【絶対に恋なんてしない!?】恋愛嫌いの優秀令嬢×女性嫌いの王弟、まさかの一目惚れから始まるうぶな初恋ロマンス【書評】

文芸・カルチャー

PR 公開日:2026/5/13

君は強いからと捨てられましたが恋愛嫌いの令嬢が初恋に溺れるまで
君は強いからと捨てられましたが恋愛嫌いの令嬢が初恋に溺れるまで(忍丸/ポプラ社)

 恋は“する”ものじゃない、“落ちる”ものだ。それも前触れもなく突然落ちてしまうものだ。「絶対に恋なんてしない」と心に決めていたとしても、その時は必ずやってくる。世界に光が満ちたような、目の前の景色が鮮やかに色づいていくような感覚。胸の疼き、甘い焦燥、どうしようもなく熱くなる頬……。

 そんな恋へのときめきと戸惑いを描き出すのが『君は強いからと捨てられましたが 恋愛嫌いの令嬢が初恋に溺れるまで』(忍丸/ポプラ社)。仕事に生きる恋愛嫌いの令嬢と、戦帰りの清廉潔白な王弟。「絶対に恋なんてしない」と思っていた二人が、初恋に戸惑いながら心を通わせていく西洋ロマンスだ。

 主人公は、男爵令嬢のアンナ、20歳。高位貴族の令嬢しかなれないはずの王太后付き女官として働く、きわめて優秀な女性だ。身分差を乗り越えて結ばれた両親のことで幼い頃から揶揄され続けた彼女は、大の恋愛嫌い。次期子爵の男と5年ほど婚約関係にあったが恋愛感情は抱けず、その相手から「君と結婚はする。でも、僕の心は彼女のものだ」と愛人を紹介されたことにアンナが嫌悪感を抱き、婚約は解消されることになった。いよいよ一生独身でいようと決意した時、アンナは王太后から、隣国との戦争で長らく領地を空けていた王弟・レオナールの領地経営を手伝うよう命じられる。だが、仕事に生きようという思いを胸にレオナールと対面した瞬間、アンナは否応なく彼に惹きつけられてしまう。一方、過去のある出来事からずっと女性に対して苦手意識を抱えていたレオナールも、アンナに一目惚れして……。

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 冷たささえ感じる銀色の髪に、涼やかなアイスブルーの瞳のアンナ。濡羽色の髪に蜂蜜色の瞳、鍛え上げられたしなやかな体を持つレオナール。そんな美しい二人が、自分が恋に落ちたことそのものに驚き、その事実から目を背けたくも感じながら、少しずつ相手を意識していくさまは、何とも微笑ましく愛らしい。二人は互いに一目惚れだったが、惹かれていくのは容姿だけではない。アンナは、レオナールの気取らない温かさや責任感に心を動かされる。女性であることが不利に働く世界で、「女性であることが能力と何の関係があるのかな」と、レオナールはアンナの能力を真っ当に評価する。目の前の仕事に懸命に励んできたアンナにとって、それは何よりもうれしい言葉だったに違いない。また、レオナールもアンナの真っ直ぐさに惹かれ、次第に気持ちを隠せなくなっていく。これまで恋愛を遠ざけてきた二人だからこそ、胸の高鳴りや相手の言葉ひとつに揺れる様子はひどく初々しい。そのうぶなやりとりに思わず頬が緩み、こちらまでドキドキさせられてしまう。

 しかも、この物語のおもしろさは、恋愛模様だけにとどまらない。アンナは頭脳明晰で、レオナールも認める通り、かなり仕事ができる。レオナールの領地は、彼が戦に出ている間に領主代行の不正によって荒廃してしまっていたが、この状況を立て直すため、アンナは現状を冷静に見つめ、次々に手を打っていく。その姿はなんと頼もしいことだろう。レオナールと手を取り合いながら領地改革を進めていくさまは痛快で、物語にぐいぐい引き込まれてしまう。

 うぶな初恋のときめきに胸を高鳴らせたい人にも、聡明で勝ち気なヒロインが活躍する痛快な物語を読みたい人にも、読み応えたっぷり。恋愛を避けていた二人は、どのように心を通わせていくのか。身分が物を言う世界で、男爵令嬢のアンナと王弟レオナールは結ばれるのか。さらに、アンナ自身も知らない秘密が少しずつ明かされていき、恋の行方はますます見逃せなくなる。甘くてもどかしい恋模様も、道を切り開いていく痛快さも、その先に待つ真実も気になって、最後まで一気に読みたくなる。「もう恋なんてこりごり」と思っている人も、きっと読み終えた頃には心がほかほかと温まっているはず。読む人をときめかせ、そっと背中を押してくれるようなこのラブストーリーを、ぜひともあなたも手に取ってほしい。

文=アサトーミナミ

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