角田光代さんをインタビュー。書き下ろした猫の絵本『ねこがしんぱい』で伝えたいこと。「意外にだいじょうぶだよ」【インタビュー】

文芸・カルチャー

公開日:2026/2/20

『方舟を燃やす』で昨年、吉川英治文学賞を受賞し、直木賞受賞作『対岸の彼女』も再び大きな注目を集めている角田光代さん。初めて猫のお話を書き下ろした絵本『ねこがしんぱい』が刊行され、発売後すぐに重版となり、子どもから大人にも好評です。猫が大好きだから心配しすぎてしまう家族と、のほほんと暮らす猫の様子をユーモラスに描かれています。

 角田さんのご自宅で、絵本や猫についてお話をうかがいました。

*本記事は2025年10月3日に「ヨメルバ」に掲載された記事テキストを転載し、新規写真を掲載しています。

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角田光代さん(以下、角田さん):(トトは)小さかったときはカメラとか大好きでポーズをとったりしてたんですが、年を取ってからは、わざとカメラに背を向けたり、見なかったりとか……(苦笑)。

――角田さんのエッセイ『今日も一日きみを見てた』の中で、外出している時、飼い猫のトトちゃんが冷蔵庫の中に入って震えているのではないか、洗濯機の中に入ってくるくる回っているんじゃないかと、心配していたことが書かれています。角田さんは心配症ですか?

角田さん:もともと心配性です。でも、トトは食べ物を食べ散らかしたり、いたずらをしたりすることはなく、私が心配したことを実際にやっていることはありません。

角田光代さんと愛猫のトトちゃん
角田光代さんと愛猫のトトちゃん

――トトちゃんと暮らして、よかったなと思うことは何ですか?

角田さん:良かったなぁと思うことは、人生が豊かになりますよね(笑)。幸せであるという幸せ感が大きくなりました」。

――角田さんにとって、トトちゃんと過ごす楽しい、幸せを感じるときは?

角田さん:朝ごはんを食べていると、(トトが)寝室に来てほしいって呼ぶんです。自分が寝るところを見ていてほしくて呼ぶんですが、それをわざわざ見にいってあげる、そういう無駄な時間が楽しいですね。

――絵本のお話では、女の子、お父さん、お母さんが「早く帰らなきゃ」と、猫の待つ家に急いで帰りますが、角田さんはどういう思いで考えられたのですか?

角田さん:わたしも急いで帰るんです。以前は出張が多く、家を空けることもあったのですが、パンデミックの3年間の後、人が家にいることが普通になって、トトが分離不安のようになりました。わたしが22時くらいに帰ると、「何してたんだ~」と、「ワアアア~」と大きな鳴き声を出して怒るようになったんです。だいたいもう何言っているのかわかるようになりました。不満の声とか(笑)。

――最近のトトちゃんへの心配はどんなことがありますか?

角田さん:トトは15歳(編集部注・人間の年齢だと高齢)で腎臓が悪くなってきているため、健康を心配しています。水を飲ませるようにしたり、腎臓に良い食事を与えたりしています。また、逃げだしたり、床に落ちた何かを食べていないか、暑くないかと心配しています。

――猫を飼うようになって、角田さんが思ったことは?

角田さん:うちで良かったのか? と思うようになりました。猫を飼っている人はみんな思うと思うんです。もっと裕福な家や、もっと大家族の家のほうがしあわせだったんじゃないかって。猫を飼うまで、こんなに猫のしあわせを思うとは想像もできなかった。

――絵本『ねこがしんぱい』で伝えたいことは、どんなことですか?

角田さん:トトちゃんは最初、心肥大だと診断され、9歳まで生きたらすごいってお医者さんに言われ、毎日泣いていましたけど、多分、誤診断で今は15歳。あんなに思いつめなくて、もっと楽しく暮らしていればよかったのではないかと思いもします。そんなに心配しないでも、だいじょうぶだよとあのとき泣いていた自分に言いたい(笑)。わたしは本当に心配症で、しかもネガティブなので、猫のことだけじゃなくて、生きることが苦しいくらい心配になることもあるんですけど、そういうとき何かで読んだのが、心配事の8割は本当にならない。本当になっていないというデータがあるんですって。だから考えるだけ無駄だっていうのを読んだとき、ちょっと安心したんですよ。自分の8割の考えに自分が苦しまされているってことだから。ただ心配を生みだす力って、創造力の豊かさでもあるじゃないですか。だから表裏一体。でも、心配することってつらいことなので、意外にだいじょうぶだよって思ってくれたらいいなと思います。

――最後に読者さんにメッセージをお願いします。

角田さん:わたしが猫のお話を初めて書き下ろした絵本『ねこがしんぱい』になります。よろしければ、どうぞ手に取って見てください。よろしくお願いします。

――角田さん、素敵なお話をありがとうございました。

取材・文=坂本真樹/撮影=野口彈

■角田光代さんPROFILE
「幸福な遊戯」で「海燕」新人文学賞を受賞しデビュー。『対岸の彼女』で直木賞、『八日目の蟬』で中央公論文芸賞、『源氏物語』訳で読売文学賞(研究・翻訳賞)、『方舟を燃やす』で吉川英治文学賞を受賞。他に飼い猫との暮らしを描いたエッセイ『今日も一日きみを見てた』『明日も一日きみを見てる』など著書多数。

【書籍情報】

ねこがしんぱい
(角田光代・作 小池壮太・絵 KADOKAWA)

角田光代さんが初めて書き下ろした猫のお話の絵本。新進気鋭の洋画家・小池壮太による猫の世界。
家族がいない時、猫はじつは……! 想像を超える驚きと、猫がのほほんと暮らす様子がおもしろい!
読み終わると、平和な日常が愛おしくなる。

▶amazon(単行本)www.amazon.co.jp/dp/4041158451
▶amazon(Kindle版)www.amazon.co.jp/dp/B0FSD2TT49
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▶絵本ナビ(単行本)https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=280991

【お話の紹介】
わたしの おうちは、三人と ねこの かぞくです。
まず、お父さんが かいしゃに いきます。それから、お母さんと わたしが おうちを でます。
ねこの たまこは おるすばん。
わたしは たまこのことを かんがえています。たまこは さびしくないかしら。
お母さんも お父さんも たまこのことが、心配でたまりません。
「たまこが ティッシュを だして、ぐるぐるまきに なっていないかな」
「ひとりで 遠くにいってしまって、おうちが どこか わからなくなって、帰りたいのに 帰れなくて、えーんえーんと ないていたら、どうしよう」
かぞくの だれも しらないのです……。
かぞくが いないとき、たまこが どう過ごしているのか。
ティッシュの雲に のって、遠くへ 飛んでいくことを。
遠い国の友だちと オンラインで 遊ぶ約束だって できることを。
わたし、お母さん、お父さんが いそいで 家に帰ると、たまこは……!?

ねこがしんぱい (角川書店単行本)

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