『コンセプチャル・ガール』難解な現代美術が「笑い」に変わる! パピヨン本田が描く、泥臭くて熱いアートコメディ【書評】
PR 公開日:2026/5/17

「現代美術」と聞いたとき、“難しそう”と縁遠く感じてしまう人は多いのではないだろうか。現代美術は絵画や彫刻以外にも、映像やパフォーマンスなどさまざまな技法によって表現されるアートで、一見しただけではその作品が何を意味するものなのかわからないものも多い。そんなちょっとハードルが高いと感じてしまう「現代美術」を、これでもかというくらい“面白く”描く漫画がある。
現代美術をテーマにした『美術道』や『美術のトラちゃん』などを描いてきた漫画家パピヨン本田氏がUOMOのウェブサイトで連載している『コンセプチャル・ガール』(集英社)だ。
物語の主人公は、私立音寺巻(ねじまき)高校の現代美術部部長の和田まひろ(2年)だ。まひろは根っからの美術オタクで、特に現代美術を愛して常に作品作りをしている。

しかし、彼女の生み出す作品は多くの学生たちには受け入れられず、評判は悪い。過去の現代美術家の作品をオマージュした舞台パフォーマンスをするものの、現代美術を知らない生徒たちに「何これ?」と一蹴されるだけで、まひろたちはただただウケを狙ってすべっただけのようになってしまう。例えば舞台が美術大学とかであれば、彼女の作品はもっと多くの人たちに真面目に取り合ってもらえて、議論の種になったかもしれない。しかし、彼女がいるのは一般的な高校だ。美術部の上手な絵は賞賛される一方で、まひろたちの現代美術は偏見の眼差しを向けられるばかり。

それでもまひろと、同級生で副部長の華塚花は現代美術に向き合うことをやめず、ときには体を張って作品の表現をし続けようとする。

もしかしたら、この漫画を読まずに彼女たちの作品だけを見たら、「意味がわからないな」と素通りしていたかもしれない。でも、漫画を通して彼女たちが作品を生み出す過程を知ることで、今までだったら到底理解できなかったような現代美術を「面白い」と感じている自分がいることに気づく。

正直最初は「現代美術」をテーマにしているというだけで、この作品を少し敬遠してしまっている自分がいた。現代美術と同じように、この作品も理解できないだろうと思ってしまっていたのだ。しかし、まひろをはじめとして登場するキャラクターたちは一癖もふた癖もある人物ばかりだが、どこか人間臭くて親近感がわく。そんな彼女たちが、泥臭く自分たちの考える芸術に向き合う姿は、全く「ハードルの高い」ものではない。
芸術の知識も技術も持ち合わせているまひろは、どこかで自分の作家性について自信を持ちきれないところがある。しかし、そんな彼女が作中で生み出す作品は、気が付けば少しずつ、周りの人たちの心を動かしていく。そのカリスマ性と才能をもったまひろが、これからどのような作家になっていくのか、どのような作品を生み出していくのか、一読者として楽しみで仕方ない。作品は一貫してコメディ調で、彼女たちの会話劇風の掛け合いも面白く、現代美術に疎い私でも何度も声を出して笑ってしまった。「現代美術にちょっと偏見がある人」にこそお勧めしたい一冊だ。
文=園田もなか
