2歳の息子が「もっかい!」を連発! 「いいえ、いえです」「いい、いえです」のリズムで親子の会話が自然に弾む、tupera tuperaの最新作絵本【書評】

文芸・カルチャー

PR 公開日:2026/4/17

いいえ いえです
いいえ いえです(tupera tupera / 白泉社)

 tupera tupera(ツペラ ツペラ)といえば、パンダの衝撃的な秘密を描いた『パンダ銭湯』や、実際に脱がせられる紙のパンツを本に穿かせた『しろくまのパンツ』など、「仕掛け」と「ユーモア」に溢れた絵本で知られるクリエイティブ・ユニットです。

 我が家の2歳半になる息子も、1歳の頃から彼らの代表作であるシールブック『かおノート』が大好き。親子でどれほど楽しませてもらったか分かりません。そんな作家の待望の新作絵本『いいえ いえです』(白泉社)は、実際に息子に読み聞かせてみても、私たち親子の期待を裏切らない楽しい一冊でした。

繰り返しのリズムが生み出す「会話のグルーヴ」

 本作の核となるのは、「これは◯◯」「いいえ、いえ(家)です」「いい(良い) いえ(家)です」という、ページをめくるたびに現れるシンプルな言葉のリズム。

いいえ いえです

 このフレーズを読むだけで独特のテンポとグルーヴが生まれるので、親の側も読み聞かせるのが楽しくなってきます。

 そして◯◯の部分には、きのこやりんご、ソフトクリームといった、子どもにとって親しみのあるモチーフが次々と登場。

 しかも、それらは単なる食べ物として登場……したかと思いきや、次のページで驚きの事実が発覚。さらにその次のページでは楽しい「オチ」が待っています。なお、このオチについて、tupera tuperaさんは「子どもには難しいかも…と思ったんですけど、4~5歳の子に読み聞かせてみたらとってもいいリアクションでした」とMOE5月号のインタビューでお話ししていました。

いいえ いえです

 たとえば「きのこ」のページでは、最初に息子へ「これは……?」と問いかけると、自信満々に「きのこ!」と答えます。

 ところが次のページに現れる絵を見ると「えっ!」と表情が変わり、こちらがそのページに書かれた言葉を読み聞かせると、さらに驚く。そして最後の「オチ」のページでは、もう一度目を丸くして見入っていました。

 そんな“驚きの連続”が、ページをめくるたびに生まれます。

「いいえ」という否定が、親子のコミュニケーションを深める

 この絵本の面白さは、読み聞かせを通じて自然と親子の会話が発生するところにあります。

 親が「いいえ、いえです」と否定のフレーズを口にすると、息子は「これはきのこ!」「りんごだよ!」と、まるで自分が正解を教えてあげるかのようにムキになって言い返してくることもありました。

「否定」という言葉は日常では少しネガティブに響くこともありますが、本作においては親子を笑顔にする最高のコミュニケーションツールになっています。りんごだと思っていたものが実は――そんな視点の転換は、2歳児にとってとても新鮮な驚きのようでした。

 思考や感情を予想外の方向に揺さぶられる快感と、繰り返される言葉のリズムが心地よかったのか、息子は読み終わるなり「もっかい!」とリクエスト。三度、四度と繰り返しをねだるほど夢中になっていました。

柔らかな世界観の先に待つ、鮮やかな「オチ」

 tupera tuperaさんらしい、柔らかく愛らしい絵のタッチは本作でも健在です。それぞれのキャラクターが住む家のディテールも見どころで、きのこの家にはきのこ型のテーブルやイス、ランプが並んでいたりと、ページの隅々まで視覚的な楽しさに溢れていました。

 そして物語の終盤、それまでの繰り返しのリズムを鮮やかに回収する「オチ」もしっかり用意されています。その構成の妙には、大人の私も思わず「そうきたか」と唸らされました。

いいえ いえです

 ただ可愛いだけではなく、最後には知的な驚きまで残してくれる――その設計の巧みさこそが、tupera tupera作品が長く愛される理由なのだと思います。

「いいえ」と否定し合うことが、いつのまにか弾むような対話に変わっている。不思議なグルーヴ感を持つこの絵本は、読み聞かせる親の私自身にとっても、息子と一緒に「会話」そのものを楽しめる、幸福な時間をくれる一冊でした。

文=古澤誠一郎

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