子どものころ夢中で読んだ『ルルとララ』の作者と、大人になってお酒を飲む夜。一夜限りの「スナック ルルとララ」に潜入【レポート】

文芸・カルチャー

PR 公開日:2026/8/7

「スナック ルルとララ」が生まれたきっかけ

――「スナック ルルとララ」は、どのようなきっかけで生まれたのでしょうか。

あんびるやすこさん(以下、あんびる):「ルルとララ」シリーズは20年間続いているのですが、初期の読者だった子どもたちが、今では大学生や社会人になっています。最近は、そうした“かつての読者”がサイン会や講演会に来てくださることも増えました。

 サイン会などで一対一でお話をしていると、社会に出て初めて壁にぶつかったり、思い描いていた大人の世界との違いに戸惑ったりしている方も少なくありません。私はこれまで、「世の中はこんなに素晴らしいですよ」「あなたらしく羽ばたいてください」というメッセージを込めて物語を書いてきました。でも、大人になった彼女たちもまた悩みを抱えている。その姿を見て、今の読者たちに寄り添うように、かつての読者たちを励ますことはできないだろうかと思ったんです。

 最初は、大人になった読者向けに「ルルとララ」の続編のようなものを書けないかと考えました。もし描くなら、お菓子屋さんではなく「スナック ルルとララ」がふさわしいかもしれないな、と。ただ私は児童書作家ですし、実際に本として実現するのは難しい面もあります。

 それなら20周年の記念として、一晩だけ本当に「スナック ルルとララ」を開いてみたらどうだろうと思い、岩崎書店さんに相談したところ、「面白そうだからやってみましょう!」と賛同していただいて実現しました。

20周年を迎えて感じること。悩みや求めている言葉は「20年前とあまり変わっていない」

「ルルとララ」のほか、「なんでも魔女商会」シリーズや人気の関連グッズがずらり!
「ルルとララ」のほか、「なんでも魔女商会」シリーズや人気の関連グッズがずらり!

――シリーズは刊行20周年を迎えました。20年続けてこられて、どんなことを感じていますか。

あんびる:正直、20年も続くとは思っていませんでした。本当にありがたい気持ちでいっぱいです。読者は少しずつ入れ替わっていきますが、新しい子どもたちがまた作品を手に取ってくれることは、作家としてとても幸せなことだと思っています。

 一方で、子どもたちが抱えている悩みや求めている言葉は、20年前とあまり変わっていないんです。今の子どもたちも同じように物語を楽しみ、そこに込めたメッセージを受け取ってくれているんだなと感じています。

大人になった読者へ伝えたいこと。児童書には「宝石のような気持ちにもう一度光を当てる力がある」

――大人になった読者へ、今あらためて伝えたいことはありますか。

あんびる:児童書は子どものときに読むものだと思われがちですが、私は大人になってからも読んでほしいと思っています。

 子どものころって、「世の中ってこんなに素敵なんだ」「毎日が楽しいな」というキラキラした気持ちを持っているじゃないですか。でも大人になると、忙しさや悩みの中で、その気持ちを心の奥深くにしまい込んでしまうことがあります。

 私は、児童書には、そのしまい込まれた宝石のような気持ちにもう一度光を当てる力があると思っているんです。

 だからぜひ、大人になった今こそ児童書を読み返してほしい。そして、自分の中にあるキラキラした気持ちを取り戻してもらえたらうれしいですね。

一度旅立っていった読者たちが、また戻ってきてくれる日

 あんびるさんのやさしさに包まれた、一夜限りの特別な夜。かつて「ルルとララ」を読んでいた子どもたちは大人になりました。仕事や人間関係、将来への不安――それぞれがさまざまな悩みを抱えながら、自分なりの道を歩んでいます。

 けれど、本の中のルルとララは今も変わりません。森のお菓子屋さんで誰かの悩みに寄り添い、とっておきのお菓子を作り続けています。

 大人になると、子どものころに抱いていたキラキラした気持ちを、つい心の奥にしまい込んでしまうことがあります。そんなとき、ふと立ち返ることのできる場所のひとつが、「ルルとララ」シリーズなのかもしれません。

 取材の最後に、あんびるさんはこう語ってくれました。

「私たち児童書作家は、読者と一緒にいられる時間が意外と短いんです。子どもたちは成長していくので、常に新しい読者を迎え、そして送り出していく立場でもあります。だから今日は特別なんです。一度旅立っていった読者たちが、また戻ってきてくれる日ですから」

 子どものころ、お菓子のレシピに胸を躍らせながらページをめくった子どもたち。その“かつての読者”が大人になり、作者とともにグラスを交わした夜は、作品と読者が歩んできた20年の時間を祝福するような、温かなひとときでした。

取材・文=ダ・ヴィンチWeb編集部 撮影=川口宗道

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