「この店に行きたい」と思ってしまう理由がある。作家が愛した純喫茶を訪ねてみた――『東京文学的喫茶』【書評】

文芸・カルチャー

公開日:2026/5/2

 新しいお店が次々と登場する東京。立ち寄れる喫茶店の選択肢は増えたけれど、忙しい日々の中でふと恋しくなるのは、昔ながらの喫茶店だったりする。

 そんな時に手に取りたいのが、『東京文学的喫茶』(甲斐みのり/白泉社)だ。本書には、作家や文学者ゆかりの「昔ながらの喫茶店」が数多く登場する。ページをめくっていると、不思議と「このお店に行ってみたい」と思わされる。

 本に実際に登場する純喫茶を訪ねてみることにした。読むだけでは終わらない、“体験する一冊”としての魅力をお届けしたい。

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創業から70年続く老舗。直木賞作家・山口瞳が通った『ロージナ茶房』へ

 午後3時。

 バッグに『東京文学的喫茶』を忍ばせ、街に出た。

 訪れたのはJR中央線国立駅から徒歩3分ほどの場所にある『ロージナ茶房』だ。

『ロージナ茶房』は、創業から70年以上続く老舗の喫茶店。

 駅からすぐの路地に入ると、鮮やかな青い扉が。ゆっくりと扉を開けると、絵画や映画のポスターが目に飛び込んでくる。そこはまるで、昭和にタイムスリップしたかのような空間だ。

 村上春樹や安西水丸など、多くの作家や芸術家に愛されたという『ロージナ喫茶』。『東京文学的喫茶』では、壽屋(現・サントリー)に入社し、編集者・コピーライターとして活躍、直木賞作家でもある山口瞳さんが通った店として紹介されている。

 店内には、山口さんが愛した席がそのまま残っていた。本の写真を見ながら、同じ席へと向かう。そこは一番厨房に近い席だった。

 創設者の末娘の伊藤さんによると、山口さんはこの席に座り、マスターとの会話を楽しんでいたのだという。この場所で、誰もが知る名コピー「トリスを飲んでHawaiiへ行こう!」が生まれたのかもしれないと思うと、思わず気持ちが高揚する。

「山口さんが座ったのはここだ!」と本書で確認する
「山口さんが座ったのはここだ!」と本書で確認する

 本を片手に思いをはせていると、伊藤さんが「2階にこの本の表紙を撮影した席がありますよ」と教えてくれた。さっそく、2階へと上がってみる。

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