『HUNTER×HUNTER』2年ぶりの新刊か、3年ぶりの村上春樹の新作『夏帆』か。7月の読書トレンドから読者の行動心理を考察してみた

文芸・カルチャー

PR 公開日:2026/8/17

 毎月の読書トレンドは、新刊の発売や受賞作の発表、SNS上での話題性によって大きく変化するもの。集英社の人気コミックスをはじめ、待望の新作小説が発売された2026年7月の書籍チャートにはどのような作品が並んだのだろうか。多様な読まれ方を独自の指標で集計・可視化する「Billboard JAPAN Book Charts」(※)から、現在の読書トレンドを読み解いていこう。

※集計期間:2026年6月29日~2026年7月26日

ランキング目次
Book Hot 100
Bungei
Culture

■Book Hot 100

「Book Hot 100」は、店舗・ECでの紙書籍の売上、電子書籍、図書館での貸出、SNSでの言及など複数の指標を合算して算出される総合チャート。ジャンルの垣根を越えて、その月に最も読まれた一冊が見えてくる。

〈第1位〉

『HUNTER×HUNTER』39巻(冨樫義博/集英社)

 約2年ぶりの新刊となった『HUNTER×HUNTER』39巻が、総合チャートの頂点に立った。暗黒大陸を目指す船内では、カキン帝国の王位継承戦、その渦中に身を置くクラピカ、ヒソカを追う幻影旅団など、さまざまな動きが入り乱れている。さらにロンギからビヨンドの秘密が明かされ、新たな波紋が広がることに――。もともと圧倒的な人気を誇る同作だが、コミックスの発売前に約1年半ぶりの連載再開を迎えたことも売上を後押ししたのだろう。指標別では電子1位、店舗2位、EC4位と、いずれも好成績を記録している。

>>【Book Insight】待望の最新刊に多くの読者が動いた――『HUNTER×HUNTER』39巻、Billboard JAPAN書籍チャート首位の背景

〈第2位〉

『ONE PIECE』115巻(尾田栄一郎/集英社)

『HUNTER×HUNTER』39巻と同じく、7月3日に発売日を迎えた『ONE PIECE』115巻。「Book Hot 100」では2位となったが、指標別に見ると店舗1位、EC3位と、『HUNTER×HUNTER』を上回る結果となっている。現在マンガ本編では、巨人の島「エルバフ」を舞台に物語が進行中。理想の世界を追い求めた名君・ハラルドと、その息子・ロキとの間に一体何があったのか。真実を知ったルフィたちはエルバフを救うため、ついに反撃へと動き出す。

〈第3位〉

『夏帆-The Tale of KAHO-』
『夏帆-The Tale of KAHO-』(村上春樹/新潮社)

 人気コミックスがTOP5を席巻する中、唯一小説として食い込んだのが、村上春樹の『夏帆-The Tale of KAHO-』だ。主人公は、26歳の絵本作家・夏帆。知人の紹介で知り合った初対面の男から、「君みたいな醜い相手は初めてだよ」と告げられるところから物語は動き出す。2023年4月刊行の『街とその不確かな壁』以来3年ぶりとなる新作小説で、発売時には初回限定の特典ステッカーも配布された。指標別では店頭3位を記録するほか、ユーザー投稿サイト(ブクログとnote)などの記事数をもとにしたSNS指標では第1位にランクイン。“村上春樹ブランド”の強さと、SNS上での高い話題性がうかがえる結果となった。

★村上春樹『夏帆-The Tale of KAHO-』とルッキズム。「君みたいな醜い相手は初めてだよ」初デートでそう言われた夏帆が巻き込まれる不思議な世界【書評】

【Book Insight】なぜ村上春樹『夏帆 The Tale of KAHO』は文芸チャート史上歴代最高ポイントを記録したのか

〈第4位〉

『ワンパンマン』37巻(ONE:原作、村田雄介:漫画/集英社)

『ワンパンマン』最新37巻では、ヒーロー協会が人材募集に努めるべく、タツマキを起用した広告を打ち出す。CMは好評で、市民からの支持率も上昇しているにもかかわらず、なぜかヒーロー志願者は一向に増えない。その裏には、何やら不穏な影がちらついているようで……。シリーズ累計3600万部を突破し、2027年にはアニメ第3期の第2クールの放送が控えている同作。これだけの人気を誇る作品だけに、原作で描かれる今後の展開にますます注目が集まりそうだ。

