「ながらスマホ」は飲酒運転よりも危険? 視野が20分の1に!人間の注意力の限界を示した驚きの研究結果とは?

暮らし

公開日:2016/8/23

『神経ハイジャック――もしも「注意力」が奪われたら』(マット・リヒテル:著、小塚一宏:その他、三木俊哉:訳/英治出版)

 世界中を席巻している「ポケモンGO」で、問題となっているのが、「歩きスマホ」だ。「ポケモンGO」は、アプリを起動すると、「周りをよく見て、常に注意しながらプレイして下さい」との警告文は流れるし、ゲームに慣れてくれば、ポケモンが登場してバイブ音が鳴った時だけ立ち止まってスマホを確認すれば良いことがわかる。だが、多くの人がゲームに夢中になって、歩行とスマホ操作を同時に行ってしまうのはまぎれもない事実だ。

 ニューヨーク・タイムズ記者、マット・リヒテル著『神経ハイジャック――もしも「注意力」が奪われたら』(小塚一宏:その他、三木俊哉:訳/英治出版)は、2006年にアメリカ・ユタ州で19歳の少年レジー・ショーが起こした自動車運転中の携帯電話捜査による事故を追いながら、科学者たちによる、テクノロジーが脳に及ぼす影響と人間の注意力の限界に関する研究結果を紹介している。

 レジーが起こした自動車衝突事故の内容は、とても悲惨だ。レジーは、運転中にガールフレンドとテキストメールのやり取りをしてしまい、2人を死亡される衝突事故を引き起こしてしまった。当時、ユタ州では、運転中の携帯電話操作を禁止する法律はなかった。レジー自身も事故を起こした直後は一体何が起きたのか理解が及ばなかったらしい。

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 本書によれば、携帯電話の「ながら操作」は、人の注意力や記憶力を奪うとともに、非常に依存性、中毒性の高いものであり、以下のような研究結果が明らかとなっているという。
・「ながらスマホ」をすると、操作を終えてから15秒間は注意が散漫となり、記憶も曖昧になる。
・運転しながら携帯電話を操作すると、衝突リスクは通常運転の6倍にも高まる。これは、飲酒運転(4倍)よりもリスクが高いことを示す。
・「歩きスマホ」をすると、通常と比べて視野が20分の1になる。

 だが、ここまで具体的にその危険性が明らかとなっているというのに、その危険性は無視されがちのようだ。自動車の寄贈を促す慈善団体「カーズ・フォー・キッズ」による2013年の調査によると、アメリカでは98%のドライバーが運転中のメールは危険だと考えているのに、43%はメールを読み、30%はメールを送信した経験があるという。日本においては運転中のスマホ操作が2004年から禁じられている。だが、「歩きスマホ」に関しては特に何の規制もない。個人の裁量にゆだねられているのである。

 あなたはこの本を読んでも、「歩きスマホ」をやめることができないのだろうか。いつか深刻な事故を起こすかも知れないのに、自分には関係ないと言い切れるのだろうか。いまや日常にすっかり根づいたスマホの「ながら操作」の問題は、日常生活に欠かせない存在となったスマホに対する重い依存症状の現れであるのかもしれない。

文=アサトーミナミ