家のひとり。『綿の国星』は、そんな大島弓子先生が描く、長編ファンタジーです。

 主人公は、須和野チビ猫。メスの子猫です。作中では擬人化され、小さな女の子として描かれています。チビ猫が、須和野家の長男・時夫に拾われるところから物語ははじまります。須和野家にやってきたチビ猫が、猫の視点から人間たちの生活を語るのですが、「大島先生、猫の世界に行ってらした?」と聞きたくなるくらい、心理描写が猫そのもの。猫がいたずらしたり、猫集会に行ったり、ネズミのプレゼントをくれたりするのは、すべて理由があったということが、この作品を読むとわかります。

 そして、チビ猫の詩のようなモノローグもまたいいんですよね。

「時夫のわかしてくれたミルクは程よい温度だったし お母さんの手はやわらかだった あたしはこれが夢でもいいと思った さめるまでめいっぱいこの中ですごそうと思った」

 須和野家を見つめるチビ猫の視線がとても優しいことが伝わってきます。幻想的で優しい物語です。

●『バナナブレッドのプディング』(大島弓子)全1巻

『バナナブレッドのプディング』(大島弓子)

 転入初日、「なぜいつもそう雰囲気が深刻なんですか」と教師に問われたとき、主人公の三浦衣良はこう答えます。

「きょうはあしたの前日だから…… だからこわくてしかたないんですわ」

 物語冒頭にこんな乙女心を掴まれるセリフを持ってこられては、もう読まないわけにいきません。この女の子はどんな子なんだろう? と作品に引き込まれてしまいます。

 衣良は転入生として新しい学校にやってきて、そこで幼馴染の御茶屋さえ子と再会します。姉、沙良の結婚を目前にして情緒不安定になっている衣良に、さえ子は「ボーイフレンドができたらなおる」と言って自分の兄の峠を紹介し、そこから物語が展開していくのですが、起きる事件やエピソードの一つ一つが、本当に繊細で美しいんです。読む人にとっていろんな解釈ができる哲学的な要素も含まれています。

 小中学生のときにこの作品に出会っていたら、私の思春期ももっと違っていたのではないかなと思わされます。

 ラストシーン、降り続いた雪が、花へと変わっていく画面が本当に綺麗で必見です。

●『キャンディ・キャンディ』(水木杏子:原作、いがらしゆみこ:作画)全9巻

『キャンディ・キャンディ』(水木杏子:原作、いがらしゆみこ:作画)

「そばかすなんて気にしないわ」というアニメの主題歌があまりにも有名な作品です。主人公は、大きくウェーブのかかったツインテールと、そばかすがチャームポイントの女の子、キャンディス・ホワイト。通称キャンディです。孤児院で育ったキャンディが、様々な苦難にさらされながらも、ひたすら前を向き自分の人生を歩んでいく姿を描いた長編ロマンス。

 ザ・少女漫画の絵柄なので、敬遠している方もいらっしゃるかもしれません。ところがその中身は、愛、友情、裏切り、戦争、別れと、人生における大事な要素がこれでもかというほど詰まっています。言うなれば、『風と共に去りぬ』の少女漫画版。

 物語序盤でラガン家に引き取られたキャンディが、いじわるな姉弟、ニールとイライザとやりあう展開も面白いのですが、やはり一番の見どころは、キャンディとテリィの恋でしょう。「愛し合っているのに、結ばれない2人」というロマンスがあることを教えてくれたのは、この作品でした。

 ようやくキャンディが幸せになれると思ったのに、どうしてこんなに悲しいことがあるんだと、涙なしには読めません。でも最終回は優しく幸せな気持ちになれます。

●『神かくし』(山岸凉子)全1巻

『神かくし』(山岸凉子)

「花の24年組」といわれる漫画家のひとり、山岸凉子先生の短編集です。全5編を収録しています。

 表題作の「神かくし」は江戸時代を舞台にした作品。主人公の藤堂主計は、お侍さんです。12年前、藤堂の弟・京也は、山の中でこつ然と姿を消してしまいます。神かくしに遭った京也を、心のどこかで「まだ生きている」と思い続ける藤堂。そんなある日、兄と弟は再会するのですが、それは悲しい運命の幕開けでもありました。

 12年前のあの日、弟の京也は、ある女に誘拐されていたのです。女の目的は、京也をつかって藤堂家に復讐することでした。実の母親と思っていた人物が、実は誘拐犯で、しかも自分を利用するためだけに育てていたと知った京也は、辛い現実に苦しみます。それは兄の主計も同じでした。

 クライマックスで主計が12年前の山の日を回想します。京也を探す「おーい」という声、本当はその声は京也にも届いていたのにと思うと、目頭が熱くなります。そして、兄弟が下した決断は…。一本の映画を見たような重厚で、切ない物語です。

●『ガラスの仮面』(美内すずえ)既刊49巻

『ガラスの仮面』(美内すずえ)

 演劇とスポ根をかけ合わせた傑作です。主人公の北島マヤは、どこにでもいる平凡な少女。勉強も運動も苦手だけど、唯一情熱を燃やせるものがありました。それがお芝居です。お芝居のためなら冬の川にも飛び込むし、舞台上で泥団子を食べるし、共演者が全員来なくても、一人芝居で演じきります。

