もしも夫が浮気をしたら…どう向き合う?――“日本一の浮気夫”梅沢富美男夫妻はなぜ夫婦円満でいられるのか

恋愛・結婚

更新日:2020/6/13

 結婚生活というものは、なかなかすべてが順風満帆とはいかないもの。モヤモヤと「離婚」の文字がちらついた経験のある人だって、きっと少なくないはずだ。とはいえやっぱり、できれば「良好な夫婦関係」を続けたい…。そんなときにはどうしたらいいのか、『熟年離婚、したくなければズボラ婚。』(双葉社)の著者、フィトセラピストの池田明子さんに聞いてみた。池田さんの夫は、“日本一の浮気男”として知られる俳優の梅沢富美男さん。「楽しそうに自分の浮気話をネタにする夫」を許す度量の広さまでは真似できなくても、池田さんの言葉に夫婦関係を良好にするヒントがきっと見つかるだろう。

結婚は理不尽だらけ。家庭は修行の場

――ようやく緊急事態宣言が解除されましたが、このコロナ禍でいつもより自宅で夫婦や家族で過ごす時間が増え、関係がギクシャクしてしまった方も多いようです。この現状をどう思われますか?

池田明子さん(以下、池田):昔、流行語で「亭主元気で留守がいい」とかありましたよね。それぞれ逃げ道があったのに、いきなり心づもりもなく変わってしまったので、準備不足の方が多かったのかもしれませんね。普段から関係が割と順調な方はいいですが、ちょっと問題があった方はここにきて噴出したように思いました。

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――熟年だけでなく、まだ若い夫婦にも多かったようですが。

(池田):周囲をみていて年々「理不尽なこと」に対する我慢をしなくなっている人が増えているような気がします。でも、生活って結局は理不尽なことが多いんですよね。しかも厄介なことに、結婚相手にはお互いに「違うもの」があるから魅かれたりしますから、違いが魅力的なうちはいいけれど慣れてくると鼻についてしまうんですよね。大事なのは、そんなふうに気持ちが冷めてしまった後にどうするか。そこからは「思いやり」や「慈しみ」のような恋愛関係とは違う感情の結びつきを持つ努力が必要になってきますが、そこまでいかない人が増えているのかもしれません。

 私はインド哲学が好きなんですが、「バガヴァッド・ギーター」(古代インドの聖典)の中に「この世で修行するのに1番簡単なところはお寺、2番目が職場、3番目が家庭」っていうのがあるんですよ。あんな太古から「家庭の理不尽」は修行と言われているわけで、やっぱりそんなものなんじゃないんでしょうか(笑)。

――少しは「我慢」も必要だと。

(池田):もちろん実害があったら我慢なんて必要ありませんし、むしろちゃんと話し合う必要があると思います。でも案外、実害と感情の問題がごちゃごちゃになっている方も多いのかもしれませんね。もし我慢できなくて思わず「イラっ」としてしまったら、「その場を外す」とか「他のものを見る」とか、ちょっとイライラから目をそらすようにするといいですよ。その場で感情が沸騰すると「言った/言わない」になって大きな火種になることもあるので、まずはそれを回避するんです。イラっとするホルモンが出るのは90秒くらいなので、その間だけ違う方に目を向けていればいい。

 あとは本にも書きましたが、冷静になるためにはイメージトレーニングをするのもおすすめです。「怒っている椅子」に座る自分を「普通の椅子」に座る自分がながめる姿をイメージするというものですが、怒っている椅子に座ってしまうと怒りにのみ込まれてしまうけれど、それをちょっと隣からながめることで「私、こんなに怒ってたんだ」と客観的になれるんです。

「浮気」はあえてグレーのままで

――池田さんの場合は、ご主人(梅沢富美男さん)の浮気にかなり悩まれたそうですね。

(池田):そうですね。もちろん離婚を考えなかったわけでもないですが、実害もないし子どももいましたし、それで自分の感情をコントロールすることに興味を持ってハンドケアやら心理学やらいろいろ学んだんです。うちの主人は“浮気バレの回避”がうまくてしばらくすると笑い話にしてくるし、腹だってもちろん立ちましたけど、なんだかんだ50代くらいからは落ち着いてきましたね。「どうしても添い遂げなきゃ」とか思うと苦しくなりますから、こればっかりは運命で、もしどうしてもダメだったら別れればいいみたいに思っているところもあるかもしれません。

――著書に「相手のことなんて、わからないのが人間だもの。白黒つけずに「グレーゾーン」をたのしみましょう」とありました。つい詮索したくなったりしがちですが、それはNGと。