〈第5位〉

『黄泉のツガイ』13巻
『黄泉のツガイ』13巻(荒川弘/スクウェア・エニックス)

 山奥の村で育った少年・ユルと双子の妹・アサをめぐり、「ツガイ」と呼ばれる異形の存在と契約した者たちが激突する『黄泉のツガイ』。コミックス最新13巻では、ゴンゾウを喪ったヒカルがひとりで御陵(みささぎ)と対峙する展開となる。一方、アサたちはイワンとの市街地戦を制して椥辻(なぎつじ)と醍醐(だいご)の身柄確保に成功。だが、そんな折に影森本家での惨状を知らせる一報が届く――。2026年4月より連続2クールで放送されているTVアニメの影響もあり、同作は人気・知名度ともに急上昇中。現在の累計発行部数はすでに750万部を突破しており、1000万部の大台に乗る日もそう遠くはないかもしれない。

 そのほか、6位以降にも『宇宙兄弟』『魔男のイチ』『アオのハコ』といった人気作の最新刊が並んでおり、コミックスの勢いが際立つ結果となった。中でも注目すべきは、第6位にランクインした『宇宙兄弟』46巻。今巻をもって物語は完結を迎え、連載18年の歴史に幕を閉じた。普段は1話につき20ページを基本にしているところ、最終話は46ページに。通常巻よりも分厚くなった最終巻は、18年にわたる連載の集大成として、ファンにとっても特別な一冊となったはずだ。

■Bungei

「Bungei」は、先述の「Book Hot 100」から文芸作品に絞って集計したチャート。新刊はもちろん、文庫化やドラマ化によって再び注目を集める話題作なども同じランキングに並ぶ。

〈1位〉

『夏帆-The Tale of KAHO-』
『夏帆-The Tale of KAHO-』(村上春樹/新潮社)

 村上春樹の3年ぶりとなる長編小説『夏帆-The Tale of KAHO-』が、文芸チャート第1位を獲得。b文芸ジャンルの中では店舗・EC・SNSの3指標で1位、電子でも3位と、各指標で軒並み上位にランクインしている。特定の指標だけに頼ることなく、幅広い項目で高い支持を集めたことが、そのまま順位に表れた格好だ。

〈2位〉

『成瀬は信じた道をいく』
『成瀬は信じた道をいく』(宮島未奈/新潮社)

成瀬は信じた道をいく』は、滋賀県大津市を舞台にした青春小説「成瀬あかりシリーズ」の第2作。前作『成瀬は天下を取りにいく』に続き、2年連続で「本屋大賞」にノミネートされた話題作だ。その文庫版が2026年6月24日(水)に発売され、再び話題を呼んでいる。文庫化を記念して滋賀県の駅で特別広告が掲出されるなど、プロモーションも展開されており、前月の第8位から第2位へと大きく順位を上げた。

〈3位〉

『一次元の挿し木』
『一次元の挿し木』(松下龍之介/宝島社)

一次元の挿し木』は、第23回「このミステリーがすごい!」大賞・文庫グランプリを受賞した松下龍之介のデビュー作。遺伝人類学を学ぶ大学院生・七瀬悠が、200年前の人骨と4年前に失踪した義妹のDNAが一致した謎を追っていく。6月の文芸チャートでも第7位にランクインしている同作だが、5指標(店舗・EC・電子・サブスク・SNS)のすべてで順位を上げた。特に先月95位だった電子指標が15位まで急上昇しており、7月からスタートした実写ドラマ版の影響がうかがえる。

 なお「ダ・ヴィンチWeb」では、読書家としても知られるフリーアナウンサー・俳優の宇垣美里が同作の魅力について語ったインタビュー記事を配信中。作品をより深く知りたい人は、こちらもチェックしてみてはいかがだろうか。

★宇垣美里「読書は"究極の現実逃避"」。食事も忘れて一気読みした『このミス』大賞・文庫グランプリ『一次元の挿し木』の魔力【インタビュー】

〈4位〉

『イン・ザ・メガチャーチ』
『イン・ザ・メガチャーチ』(朝井リョウ/日経BP 日本経済新聞出版)

