第44回「山梨」日本の名峰・富士山を中心に豊かな大自然に愛されるこの地の本棚には、どんな本が並んでいるのか?【あの町の本棚】
公開日:2026/3/29
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年4月号からの転載です。

日本のシンボルであり、2013年には世界文化遺産へ登録された、富士山。その名峰を中心に豊かな大自然に愛される山梨県が今回の舞台だ。県内には歴史的建造物も多く、また、絹本著色夏景山水図や絹本著色達磨図などの「国宝」が5つも存在するという。そんな山梨で生活する人々はどんな本を愛しているのか。本棚の一部を紹介してもらった。
ふじさんミュージアムの皆さん


富士山信仰の中心を担っていた神職・御師。彼らが信者に振る舞っていた御師料理を紹介しつつ、富士山にまつわるしきたりや生活をひもといていく。「富士山の麓に住む人々が、富士山の恵みがもたらす様々な食材を生かし、富士登山者をもてなしてきたことが分かる一冊です」

噴火と崩壊を幾度も繰り返し、樹海、湖、湿原、洞穴などの景観を生み出してきた富士山。20年以上も富士山に通う写真家が、その知られざる顔を捉え直す。「富士山に触れるかのような美しい写真から、富士山は火山であるからこそ長く信仰されてきたのだと気づかされます」

全国各地の博物館を旅するコミックエッセイ。各博物館の見どころに加え、女性ひとり旅に役立つアイデアコラムも。ふじさんミュージアムも取り上げられている。「あこがれていたけど今まで行くのを迷っていた遠くの博物館へ行く勇気をもらえます」
[ふじさんミュージアム]
〒403-0032 富士吉田市上吉田東7-27-1 ☎ 0555-24-2411
HP:https://www.fy-museum.jp
1979年3月に「富士吉田市郷土館」として開館、2015年に一部増築と展示を一新し、愛称「ふじさんミュージアム」としてリニューアルオープン。富士山について誰もが気軽に楽しく学ぶことができ、その魅力を余すところなく感じることができる。
山梨県笛吹川フルーツ公園の皆さん


山梨にまつわるさまざまなトリビアを、国語(言葉)や算数(数字)などのカテゴリに分けて解説。意外と知らない山梨の一面を丸裸に。「山梨県民も一気読みするほど驚きと発見が満載! イラスト多数で楽しく読める、山梨愛が深まる最高の一冊」

あの果物には一体どんな花が咲くの? カラフルで美麗な写真とともに、“果物の花”をクイズ形式で紹介する、知的好奇心を満たしてくれる一冊。「親子でクイズ感覚で楽しめる科学絵本。山梨出身の写真家が県内外の農園で撮る花の大迫力接写が魅力満点!」

チューリップがバブルを生み出した!? 人類の歴史の裏側にある“植物の歴史”を垣間見ることで、歴史そのものがもっと面白くなる。「帝国の興亡や経済の変転は植物が決定づけた。読んだ後に道端の草木の見え方が変わってしまうような、圧巻の歴史書」
[山梨県笛吹川フルーツ公園]
〒405-0043 山梨市江曽原1488 ☎ 0553-23-4101
HP:https://fuefukigawafp.co.jp
四季折々のフルーツが楽しめる峡東地域に位置する、「花とフルーツとワインの公園」をテーマとして整備された都市公園。園内にはモモやブドウなどが実る広い果樹園のほか、遊具やレストランなども充実しており、子どもから大人まで楽しむことができる。
YOMU 店主 土屋 誠さん


消滅の危機にある“ファンタージエン”を救うため、少年バスチアンの冒険が始まる。「初めて読んだ時にはワクワク、少し大人になって再度読んだ時には世界の本質がここにある、と唸らされました。表紙が物語に出てくる“あかがね色”で、そのすべてから本を読む楽しさを教えてくれた一冊」

難しい仏教の哲学も、著者にかかれば面白おかしく学べちゃう。唯一無二の仏教入門書。「人生のバイブル。仏教の尊い教えが言葉の魔術師・みうらさんの言葉に変換されて、身の丈の生活に落とし込んで考えることができ、辛い時もこの本があったからこそ生き抜けました」

フランスにおいて戦後思想史最大の“事件”であった一冊。野生の思考とはなにか? 「手持ちの材料や道具を駆使して、その時々の必要に応じて物事を創造する“ブリコラージュ”という概念にとても影響を受けました。SNSやAI時代を生き抜くのに、大事な示唆をもたらしてくれています」
[YOMU]
〒407-0024 韮崎市本町1-4-32
Instagram:yomu_bookandtea
2025年6月にオープンした、韮崎市の商店街の新刊書店。「誰かの心に響く本」をコンセプトに、新刊書籍を中心とした幅広いジャンルの商品を取り揃え、ギャラリーと読書スペースも併設している。
のほほんBOOKS&COFFEE 店主 渡辺潤平さん


自然やインフラ、エネルギーなど、それらをゼロベースで問い直したとき、どのような世界が見えてくるのか。都市と自然、その両立はできるのか。「その分厚さに怯むなかれ。コンクリートではなく、豊かな自然に囲まれた疎空間における人の営みを考察する超大作」

どうして私たちは時間に追われているのか。限られた時間を自分らしく生きるため、これまでにない“自己変容”を促す話題の書。「“時間が足りない”は、自分が作り上げた妄想……? ハッとした後にグサッとくる、新しい生き方の指南書」

人里離れ、山中にひっそりと建てられた山小屋や、仲間と楽しめるようなツリーハウスなど、小屋愛好家たちが自力で作った隠れ家を紹介。「山で暮らすことを決めたきっかけになった一冊。開くたびに新しい妄想がムクムクと湧き上がる」
[のほほんBOOKS&COFFEE]
〒409-1501 北杜市大泉町西井出8240-8420 ☎ 0551-45-9022
HP:https://www.nohohonbooks.jp
山に位置する書店。山で読むと一気に没入できる本をセレクトしている。「香り高い珈琲と、地元の絶品おやつをご用意してお待ちしています」
あの町と本にまつわるアレコレ
山梨、埼玉、東京を跨るようにそびえる雲取山が、実は数年前から「聖地巡礼」の舞台になっている。あの国民的マンガ『鬼滅の刃』の主人公・竈門炭治郎らの出身地であるという設定が公開されたのだ。麓にある丹波山村は鬼滅ブームに沸き、村をあげて、鬼滅ファンを迎えている。
女子高生たちがキャンプをゆるく楽しむさまを描き大ヒットしている『ゆるキャン△』も、山梨が舞台になっている。なかでも代表的なのが、身延町にある「浩庵キャンプ場」だろうか。富士山と本栖湖が一望できる抜群のロケーションが自慢であり、売店には『ゆるキャン△』にまつわるグッズも販売されているという。
山梨は人気マンガ家を生み出してきた土地でもある。『美少女戦士セーラームーン』の武内直子、『エースをねらえ!』の山本鈴美香、『ど根性ガエル』の吉沢やすみ、『コウノドリ』の鈴ノ木ユウなどなど、実に錚々たる顔ぶれだ。
豊かな自然がありながらも、都心部へのアクセスも悪くない。そんな環境はきっと、創作活動にはうってつけだろう。これからも、次世代を担うようなマンガ家が次々と誕生するに違いない。マンガ好きならば、ぜひ注目しておきたい土地である。
構成・文:イガラシダイ イラスト:千野エー
<第11回に続く>