松丸亮吾率いるRIDDLER所属の気鋭作家が仕掛ける謎解き本。実際に問題を解きながら物語を読み進めるミステリー児童書を紹介【書評】
PR 公開日:2026/4/22

先生さえも気づかぬ間に、いつの間にか学校のあちこちに貼り出された謎。しかも、その謎に答えると、誰が早く解いたかのランキングが見られるらしい。いったい誰が、何のために。謎を貼り出した人物の正体を追ううちに、その背後にいる怪しげな集団の存在が見えてくる。しかも彼らに弱みを握られ、その一員にさせられて――。
そんなドキドキワクワク満載の本が『謎解き怪盗団シュロス 1 秘密の怪盗デビュー!』(雨露山鳥:著、RIDDLER:企画、Ozido:絵/双葉社)。松丸亮吾率いる謎解きクリエイター集団RIDDLER発の、謎解き児童書シリーズ第1巻だ。謎解きやミステリが好きなら、この本にきっとハマるに違いない。というのも、本書はミステリとして面白いだけではない。物語を読む面白さに加えて、謎を解く快感も、さらには謎を作る醍醐味まで教えてくれる。そんなふうに、一冊の中で何度も違った楽しみ方ができるうえ、まるで自分も物語の一員になったかのような没入感に浸ることができるのだ。しかも、すべての漢字にふりがなが付いている。アニメーターとしても活躍するOzidoによるイラストも豊富に掲載されているから、読書が苦手な子や小学校低学年の子でも、親子で楽しみやすい。「いつの日か子どもと一緒に謎解きを楽しみたい」「子どもにはミステリ好きになってほしい」。そんな願いをもつ私にとって、これほど心惹かれる本はなかなかない。
主人公は、ちょっぴりぼんやりしたところのある小学生・ハヤト。名探偵に憧れる同級生・チナツの助手を務め、ひそかに彼女に思いを寄せている少年だ。そのチナツが対抗心を燃やしているのが、最近学校に謎解きを仕掛け、校内を騒がせている正体不明の怪盗団〈シュロス〉。チナツのために〈シュロス〉の正体を追っていたハヤトは、ある日、みんなに隠していたある秘密を〈シュロス〉のリーダー・怪盗Rに知られてしまう。「もしキミの秘密をバラされたくなければ……怪盗になりたまえ」。さらに、これから出す謎を3分以内に解けなければ仲間になるようにと、勝負まで挑まれるのだ。
探偵や怪盗が登場するだけでも心が躍るのに、本書には、読者も挑戦できる謎解きが9問収録されており、どの問題も実に面白い。しかも、謎解きに特別な知識はいらない。必要なのは「ひらめき」だけなのだ。
たとえば、ハヤトが3分以内に解くよう出題されたのはこんな問題だ。
「パネル同士が重ならないように、7枚のパネルを文字盤に重ねよ。パネルは回転したり裏返したりしてはならない。すべてのパネルを重ねたときに、パネルが重なっていない文字を並びかえてできる干支は何か答えよ。」

パネルをどう組み合わせれば正解を導けるのか。パネルをひとつひとつはめながら、大真面目に解こうとすれば、大人でも3分以内で解くのは難しい。かくいう私も謎解きが大好きなのに、この問題にはしっかり苦戦を強いられた。もちろんそれはハヤトも同じである。だが、じつは、答えにたどり着く方法は驚くほどシンプルだ。
「パネルが重ならない文字を数えればよかったのさ」
「文字盤はヨコ9列×タテ5行で45マス。パネルは全部6マスでそれが7枚あるから、6×7で42マス。ということは、パネルが重ならない文字は45ひく42で3マスだ。干支の中で3文字なのは『ひつじ』だね。『ねずみ』や『うさぎ』も3文字だけど、『ず』や『ぎ』が盤面の中にないのは、見ればすぐにわかるよね。これが正解だ」
そんな解説を聞くと、ハヤト同様、思わず「あ……」と声をあげたくなる。問題を解くカギは、ちょっとしたひらめきにある。だからこそ、解けなければ悔しいし、解けた時の快感は格別だ。
しかも、この本は謎を解くだけではなく、謎を作る側の世界へも読者を誘ってくれる。やむにやまれず、「怪盗」として謎を作る一員になったハヤトは、最初こそ渋々だったものの、だんだんと謎作りの面白さに魅せられていく。それは読んでいるこちらも同じだ。謎はどう作るのか、ひらめきはどう生まれるのか。本書では、謎解きクリエイターならではの視点が明かされていく。「考えなきゃならないこと『ひらめきポイント』を用意する」「解説を聞いて『これなら自分でも解けた!』と悔しく思わせることができる謎を目指す」「解いた人がスッキリするような『納得感』がある答えにする」――謎を作るための工夫に触れるにつれて、自分も誰かを驚かせるような謎を作ってみたいと、つい思ってしまう。
「退屈を盗み、ワクワクを届ける。それこそが、私たち謎解き怪盗団〈シュロス〉のモットーなのさ!」
まさにその言葉どおり、この本は読者の退屈を鮮やかに盗み去っていく。謎を解く快感も、ひらめく喜びも、考える面白さも、親子でまるごと味わえる。秘密とウソとひらめきが交差する「学校×怪盗×謎解き」の新シリーズ。その幕開けを、ぜひともあなたの家でも体験してほしい。
文=アサトーミナミ