(池田):よくお子さんに「なんでも言いなさい」と言ったり、「なんでも言い合える家族が理想」とか言ったりしますが、あれはバツですよ。子どもなんてなんでも言えないのが当たり前で、それで成長していくんですから。夫婦もそれと同じですよね。誰にだって触れられたくないことはありますから、あまり追求してもいいことはないですし、へたに何でも善悪や白黒つけるから争いが大きくなることもある。だから、ある程度グレーというか、「まあまあ」みたいなところで折り合いをつけたほうがいいと思います。「過去に終わった」とか「3年に1回、へんだなと思う」とかなら、「ま、しょうがないか」くらいにね(笑)。

――「相手の携帯電話は見ません。だってそのほうが、幸せですもん」ともありましたね。そうしないためには、どう自分にストッパーをかけたらいいと思いますか?

(池田):「自分はこの世に生まれて、それだけで価値があるんだ」っていう自分に対しての「自信」のようなものがあれば、グレーが認められるんじゃないかと思います。そういう自信があれば、あんまり怒ったりもしませんから。とにかく怒りだとか不信感みたいなマイナスの渦みたいなものに巻き込まれないようにしたほうがいいですよ。だって自分が思い悩んでイヤな気持ちで時間を潰していても、相手は楽しく生活してるから頭にくるじゃないですか(笑)。

――「即、離婚!」じゃ、白黒つけすぎになっちゃいますね。

(池田):ちょっと待ってあげたほうがいいと思います。実はホルモンを研究している方によれば、若い頃というのはほんとにホルモンに勝てないそうなんですね。私も臨床検査技師をやっていたので見てきましたが、スポーツ万能だったり、お仕事をガンガンやったりという人はたくさんホルモンが出ているし、しかもモテる(笑)。女性も同じでしょうが、ホルモンの影響みたいなことだってあるわけです。

「怒り」の奥にある気持ちをみつめよう

――ホルモンのせい! そう考えると、浮気をされたのは「自分のせいだ」と自分を責めてしまう人も楽になるかもしれません。

(池田):もちろんですよ! いまは心の器が弱く自己肯定感の低い方が多いですから、浮気された「怒り」の感情の元にある「みじめさ」や「不安感」などが「私のせいじゃないか」というマイナスの感情に繋がっていきやすいのだと思います。そんなときはまず「そうだよね、不安だよね」「みじめでがっかりだよね」と自分のありのままの感情を受け止める言葉を心の中でささやきかけて、本当の自分を認める練習を頻繁にする。「それがいけない」のではなくて「そのままでいい」。そのことがわかると人は生きやすくなると思います。

――一方で被害者意識に囚われて相手を執拗に責めるばかりの方もいます。

(池田):それもまわりまわって心の器の弱さなのだと思います。心の器が強ければ人から何かされたとしてもあまり意に介さないものですが、心の器が弱いとそれが相手への攻撃にすり替わってしまう。相手を攻撃することで自分を守るような感じですよね。自分を守ると言えばパワーストーンや神社のお守りなどと思いますが、ちょっと不健康なお守りが相手への攻撃です。みじめさや不安感は誰もが持っているものだから、まずはそんな自分を抱きしめてあげてほしいと思います。本当に、人というのは考え方も行動も一人ひとり違いますから、やっぱりバランスが大事なんですよね。子どもを大切にしていたり、厳しい職場でも懸命に働いて家族を守ろうとしてくれたり、そういうことをちゃんとしているなら、そこに相手の「努力」を感じてあげるといいと思います。

――とはいえ、いざとなったら別れたっていいわけですよね。

(池田):もちろん家庭を顧みないでお金もいれずにどっかにいっちゃったとか、気持ち的にも自分のほうにも敬意がまったくないとか、あんまりひどい場合は「無理して一緒にいろ」なんてことはないですよ。

 私が最近いい傾向だなと思っているのは、50代や60代なんかで一緒に住んでなくても仲のいいご夫婦がいることですね。一緒に住んではいないけど、何かあるときには協力しあう関係。もう、何がなんでもずっといなきゃならないと思わなくてもいいんじゃないですかね。特に日本はちゃんと医療制度もあるし、施設だって充実しているわけですから、そんなに背負いこまなくても大丈夫ですよ。それより何か勉強したり、趣味を楽しんだりして、自分がどんなときにでも生きていけるレジリエンス(困難な状況に合わせて柔軟に生き延びようとする力)を高めていくことが大切なんだと思います。

取材・文=荒井理恵
※取材は、5月中旬、リモートで実施しました

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