 ファンダム経済(ファンの推し活などによって生まれる経済活動)をテーマにした『イン・ザ・メガチャーチ』は、ファンダム経済を仕掛ける者、のめり込む者、かつてのめり込んでいた者という3つの視点から描かれる群像劇。「Billboard JAPAN Book Charts」でも長らくチャートインを続けており、7月は図書館の貸出回数をもとにしたサブスク指標で1位、SNS指標でも2位を記録している。発売からまもなく1年を迎える現在も、根強い人気を集めているようだ。

★朝井リョウ 作家生活15周年&『イン・ザ・メガチャーチ』刊行記念インタビュー

★朝井リョウ『イン・ザ・メガチャーチ』。生活を切り詰め、舞台俳優の「推し活」に励んできた35歳の女性。ある日、思わぬ報道が…【書評】

★<インタビュー>“今の時代、人を動かすものは何なのか”――『イン・ザ・メガチャーチ』を通じて朝井リョウが問う、人間にとっての推進力とは【WITH BOOKS】

〈5位〉

『777 トリプルセブン』
『777 トリプルセブン』(伊坂幸太郎/KADOKAWA)

 累計380万部を突破する「殺し屋」シリーズの4作目となる『777 トリプルセブン』が、文庫化を経て上位にランクインした。同作はツキに見放されている殺し屋・七尾を主人公に据えた物語。「簡単かつ安全な仕事」だと思って訪れたホテルで、予想外のトラブルに巻き込まれていく。文庫化されたのは2026年6月16日で、前月は月の途中からの集計で9位だったが、丸ひと月分が反映された今月は5位まで続伸した。指標は店舗5位、EC32位と、店頭での動きが数字を支えており、文庫化をきっかけに店頭での存在感を高めている。

 なお「ダ・ヴィンチWeb」では、『777 トリプルセブン』を含む伊坂幸太郎作品の書評を公開中。

★伊坂幸太郎の25年を8つの視点で振り返る。“誰も怖がらなくていい未来”を描いた伊坂作品の目指す世界【書評】

 文庫化やドラマ化、文学賞の受賞など、既刊作が再びチャートインするきっかけは実にさまざま。特に今月はTOP5のうち4作品を既刊作が占め、そうした動きが顕著に表れる結果となった。一方、6位以降のチャートで見られたのが、同一作家の複数ランクインだ。たとえば、凪良ゆうは『汝、星のごとく』が6位、『星を編む』が7位、『多類婚姻譚』が14位にランクイン。辻村深月も『ファイア・ドーム』の上巻が10位、下巻が13位にランクインしているほか、2019年に単行本が発売された『傲慢と善良』が15位に浮上している。新作への関心が高まることで、同じ作家の既刊作にも注目が集まる傾向が見て取れた。

■Culture

「Culture」は、写真集やエッセイ、人文書などカルチャー関連の書籍を100位まで順位づけするチャート。刊行直後に一気に数字を伸ばす写真集と、何年にもわたって読み継がれる教養書が同じランキングに並ぶ、ジャンルの幅広さが特徴的だ。
 

〈1位〉

『BULLET TRAIN TAKASHI 1st Photobook xemx』
『BULLET TRAIN TAKASHI 1st Photobook xemx』(タカシ(超特急)/主婦と生活社)

 2026年7月7日に発売された『BULLET TRAIN TAKASHI 1st Photobook xemx』は、9人組ダンスボーカルグループ「超特急」のバックボーカルを務めるタカシ(松尾太陽)の初ソロ写真集。撮影地は地中海に浮かぶマルタ共和国で、タイトルの「xemx(シェムシュ)」はマルタ語で「太陽」を意味する。絵画を思わせる美しい景色はもちろん、すべて自身でコーディネートしたという衣装も大きな見どころ。EC指標では第1位を獲得し、初ソロ写真集として好調なスタートを切った。

〈2位〉

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅香帆/集英社)

「Culture」チャートの上位常連作品に位置付けられている『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』。明治から現代までの労働と読書の歴史をひもといた一冊で、累計発行部数は電子版を含めて30万部を突破した。2024年4月の発売から継続的に読まれており、図書館の貸出回数をもとにしたサブスク指標では、いまだ第1位を獲得。購入には至らなくても、書籍そのものに興味を持ち、手に取る読者が多いことがうかがえる。

