警備会社に身分を偽って潜入! 警察小説のヒットメーカー・鳴神響一の新たなヒーローは“なりすまし捜査官”【書評】

文芸・カルチャー

PR 公開日:2026/3/4

仮装身分捜査官 一条汐莉 アンダーカバー・クライシス
仮装身分捜査官 一条汐莉 アンダーカバー・クライシス(鳴神響一 / KADOKAWA)

 2025年から警察で採用されたという「仮装身分捜査」をご存じだろうか? 闇バイトを利用した強盗や特殊詐欺グループを摘発するために、捜査員が仮装身分、すなわち架空の人物になりすまして容疑者への接触を試みるというもの。覆面捜査、潜入捜査、おとり捜査などと似たイメージを持つが、より綿密に免許証やマイナンバーカードなど公文書の偽造が認められ、完全に別人物になりすますというのがポイントだろうか。なかなか危うい捜査方法に思えるが、実際のところはどうなのだろう?

 そんな最新捜査の気になるリアルを垣間見ることができるのが、55万部突破の「脳科学捜査官真田夏希」シリーズで知られる警察小説のヒットメーカー・鳴神響一さんの「仮装身分捜査官 一条汐莉」(KADOKAWA)シリーズだ。昨年夏に第1作『仮装身分捜査官 一条汐莉 アンダーカバー・プライド』が出版されたが、早くもこのたび、待望の第2作『仮装身分捜査官 一条汐莉 アンダーカバー・クライシス』が登場することとなった。

 主人公は神奈川県警所属の仮装身分捜査官・一条汐莉。新しい捜査方法への若干のとまどいはありながらも、唯一の捜査官としてのプライドを胸に、地道に捜査にあたる。見事に別人になりすます能力はもちろん、もともと有能な刑事であった彼女の直感は鋭く、事件解決のとば口になっていくのも小気味よい。

 前作で彼女が潜入したのは、携帯電話アンテナの保守・点検・整備を行う大手キャリアのグループ会社。神奈川県内で相次ぐ偽基地局によるスマホ乗っ取り事件の捜査線上にこの会社が浮上し、内部調査をすすめるために系列会社の調査員として潜入したのだった。そして今作では、汐莉は警備会社に新入社員として潜り込む。実は鎌倉市内で発生した現金輸送車強盗殺人事件の捜査途上、その前月に起きた美術品運搬車襲撃事件との類似性から捜査線上に《相和警備保障》が浮上したのだ。

 汐莉は交番勤務の元警察官というプロフィールを持つ「早川美香」になりすまし、新人研修の名のもとに相和警備保障に勤務。スーパーの警備、現金輸送車の警備など各部署をまわりながら、あらかじめマークしていた怪しい職員を密かに監視する。だが相手はなかなか尻尾を出さない。汐莉は「(お前を)探っている」という逆アピールをすることで相手の出方を待つことにするが、元警察官や元自衛官という手強い相手揃いの中で絶体絶命のピンチに陥ってしまう――。

 前作より捜査官として自信を持った汐莉はより大胆になり、スリリングで目が離せない。一方、上長の織田信和刑事部長(鳴神ファンにはうれしい「脳科学捜査官真田夏希」シリーズのあの人! だ)、バディ役の総務課特別支援員・小西行哉巡査部長など魅力的なキャラクターが汐莉のサポート役として活躍するチームワークも心強い。ちなみに汐莉は毎度、潜入先のさまざまな部署を体験的にまわっていくのだが、まるで社会科見学のように楽しめるのも本作ならではの面白さだろう。

 汐莉はこれからもますます活躍してくれるはず。今後のシリーズ展開が楽しみだ。

文=荒井理恵

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