累計100万部突破! 続きが気になる……! 毒舌イケメン陰陽師とちょっと抜けてる狐耳高校生のハートフル小説最新刊はもう読んだ!?

文芸・カルチャー

2017/1/27


『よろず占い処陰陽屋 狐の子守歌』(天野頌子/ポプラ社)

  面白くて一気読みしてしまった! マンガならいざ知らず、そして上下巻の小説ならまだしも、「既刊9冊を一気に読んでしまう」のは初めての体験だったので、自分でも戸惑っている……ゆるくも笑える話と、キャラクターたちの絡みがじわじわとクセになっていき、ページをめくる手を止められなかった。

『よろず占い処陰陽屋 狐の子守歌』(天野頌子/ポプラ社)は、シリーズ累計100万部を突破する大人気キャラ小説だ。

 東京都北区王子にある王子稲荷ふもとの商店街の一角で営業中「陰陽屋」。そこは、運勢判断、失せ物など、さまざまな相談事を請け負う占いの店である。店主は安倍祥明(あべ・しょうめい)と名乗る元ホストのイケメン陰陽師。顔の良さと口のうまさ、女性あしらいの巧みさで、着々と固定客を作っている彼は、めんどくさがりで毒舌。店の掃除やお茶出しをしているバイトの沢崎瞬太(さわざき・しゅんた)は、素直で優しい少年だが、ちょっと(いや、かなり)抜けている。だが瞬太の正体は、うっかりすると耳やしっぽが出てしまう化け狐だった。そのことを知った祥明は、瞬太を陰陽屋のアルバイトとして雇う。まったくかみ合わなそうな二人だが、意外といい相性なのか、陰陽屋はそこそこ繁盛。人捜しに恋占い、霊障相談などなど、今日も陰陽屋へは、様々な依頼が持ち込まれる!

 さて、この小説、なんで面白いんだろ? と考えてみた。

 まず一番は、キャラク―だ。毒舌で頭が回る(悪知恵ともいえる)美青年の陰陽師と、狐耳としっぽはかわいくて、勉強嫌いのへっぽこ妖狐の少年はもちろん。瞬太の友人「委員長」と呼ばれる冷静で面倒見のよい秀才・高坂(こうさか)君(個人的イチオシ)や、瞬太の片想い相手で女の子らしい可愛さを持つ三井さんなど、好感のもてる個性的なキャラクターが登場する。

 だが、「いい人」キャラが魅力的なのは、たいていどこの小説でも同じなのだ。

 本作では、主人公たちの行く手を阻むという意味での「悪役ポジション」のキャラでさえ、目を惹くものがある。新聞部の高坂君を勝手にライバル視し、なにかとケンカを売ってくるパソコン部の浅田君もいい味出している。「ドラえもん」でいうところの「スネ夫」的存在で、瞬太や高坂を陥れようとするが、いつも返り討ちに遭ってしまう。

 だが本作のベスト・オブ・悪役は何といっても、祥明の母親・優貴子(ゆきこ)ではないだろうか。優貴子は息子ラブが行き過ぎて、祥明の愛犬を捨てたり、祥明に彼女ができた際にはゴキブリ入りのケーキを出したりした過去がある。祥明が家を逃げるように出た現在はSNSで息子の動きをチェックし、ストーカーも真っ青なほど息子を追い詰める。……優貴子さん、最高です。

 さらに、本作は主人公が一応陰陽師だが、祥明は特に、霊能力もないし、霊的な超能力を使わない。というか、本作における「幽霊かも?」「祟りかも?」という相談事は、実際には「ほとんど人為的なことが原因」なのだ。祥明は霊能力の代わりに、「頭の良さと口のうまさ」で物事を丸め込む。「この家で争い事が絶えないのは、〇〇の祟りのせいです」と相手に思いこませておき、実際はかなり現実的なアドバイス(例えば、引っ越しをおすすめしたり)をして、依頼者たちの悩みを解消する。「陰陽師」や「化け狐」を登場させておきながら、超絶能力をほとんど使用しないで問題解決をするというところが、リアリティがあり、面白いのだ。

「時間経過がサザエさん式ではないこと」も魅力の一つだ。
瞬太が中学三年生から始まる本作。しかし最新9巻では高校三年生になっており、進路で悩む姿も描かれている。年月とともにキャラクターたちが年をとっていくところは、近所の子どもの成長を見守っているような、愛着を持つことができる。(9巻も読んでいると、もはや瞬太の親のような気分に……)。

 1月に発売されたばかりの9巻では、自身の成長が同級生たちと比べ明らかに遅いことに悩む瞬太や、また、捨て子であった彼の実の母親が登場(?)などなど、物語はいよいよ佳境に入っている。

 10巻の発売が楽しみだ!……欲を言えば、祥明と瞬太の距離がもっと縮まるお話……読みたいな、と個人的には思っている。とにかく、続刊に期待!

 

文=雨野裾