<インタビュー>三宅香帆、言葉を伝えることと残すことへの想い/ 「出版」と「音楽」の新たな交流から見出す在り方とは【WITH BOOKS】

〈3位〉

『自分とか、ないから。 教養としての東洋哲学』
『自分とか、ないから。 教養としての東洋哲学』(しんめいP:著、鎌田東二:監修/サンクチュアリ出版)

自分とか、ないから。 教養としての東洋哲学』は、ブッダ、龍樹、老子と荘子、達磨、親鸞、空海という7人の哲学者の教えを、口語に近い軽やかな文章で超訳していく入門書。4月・5月の「Culture」チャートでは第9位、6月には第5位、7月は第3位と、2カ月続けて順位を上げている。構えずに読める語り口が、東洋哲学に興味を持つきっかけになっているのだろう。指標別ではサブスク、SNSがともに2位を記録しており、借りて読む人と、SNSに感想を残す人の双方から支持を集めていることがうかがえる。

〈4位〉

『乃木坂46 金川紗耶1st写真集「好きのグラデーション」』
『乃木坂46 金川紗耶1st写真集「好きのグラデーション」』(金川紗耶/主婦の友社)

「Culture」チャート第4位にランクインしたのは、乃木坂46の4期生・金川紗耶の1st写真集。「写真集を出すことが夢のひとつだった」という念願のソロ写真集で、クロアチアのドゥブロブニクで撮影を行った。街の風景に溶け込むカットからファッショナブルな装いの1枚まで、普段の活動では見られない表情とともに収められている。同チャートにおける写真集は、EC指標に強い傾向があったが、同書は店舗指標で第1位を獲得。これまでとは異なる動きを見せる結果となった。

〈5位〉

『本を読む人はうまくいく』
『本を読む人はうまくいく』(長倉顕太/すばる舎)

本を読む人はうまくいく』は、本の選び方から読んだ内容の活かし方までを扱い、読書を人生の意思決定へ結びつける方法を説いた一冊。SNS指標では、前月に続いて第1位を獲得している。さらにサブスク指標は先月の第21位から第13位へと大きく上昇し、チャート順位も先月の第10位から第5位へと浮上した。読み終えたあとに感想や要約をSNSや「note」に書き残す読者に加え、図書館で手に取る読者にも支持が広がったことが、順位を押し上げたと考えられる。

 今回の上位5作品は、性質の異なる2種に分かれた。1位と4位は、いずれも発売から間もない写真集。刊行のタイミングが、そのまま順位に直結するタイプだ。対して2位、3位、5位は、書店での売上ではなく、図書館での貸出とSNSでの言及が順位を支えている。実際、サブスク指標の1位、2位と、SNS指標の1位、2位は、すべてこの3作が占めた。読書や思考をテーマにした本は、発売直後の勢いよりも、読んだ人の言葉を介して時間をかけて広がっていくのかもしれない。ひとつのランキングの中に、異なる読まれ方が浮かび上がる形となった。

 7月のチャートを並べて眺めると、一冊の本が読者に届くまでには、“タイムラグ”があることが分かる。発売週に数字が跳ね上がる新刊、文庫化やドラマ化で再び注目を集める既刊作、図書館での貸出やSNS投稿を経由して読まれ続ける作品…。同じランキングに並んでいても、チャートインする理由はまるで異なり、「Billboard JAPAN Book Charts」からはそうした広がり方の違いも見えてくる。気になる一冊を探す際には、その数字の背景にも目を向けてみると面白いかもしれない。

★「Billboard JAPAN Book Charts」公式サイト

HUNTER×HUNTER モノクロ版 39 (ジャンプコミックスDIGITAL)

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ONE PIECE モノクロ版 115 (ジャンプコミックスDIGITAL)

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夏帆―The Tale of KAHO―

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ワンパンマン 37 (ジャンプコミックスDIGITAL)

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黄泉のツガイ 13巻 (デジタル版ガンガンコミックス)

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成瀬は信じた道をいく(新潮文庫) (「成瀬」シリーズ)

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一次元の挿し木 (宝島社文庫)

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イン・ザ・メガチャーチ (日本経済新聞出版)

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777 トリプルセブン 殺し屋シリーズ (角川文庫)

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BULLET TRAIN TAKASHI 1st Photobook xemx

なぜ働いていると本が読めなくなるのか (集英社新書)

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自分とか、ないから。 教養としての東洋哲学

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乃木坂46 金川紗耶1st写真集『好きのグラデーション』

本を読む人はうまくいく

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