 マヤの永遠のライバルが、姫川亜弓。お芝居の実力はもちろん、容姿端麗、頭脳明晰、パントマイムもお手の物と、非の打ち所がありません。おまけに父親は世界的映画監督、母親も国民的女優という、演劇サラブレッドです。

 しかし、どんなに努力しても、亜弓さんはマヤの才能を超えることができません。物語が進むにつれ、マヤよりも亜弓さんに感情移入する読者が増えていくのは、亜弓さんが努力の人だからなんですよね。

 亜弓さんの名シーンはたくさんありますが、個人的に好きなのは、12巻の最後。『ヘレン・ケラー』終演後、アカデミー芸術祭でマヤが助演女優賞最有力候補に選ばれたことを知り、ショックを受けたときの亜弓さんです。紅茶(クィーン・メリー)を入れてクラシック音楽を聴いて立ち直るのが最高にオシャレだなと思って、今でもよく真似しています。

●『はいからさんが通る』(大和和紀)全8巻

『はいからさんが通る』(大和和紀)

 時は大正。“はいからさん”こと花村紅緒(はなむらべにお)はある日突然、許嫁がいることを知らされます。相手は青年将校・伊集院忍(いじゅういんしのぶ)。通称、少尉。親に勝手に決められた結婚に、強い拒否感を持つ紅緒でしたが、少尉のことを知るにつれ、段々と恋に落ちていきます。跳ねっ返りでじゃじゃ馬の紅緒が、少尉の前でだけは乙女チックになるのが可愛い。

 ところが、ようやく2人の思いが通じたところで、悲劇が訪れます。戦争でシベリアに派遣された少尉が、現地で行方不明になってしまうのです。誰もが戦死を疑わないなか、紅緒は伊集院家に残り、少尉の帰りを待つことに。一方少尉は、命は取り留めたものの、戦いの後遺症で記憶をすべて失っていました。そして、シベリアで家庭を持っていたのです…。

 最終的に紅緒と少尉は結ばれるのですが、そこに至るまでが長いです。辛いです。でも、とてもロマンティックです。

 そして、少尉がいない間、紅緒を支えた青江冬星(あおえとうせい)がカッコ良すぎます。紅緒の幸せを願って身を引く潔さも含めて、最高の当て馬男子だと思います。

●『ベルサイユのばら』(池田理代子)

『ベルサイユのばら』(池田理代子)

 ご存じ、フランス革命の時代を描いた傑作です。

 主人公は3人。男装の麗人であるオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ、フランス王妃のマリー・アントワネット、そしてその恋人のハンス・アクセル・フォン・フェルゼン。

 オスカル以外の2人は実在する人物で、史実に則ったストーリーになっています。すなわち、マリー・アントワネットは処刑されることが決まっているので、物語はどうあがいても悲劇にしかならないことがわかっています。読み進めるうちに、華やかなフランスの街が、徐々に暗いものになっていくのがわかると思います。

 好きなキャラクターはそれぞれいると思いますが、ここで推したいのがアンドレです。オスカルの幼馴染であり、従卒である彼は、身分違いであることを知りながらオスカルのことを愛していました。オスカルがフェルゼンのことを想っているのを知りながらも、見守り続けるのです。

 恥ずかしながら、筆者がアンドレの良さに気づいたのは大人になってからでした。昔は断然、マリー・アントワネットが好きだったのに。何度読み返しても、そのたびに新しい発見があるのも、この作品の素晴らしい点だと思います。

●『悪魔の花嫁』(あしべゆうほ)

『悪魔の花嫁』(あしべゆうほ)

 人間の美奈子は、ある日突然、悪魔のデイモスに求婚されます。悪魔と結婚したくない美奈子はもちろん断りますが、デイモスは許しません。美奈子をどこまでも追いかけ続けます。

 第1話で美奈子に拒絶されたデイモスが何をしたかというと、美奈子の友達の良ちゃんを、あっという間に絵の中に閉じ込めて、フランスのルーブル美術館へと飛ばしてしまうのです。これから良ちゃんとデイモスとの三角関係がはじまるのかと思った矢先の出来事だったので、たまげます。良ちゃんだけでなく、美奈子に近づく男は、容赦なくデイモスが粛清していきます。

 大体1話完結で、毎回違うゲストが登場しては物語を展開していくのですが、サイドストーリーにはいつも「美奈子とデイモスの結婚する・しない問題」があります。人の弱い部分や悪い部分が浮き彫りになる教訓のようなお話が多いのも面白いところです。

 最初こそデイモンを恐ろしがっていた美奈子でしたが、しばらくすると、普通に会話するようになるという不思議な関係です。

 なお、既刊17巻で、いまだ2人の関係に決着はついていません。デイモスと美奈子が結ばれる日は来るのでしょうか?

 以上、名作10選でした。まだ読んだことのない作品があれば、ぜひ一度手にとってみてください。2019年の読み納め、2020年の読み初めにどうぞ。

文=中村未来(清談社)